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白内障の手術後における3焦点レンズと2焦点レンズの比較

何を調べたかったのか?

白内障の手術の際に、遠見視力、中間視力、近見視力の3種類の視力を矯正するレンズ(3焦点レンズ)を挿入した場合と、遠見視力および近見視力の2種類の視力を矯正するレンズ(2焦点レンズ)を挿入した場合を比較して、効果や安全性に差があるかどうかについて調べたかった。

要点

白内障手術後に3焦点レンズを使用した患者は、2焦点レンズを使用した患者と比較して、1年後の裸眼中間視力(いわゆる裸眼視力)が改善する可能性があることがわかったが、そのエビデンスにはほとんど信頼性がない。1年後の裸眼遠見視力、裸眼近見視力、最良矯正遠見視力について、3焦点レンズと2焦点レンズに差があるというエビデンスはなかった。QOL(生活の質)や明暗の微妙な変化を識別する能力(コントラスト感度)に対する3焦点レンズと2焦点レンズの効果は、依然として不明であった。

老眼とは何か、またどのように治療されるのか?

老眼とは、加齢に伴い目のレンズ(水晶体)が変化することで、近くのものを見る能力が徐々に低下していく状態である。さらに水晶体の変化が進むと、水晶体の透明度が低下し(白内障と呼ばれる)、視力やコントラスト感度が低下することがある。3種類または2種類の範囲に焦点が合うレンズ(それぞれ3焦点レンズ、2焦点レンズと呼ばれる)は、白内障手術後における眼鏡への依存度を下げることを目的とした新しい技術である。

何を行ったのか?

老眼患者を対象に、3焦点レンズと2焦点レンズの比較が行われた研究を検索した。研究結果について比較、要約し、研究方法や研究規模などの要素から、エビデンスに対する信頼性を評価した。

何が見つかったのか?

ヨーロッパおよびトルコで実施された、計331人の老眼患者を対象とした7件の関連した研究が見つかった。

白内障手術時に3焦点レンズを挿入することにより、1年後の中間視力を改善する可能性があることがわかった。1年後の裸眼遠見視力、裸眼近見視力、最良矯正視力において、3焦点レンズと2焦点レンズの間に差を示すエビデンスはなかった。3焦点レンズと2焦点レンズの、生活の質(QOL)やコントラスト感度に与える影響の違いについては不明であった。

エビデンスの限界は何か?

研究の実施方法が不明確であり、関連した研究の数が少なかったため、エビデンスに対する信頼性は低い。

本レビューはいつのものか?

2022年3月31日までに発表された研究の検索に基づくレビューである。

訳注

《実施組織》小泉悠、阪野正大 翻訳[2023.05.29]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012648.pub3》

Citation
Zamora-de La Cruz D, Bartlett J, Gutierrez M, Ng SM. Trifocal intraocular lenses versus bifocal intraocular lenses after cataract extraction among participants with presbyopia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2023, Issue 1. Art. No.: CD012648. DOI: 10.1002/14651858.CD012648.pub3.