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慢性B型肝炎に対するRadix Sophorae flavescentis

レビューの論点
慢性B型肝炎ウイルス感染者を対象に、Radix Sophorae flavescentisの有益性と有害性を、プラセボまたは介入なしと比較し評価する。

背景
慢性B型肝炎ウイルス(Chronic hepatitis B virus :HBV)感染は、罹患率および死亡率が高いよくある肝疾患である。慢性B型肝炎は精神的なストレスを引き起こし、また患者や家族の負担となる。Radix Sophorae flavescentisは、慢性B型肝炎ウイルス感染者の治療に使用されており、同感染者の苦痛を軽減しウイルスの複製を防ぐと考えられている。しかし、有益性と有害性は明らかではない。

検索期間
2018年12月が最終検索日であった。

試験の特性
3556例が参加したランダム化臨床試験35件をレビューに含めた。1件の試験でRadix Sophorae flavescentisとプラセボを比較し、残りの34件は、共介入およびRadix Sophorae flavescentisの効果とその共介入を比較した試験であった。レビューに含めた試験は、Radix Sophorae flavescentisの各剤形と投与方法(経口カプセル、経口錠剤、静脈点滴、筋肉内注射、経穴[鍼治療で特別に選択された部位]注射等)を、1~24カ月の治療期間で評価した。14歳未満の小児を評価した試験が2件あった。2試験の参加者は、慢性B型肝炎で肝硬変(肝臓の後期ステージ瘢痕)を伴っていた。

試験の資金源
ランダム化臨床試験35件のうち7件が、政府または病院から学術資金供与を受けていた。4件の試験は、資金供与を受けていなかった。残りの24試験は、資金供与の情報を提供していない。資金供与に関する情報の非開示は、試験結果に影響し不適切な試験デザインにつながる可能性がある。

主要な結果
35試験中1試験のみが死亡率を評価していたが、死亡は認められなかった。10試験で重篤な有害事象を評価していたが、重篤な有害事象は認められなかった。健康関連の生活の質を評価した試験はなく、B型肝炎で死亡した感染者やB型肝炎のため死亡リスクがあった感染者を追跡した試験はなかった。19件の試験におけるアウトカムとして、有害事象は「重篤でない」と考えられた。プラセボまたは介入なしと比較し、Radix Sophorae flavescentisは「重篤ではない」と考えられる有害事象の発生についてより優れているか劣っているかを言及することはできない。Radix Sophorae flavescentisは、HBV-DNAが検出可能な感染者の割合および、HBe抗原が検出可能な感染者の割合も減少させた。しかし、これらの試験はバイアスリスクが高く、患者との関連性においてこれらのアウトカムは未証明であることから、有益性の高さを示すこのような所見の理解には注意が必要である。同定された432件の試験は、本レビューに必要な情報が不足しており、レビューに含めることができなかった。結果として、慢性B型肝炎ウイルス感染者に対するRadix Sophorae flavescentisの有益性と有害性を明らかにするためには、適切にデザインされたランダム化臨床試験の実施が必要である。

エビデンスの確実性
「科学的根拠(エビデンス)の確実性」とは、「ある所見を支持するか否かのレビュー結果が正しいことに対する信頼度」である。慢性HBV感染者へのRadix Sophorae flavescentisの使用に対するエビデンスの確実性は、死亡についての有益性または有害性、健康関連の生活の質、HBV感染で死亡するリスクおよび、重篤な有害事象という意味においては、患者に関連性のあるアウトカムの探索を目的とした試験がわずかしかないことから、明らかにはできない。介入なしまたはプラセボと比較し、Radix Sophorae flavescentisが慢性B型肝炎ウイルス感染者において重篤とは考えられない有害事象を減少または増加させるかどうかの我々のエビデンスの確実性は非常に低い。Radix Sophorae flavescentisは、HBV-DNAおよびHBe抗原の検出が可能な感染者の割合をそれぞれ減少させるかどうかのエビデンスの確実性も非常に低い。エビデンスの確実性に関するこれらの評価は、レビューに含めた試験のデザインが不適切であったこと、および十分な試験報告がなされなかったことによるものである。

訳注

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD013089.pub2》

Citation
Liang N, Kong DZ, Ma SS, Lu CL, Yang M, Feng LD, Shen C, Diao RH, Cui LJ, Lu XY, Nikolova D, Jakobsen JC, Gluud C, Liu JP. Radix Sophorae flavescentis versus no intervention or placebo for chronic hepatitis B. Cochrane Database of Systematic Reviews 2019, Issue 4. Art. No.: CD013089. DOI: 10.1002/14651858.CD013089.pub2.