成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)のためのメチルフェニデート徐放製剤

レビューの論点

このレビューは、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された成人を対象に、メチルフェニデートのプラスとマイナスの効果を調べ、プラセボまたは他の薬剤と比較したものである。特に、欠勤日数などの生活機能への影響、患者さん自身や医師・研究者が評価するADHDの症状や生活の質(QOL)への影響に注目した。

背景

ADHDは、集中力の欠如、多動性、衝動的な行動を特徴とする精神医学的診断で、社会生活、仕事での能力、人間関係の維持などに影響を及ぼすことが多い。ADHDと診断され、薬物治療を受ける成人が増えている。ADHDの治療は、心理療法、社会的介入、他の種類の非内科的治療、薬物療法など、さまざまな異なるアプローチで構成される必要がある。メチルフェニデートとアンフェタミンは、ADHDの第一選択薬として推奨されている。メチルフェニデートは、中枢神経系(CNS)の活動を活発にする薬物である。このレビューでは、1日に1~2回だけ飲む錠剤として与えられるメチルフェニデート、いわゆる「徐放性製剤」に焦点を当てている。メチルフェニデートは、成人のADHD患者を対象とした多くの臨床試験が行われているが、これらの試験がどのように計画され、どのように結果が報告されたかが懸念されるため、全体的なプラスとマイナスの効果は不確かであると思われる。メチルフェニデートは、ADHDの子どもや青年にも使用される。

研究の特徴

検索は2021年2月までのものである。ADHDと診断された24件の研究(5,066人の参加者)が見つかり、さらに進行中の研究1件も確認された。各研究の参加者は2グループに分けられ、一方のグループには徐放性メチルフェニデートが、もう一方のグループにはプラセボ(「砂糖の錠剤」として知られている)が投与された。また、2件の試験では、第3のグループとして別のADHD治療薬も含まれていた。参加者の年齢の中央値(参加者を若い順から並べた全年齢リストの、中間の値)は36歳であった。これらの研究は、主にヨーロッパと北米で外来患者を対象に行われており、試験中に参加者が入院することはなかった。研究期間は約8週間であった。半分の試験は、薬物を販売する会社がスポンサーになっており、このことがこれらの試験のデザインに影響を与えた可能性があった。

主な結果

メチルフェニデート徐放錠は、プラセボと比較して、参加者、治験担当医師、家族または配偶者による評価において、ADHD症状の重症度を減少させた。メチルフェニデートは欠勤日数を減らすことはできず、参加者が評価した生活の質(QOL)への影響も小さかった。これらの試験では、重篤な有害事象のリスクの増加は認められなかったが、メチルフェニデートは、何らかの有害事象を経験する全体的なリスクを増加させた。

エビデンスの質

エビデンスの確実性については「非常に低度」と評価した。これは、メチルフェニデートのプラス効果がマイナス効果を上回るかどうか、まだ不確実であることを意味する。すべての研究は、そのデザインと実施方法において、異なるバイアス源から影響を受けるリスクが高かったため、結果に影響(バイアス)を与える可能性があった。したがって、試験で報告されたメチルフェニデートのプラス効果およびマイナス効果は信頼できるものではなく、新しい試験が実施されれば重要な変化が生じる可能性があった。また、何年も服用することが多いメチルフェニデートの長期的な影響については、ほとんどの試験が8週間程度で、52週間続いた試験は1つしかなかったため、知見は限られていた。

試験には、いくつかの問題もあった。例えば、ADHDの人は不安やうつなど複数の精神疾患を抱えていることが多いが、ADHDだけでなく他の精神疾患を持つ参加者は参加できないことが多かったこのため、成人のADHDの重要なグループに対する試験の有用性は限定的である。また、過去にメチルフェニデートやそれに類する薬物を服用して良好な結果を得た人しか参加できないことが多かった。つまり、そのような研究では、薬物の服用によって問題を経験する人の数や重症度を過小評価する可能性があった。したがって、メチルフェニデートのプラスとマイナスの効果をより確実に推定するためには、このレビューで強調された問題とは無縁の新しい臨床試験を実施する必要があると考えられる。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、瀬戸屋希 翻訳 [2022.03.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012857.pub2》

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