原因不明の不妊症に対する介入:系統的レビューとメタアナリシス

レビューの論点
コクランの著者らは、原因不明の不妊症のカップルにおける卵巣刺激(OS)、子宮内人工授精(IUI)、卵巣刺激を併用した人工授精(OS-IUI)、一般体外受精(IVF)、顕微受精(ICSI)と待機的管理とを比較した場合の有効性と安全性に関するエビデンスをレビューした。

背景
原因不明の不妊症の治療法には、卵巣刺激(OS)、人工授精(IUI)、卵巣刺激を併用した人工授精(OS-IUI)、体外受精(IVF)などの積極的な治療に加えて、待機的な管理がある。ネットワークメタ解析は、介入の直接的な比較と間接的な比較のエビデンスを統合し、研究者が同じ条件に対する2つ以上の介入の有効性を同時に評価できるようにする手法で、臨床家はその結果を根拠に最良の治療法が提供できるようになる。そこで、ネットワークメタ解析を用いて、これらすべての異なる治療法を比較し、臨床的な意思決定に役立つ情報を提供することを目的とした。

研究の特性
原因不明の不妊症のカップル4349組を対象にした、これらの治療法を比較するランダム化比較試験27件を同定した。エビデンスは2018年9月現在のものである。

主な結果
待機的管理と他の4つの治療法(OS、IUI、OS-IUI、IVF/ICSI)との間の出生率の違いに関するエビデンスは不十分であった。待機的管理後の出生率を17%とすると、OS、IUI、OS-IUI、IVF/ICSIによる出生率は、それぞれ9%~28%、11%~33%、15%~37%、14%~47%となる。待機的管理/IUIと比較すると、OSは多胎妊娠のリスクが高くなる可能性があり、OS-IUIはおそらく多胎妊娠の可能性が高くなるだろう。多胎妊娠に関して、IVF/ICSIと待機的管理の差を示すエビデンスは不十分であった。待機的管理/IUI後の多胎妊娠率を1%と仮定すると、OS、OS-IUI、IVF/ICSIの確率はそれぞれ1~5%、1~5%、0~6%となる。

エビデンスの確実性
全体的に証拠の確実性は低~中程度であった。主な限界は、不正確さ(十分な数のカップルが研究されていない)と不均一性(既存の研究間でカップルの臨床的特徴が異なる)であった。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 阪野正大 翻訳[2020.08.19] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012692.pub2》

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