救急における急性髄膜炎の検査としてのジョルトサイン(Jolt accentuation)

急性髄膜炎の診断における身体診察の重要性とは

髄膜炎とは、髄膜とよばれる脳や脊髄を守る組織の炎症である。急性髄膜炎、特に細菌性髄膜炎や結核性髄膜炎は命にかかわる可能性があり、迅速な診断と早期治療が必要とされる。

診断には通常、腰椎穿刺によって採取した脳脊髄液の分析が必要である。腰椎穿刺では腰椎の骨の間から針を挿入する。腰椎穿刺は侵襲的な検査であり、ときに頭痛の原因となりうる。

身体診察によって急性髄膜炎の可能性を正確に除外できれば、腰椎穿刺を受けずともよくなるであろう。しかし、首を前方に曲げられない(項部硬直)などの、髄膜炎が疑われる患者に対して伝統的に用いられてきた身体診察法では、急性髄膜炎を除外することは出来ない。

本レビューの目的

本レビューの目的は、救急での急性髄膜炎の診断において、ジョルトサイン(Jolt accentuation)がどの程度正確なものであるかを推定することである。ジョルトサインは他の身体診察法と比べ、歴史が浅く(提唱:1991年)、認知度が低い。ジョルトサインとは、1秒間に2~3回の早さで頭部を水平に振ると頭痛が悪化する所見のことである。

本レビューの検討内容

救急において急性髄膜炎を疑わせる症状を呈した患者を対象に、ジョルトサインの有用性を検討した。

本レビューの主な結果

急性髄膜炎が疑われた1161人の参加者を含む9件の研究を解析対象として組み入れた。このうち5件の研究は成人のみを対象とし、4件の研究は成人と子どもの両方を対象としていた。データが不足していたため、大人と子どもを分けて分析することはできなかった。

検査結果の信頼性はどの程度か

ジョルトサインの感度は、急性髄膜炎を診断から除外できるほど高くはないようである。

本レビューの結果は誰に適用されるのか

急性髄膜炎を疑わせる症状を呈している患者に対し、本レビューの結果が適用される。ほとんどの研究は救急での状況を対象としていたため、プライマリケアの現場においてジョルトサインが役に立つかどうかは不明である。ほとんどの研究では成人または青年を対象としており、最年少の参加者は13歳であった。ジョルトサインが子どもに対しても適用できるかどうかについては、エビデンスが得られなかった。

本レビューが示唆すること

ジョルトサインが陰性であっても急性髄膜炎の可能性は否定できない。

本レビューの更新状況

2020年4月27日までに発表された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》森岡敬一朗 翻訳、井口 正寛 監訳[2020.07.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012824.pub2》

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