中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法

検討した内容

このレビューでは、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)がある人に対する非侵襲的換気(換気を補助する人工呼吸のこと、以下、NIV)の効果を、他の治療法や異なるタイプのNIVと比較検討した。CSAとは、睡眠中に脳が筋肉に空気を取り込むように指示を出せないため、呼吸が定期的に停止する疾患である。CSAは、男性や慢性心疾患がある人に多く発症する。CSAの人は、夜中によく目が覚め、日中はとても眠くなり、普段のように運動ができなくなる。睡眠時無呼吸症候群は、心臓発作や脳卒中など、他の疾患や死亡のリスクを高める可能性もある。

NIVでは、機械を使って呼吸を助ける。NIV療法では、フェイスマスクや鼻マスクを使用して、肺に空気を送り込み、呼吸努力の必要性を軽減させる。NIV療法にはいくつかのタイプがあり、呼吸を補助する方法が異なる。以下にいくつか例をあげる。

• CPAP(Continuous Positive Airway Pressure、シーパップ):吸気と呼気で連続的に肺に空気を送り込む。
• 二重陽圧(BiPAP、バイパップ):吸気時に呼気時よりも多く肺に空気を送り込む。
• ASV(Adaptive Servo Ventilation):主に呼吸が止まった時に肺に空気を送り込む。

非侵襲的な換気により、空気が肺に入りやすくなると考えらえるが、NIVが病態の改善と延命につながるか、害を及ぼすかはわからない。

本レビューの目的

このレビューの目的は、NIVのいずれかのタイプが、CSAを抱える人にとって他の治療法やNIVの別のタイプよりも害が少なく、役に立つかどうかを検討することにあった。この疑問に答えるため、現在入手可能なあらゆる関連研究を収集し、分析した。

本レビューの主な結果

1995年から2019年までの15件の研究を対象とし、成人の参加者計1,936人を対象とした。ほとんどの研究では、慢性の心臓病とCSAを併発している男性を対象としていた。対象となった研究では、CPAP対最善の支持療法、ASV対最善の支持療法、ASV対CPAP、ASV対BiPAPなど、さまざまな比較が検討された。いずれの研究でも、患者はNIVの種類や他の治療法を偶然に受けるように割り当てられた(ランダム化比較試験)。

NIVのいくつかの換気モードを比較した研究があったが、各比較に含める参加者数が少ないことがほとんどであったため、研究結果を組み合わせたとしても、そのような研究の効果は正確ではなかった。 また、試験の対象とした2つ以上の治療法のいずれかに参加者を割り当てるために用いられた方法が完全に記述されておらず、その方法が十分であったかどうかは不明である。さらに、いくつかの研究では、参加者がどの治療を受けているかを知っている研究者が参加者の評価を行っており、これが効果判定に影響を与え、偏った結果につながっている可能性がある。したがって、現在利用可能な研究結果には確信が持てず、そこから強い結論を導き出すことはできない。

慢性心不全に伴うCSAの場合、NIV(CPAPまたはASV)を使用すると、短期的(最長3か月間)には最善の支持療法のみよりも無呼吸(呼吸が止まること)のエピソードの頻度が低くなるようである。ただし、長期的(1年以上)に利点があるかどうかは不明である。一方、CSAおよび慢性心不全を併発している人では、長期的にはおそらくASVによって心疾患による死亡が増加すると思われる。慢性心不全がないCSA患者に関するデータはほとんどなかった。

要点

このレビューで評価した研究結果を総合すると、NIVのある方法がNIVの他の方法よりも副作用をもたらすかどうか、あるいはCSAがある人に対して、最善の支持療法と比較して、NIVのある方法が利益よりも害をもたらすかどうかを確信することはできない。

本レビューの更新状況

本レビューは2021年9月6日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、ギボンズ京子 翻訳[2022.12.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012889.pub2》

Tools
Information