鎌状赤血球症患者の痛みの管理の為の経皮的電気刺激(TENS)

レビューの論点

鎌状赤血球症患者の痛みの管理における経皮的電気刺激(TENS)の役割とは?鎌状赤血球症患者におけるTENS使用の際の有害事象とは?

背景

鎌状赤血球症は赤血球に影響を与える遺伝性疾患である。赤血球には酸素を運搬するヘモグロビンが含まれている。鎌状赤血球症では赤血球が血管を塞ぎ、血液の供給が減少することで各臓器への酸素の供給量が減少し、痛みや臓器の障害といった影響が出現する。重度の痛みは治療や入院を必要とする。痛みに対して処方される鎮痛薬は薬物依存を含む様々な副作用を生じうる。それゆえ、研究者らは鎌状赤血球症患者に対して薬物治療以外の治療法を検討している。

TENSは低圧電流を流し、種々の痛み症状の緩和に用いられる小型のバッテリー駆動の電気医療機器である。TENSは安全であり、かつ安価で使用が簡単である。痛みの状況により反応も異なるため、鎌状赤血球症患者の痛みの管理におけるTENSの効果を検証するためには、コクラン・レビューにおける包括的な調査が必要である。

検索期間

このエビデンスは2020年2月26日現在のものである。

研究の特徴

鎌状赤血球症患者の痛みの緩和、痛みの程度の減少、痛みエピソードの頻度の減少、鎮痛薬の使用状況に変化をもたらすか、生活の質の向上、有害作用の評価を検討したもので、「偽」TENSと比較した際のTENSの効果に関して適切に実施された研究を検索した。

その結果、1つの研究のみ(12歳から27歳までの22名の参加者)を特定した。この研究では、参加者を痛みの程度に応じて4つのグループに分類した。研究のための初回の受診では、各グループの参加者は、TENSを受けるグループと「偽」TENSを受けるグループにランダムに割り当てられた。治療後も同程度の痛みエピソードがあった参加者は、最初の治療とは異なる治療を受けた(例えば、最初TENSグループだった参加者は「偽」TENSグループに変更になる)。程度の異なる痛みのエピソードがあった参加者が、TENSもしくは「偽」TENSのどちらの治療を受けたのかは明らかでない。

また、参加者、研究者いずれも、各参加者がどちらの治療を受けたのかは知らない。

主要な結果

30件のTENSによる治療(22名の参加者)と30件の「偽」TENSによる治療を解析した。データの質の低さや研究デザインの問題のため、正式な解析は行えず、記述的な報告しかできない。そのため、結果の解釈には注意が必要である。特定した研究では、TENSをうけたグループと「偽」TENSをうけたグループの間で、治療後1時間後と4時間後における、1から10で表現する痛みの程度に関する違いはみられなかった。鎮痛薬の使用量に関してはグループ間で差はみられなかった。エビデンスの質が非常に低いことから、「偽」TENSと比較してTENSが全体的な満足度を向上させたかどうかは不明である。TENSを受けた参加者のうち、かゆみといった軽微な副作用が1名だけに見られたが、「偽」TENSを受けた参加者のうち2名が介入による痛みの悪化を報告した。質の低いエビデンスの研究が一つあるのみなので、鎌状赤血球症患者の痛みの管理にTENSがもたらす変化について言及することはできない。

エビデンスの質

このレビューに含まれた研究では、2つのグループに無作為に割り当てる手順について明確に言及されておらず、その為バイアスのリスクが高いと評価した。報告と分析は痛みエピソードがあった人数に基づいているのではなく、痛みエピソードの回数のみに基づいて行われた。この研究からは、何名の参加者がTENSのグループから「偽」TENSのグループに変更したか不明である。最初にうけた治療はその後にうける治療に影響を与える可能性があり、別な治療グループへと変更になるプロセスに関する明確なデータはない。したがって、この研究はバイアスのリスクが高く、結果の解釈は困難であると結論付けている。

訳注: 

《実施組織》久保田純平(公立陶生病院) 翻訳、井上円加 監訳[2020.11.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012762.pub2》

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