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小児期、思春期の注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder ; ADHD)患者に対するメチルフェニデートの有害性の評価

レビューの論点

小児期、思春期の注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder ; ADHD)患者へのメチルフェニデート投与と有害事象は関係しているか?

背景

ADHDは、最も一般的な小児期の神経発達障害の1つであり、発達の機能障害や、発達に良くない結果をもたらしたりすることと関連している。ADHDと診断された人は、しばしば極度に活動的で衝動的である。メチルフェニデートは中枢神経刺激薬であり、小児期、思春期のADHD患者に最もよく処方される薬物である。

試験の特性

2016年1月までの研究を調査し、様々なデザインの260件の研究を見つけた。多くの非ランダム化デザイン(研究者が参加者を特定の治療に割り当てない)の研究も含めた。

-7件の比較コホート研究 (グループを時間経過で観察する研究。6件の研究は、メチルフェニデートを内服した968人と、内服しなかった166人を比較。1件の研究は、それぞれ別の時点でメチルフェニデートを内服した人と内服しなかった人1224人を含む。)があった。
-2群を比較した4件の症例対照研究があった。この研究では53192人がメチルフェニデートを内服した(19906人は内服しなかった)。
-コントロール群(メチルフェニデートを内服しない群)なしの177件の非比較研究(2207751人の参加者を含む)があった。
-96人の参加者が一時点でメチルフェニデートを内服した2件の横断研究があった。
-70件の症例報告(メチルフェニデートを内服した206人の参加者を含む)があった。

また、ランダム化比較試験 (RCT:参加者を 無作為に独立した群に割り付け、様々な治療群と比較する)から、メチルフェニデート群を抽出した。全てのRCTは、メチルフェニデートとその他のADHDへの介入の比較と、フォローアップ期間を評価した。我々はメチルフェニデート群のデータだけを使用した。全ての非比較コホート試験で、2207751人の参加者がメチルフェニデートを内服していた。参加者の年齢は、3歳から20歳であった。

主な結果

メチルフェニデートの投与は、重大な有害事象(死亡、心臓障害、精神障害を含む)を生じる可能性が示唆された。メチルフェニデートを投与された患者100人のうち、約1人に重大な有害事象が生じた。重大な有害事象のためにメチルフェニデートの投与を中止したのは、100人中1.2人であった。何らかの有害事象のためにメチルフェニデートの投与を中止したのは、100人中7.3人であった。我々は、重大ではない副作用が患者の大部分に生じたことにも言及せねばならない。メチルフェニデートを投与された患者の半分以上で、1つないしはそれより多くの有害事象があった。あまり重大でない有害事象のためにメチルフェニデートの投与を中止したのは、100人中6.2人であった。理由が不明であるが、メチルフェニデートの投与を中止したのは、100人中16.2人であった。

エビデンスの質

これらの比較研究のエビデンスの質と信頼性はとても低い。研究デザインに弱点があるため、非比較研究のエビデンスの信頼性は低い。したがって、メチルフェニデートを処方された小児期と思春期の患者の、有害事象のリスクを正確に見積もることはできない。

結論

メチルフェニデートは、多くの重大な副作用と関係している可能性がある。メチルフェニデートは、小児期もしくは思春期のADHD患者において、かなり多くのあまり重大ではない副作用をもたらす。我々は、臨床医と親が、組織的に細かく有害事象を監視することの重要性に注目するよう提案する。メチルフェニデートが、将来的にもADHD治療に使用され続けるなら、メチルフェニデートの利益が有害性を上まわる患者群を明らかにする必要がある。治療の利益を受けやすい人を明らかにできるようにする必要があるのと同じく、有害事象を生じるリスクが最も高い人も明らかにできるようにする必要がある。そのためには、メチルフェニデートに反応する人と、反応しない人を明らかにするための試験とともに、大規模で質の高いRCTを実施する必要がある。

訳注

《実施組織》井上円加、藤原崇志 翻訳[2018.5.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012069》

Citation
Storebø OJ, Pedersen N, Ramstad E, Kielsholm ML, Nielsen SS, Krogh HB, Moreira-Maia CR, Magnusson FL, Holmskov M, Gerner T, Skoog M, Rosendal S, Groth C, Gillies D, Buch Rasmussen K, Gauci D, Zwi M, Kirubakaran R, Håkonsen SJ, Aagaard L, Simonsen E, Gluud C. Methylphenidate for attention deficit hyperactivity disorder (ADHD) in children and adolescents – assessment of adverse events in non-randomised studies. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 5. Art. No.: CD012069. DOI: 10.1002/14651858.CD012069.pub2.