炎症性腸疾患における極度の疲労感とエネルギー不足(倦怠感)に対する治療

レビューの論点

炎症性腸疾患(IBD)の倦怠感に対する薬物治療や非薬物治療効果を、無治療プラセボ(例:砂糖)、陽性対照(例:効果的な既存治療)と比較する。

背景

IBD(炎症性腸疾患)は生涯にわたる病気で、腸に炎症や潰瘍を引き起こす。IBD(炎症性腸疾患)とは主にクローン病と潰瘍性大腸炎を指す。IBD(炎症性腸疾患)患者には倦怠感がよく見られる。これは負荷となりQOL(生活の質)に悪影響を及ぼし得る。倦怠感は薬物療法と運動療法などの異なった種類の治療法の併用により改善されるかもしれない。しかしそういった治療法がIBDの倦怠感に対しどのような効果があるのかは不明だ。本レビューはIBD(炎症性腸疾患)の倦怠感に対する治療法の有効性に関するエビデンス(科学的根拠)を示す。

調査期間

2018年7月までに初回の広範な文献検索を実施した。2019年10月に追加の文献検索を行った。

研究の特徴

14件の研究(IBD(炎症性腸疾患)患者3741名)が包含基準を満たした。9件の薬物試験、4件の非薬物試験、1件の多元的試験がレビューに含まれた。進行中の研究も30件見出され、さらに5件の研究について分類(炎症性腸疾患のみを対象としたデータに分類)を確認中である。これらのうち、倦怠感の改善を目的とした試験はたった4件だった。残りの試験は、倦怠感を含む他の症状の改善が目的であった。14件の試験では倦怠感に関するデータ自体が入手できなかったため、本レビューは9試験1344名のデータにより実施した。ほとんどの研究は規模が小さくエビデンスの質が低いまたは非常に低かった。

主な結果とエビデンスの質

電気鍼療法が対照群や模擬電気鍼療法に比較して倦怠感を大幅に減少する可能性があることが示唆されたが、データが乏しいためエビデンスの確実性は低い。有害事象は模擬鍼治療群における1件のみ報告された。

認知行動療法や解決志向療法が倦怠感に及ぼす影響については、エビデンスの質が非常に低いため非常に不確かである。

ある小規模な研究では、運動指導とオメガ3との併用や運動指導とプラセボの併用が、運動指導なしでオメガ3を摂取した場合に比較して倦怠感を軽減する可能性が示された。有害事象は運動指導ありのグループで同程度だったが、運動指導なしでオメガ3を摂取したグループではより多くの有害事象が報告された。主な有害事象は下痢、膨満感などの軽度の消化管関連事象であった。

アダリムマブ応答性で中等度から重度の活動性クローン病患者に対し隔週でアリムマブ40 mgを投与すると、プラセボに比べて倦怠感を軽減する可能性があるが、エビデンスは非常に不確かである。アダリムマブ40 mgを毎週投与すると、プラセボと比較して重篤な有害事象の発生や有害事象による中止が少ない傾向であった。

マルトール第二鉄は、寛解期または軽度から中等度の活動期のクローン病および潰瘍性大腸炎の倦怠感をわずかに増加すると示唆されている。マルトール第二鉄の投与12週後、治療群と比較してプラセボ群では倦怠感が少なかったと報告されたが、本報告のエビデンスの質は低い。

結論

IBD(炎症性腸疾患)の倦怠感への介入治療効果は、エビデンスが限定的であり、不確かだ。有益性と有害性(副作用など)に関する確固たる結論は得られていない。IBD(炎症性腸疾患)の倦怠感に対する治療の潜在的な効果を判断するには、さらに多くの参加者による質の高い研究が必要である。今後の研究では倦怠感を主要評価項目とし、倦怠感への対処に特化して研究を計画し、特定のIBD(炎症性腸疾患)集団を対象とする必要がある。

訳注: 

《実施組織》加藤仁美 翻訳、阪野正大 監訳[2020.05.26] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012005.pub2》

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