避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか?

この要約で「人」という言葉を使うときは、現在妊娠する能力のある個人を意味する。

要点

- 避妊用インプラントや子宮内避妊具(IUD)の挿入を4~6週間待つ(遅延挿入)よりも、出産後数日以内に挿入する(即時挿入、入院中)方が、挿入される人の数が増える。

- 挿入のタイミングは、産後6か月または12か月にこれらの避妊法を使用する人の数にほとんど差をもたらさない。

- IUDの自然排出は、即時挿入した人の方が多いようである。

- インプラントやIUDの即時挿入と遅延挿入の両方における意図しない妊娠の割合については、さらなる研究が必要である。

避妊用インプラントや子宮内避妊具とは何か?

避妊用インプラント(訳者注:2022年12月現在、日本では未承認)と子宮内避妊器具(IUD)は、出産後すぐに使用できる可逆的で安全な、非常に有効な避妊方法である。インプラントは上腕部に、IUDは子宮に、医師や看護師が挿入する。これらの避妊法を行う人は、インプラントかIUDのどちらかを使用する。

妊娠と妊娠の間隔が適度に空いていることは、妊娠中の人と新生児の両方の健康にとって望ましい。通常、避妊のための処置は産後最初の健診(通常、産後6週間前後)で行われる。しかし、この受診前に性行為をしたり、受診しない人もいるため、計画外妊娠のリスクが高まる。出産後数日以内、すなわち退院前に、避妊用インプラントやIUDを挿入することは、患者さんや医療スタッフにとって便利なことである。インプラントやIUDを装着していると妊娠しないことが分かっているので、この方法によって、これらの避妊方法を使える人が増えるかもしれない。

知りたかったこと

出産後数日以内に避妊用インプラントやIUDを挿入することが、6~8週間待つよりも良いのかどうかを以下の項目に関して調べたいと考えた。

- 挿入に同意した人の数(挿入率)。

- これらの避妊方法を継続的に使用した人の数(使用率)。

- 妊娠の防止、および

- 出産後数日以内の避妊用インプラントやIUDの挿入は、何らかの好ましくない影響と関連しているかどうか。

このレビューで行ったこと

産後数日以内の避妊用インプラントまたはIUDの挿入(即時挿入)と産後6~8週間後の挿入(遅延挿入)を比較検討した研究を検索した。

研究結果を比較・要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスの確実性を評価した。

わかったこと

その結果、16件の研究が見つかり、合計2,609人(避妊用インプラントの研究では715人、IUDの研究では1,894人)が参加した。すべての研究が病院で実施されていた。多くは米国で行われたが、ウガンダ、エジプト、ブラジル、スリランカでも行われた。研究対象は出産直後の人で、ほとんどが18歳以上であったが、1件の研究にははそれ以下の年齢の人も含まれていた。これらの研究では、さまざまなタイプの避妊具であるインプラントとIUDが調査された。

主な結果

避妊用インプラント

出産後数日以内に避妊具を挿入できる場合は、「遅延挿入」群に比べて48%高い確率で避妊具を挿入していることがわかった。

挿入のタイミングは、産後6か月または12か月にこれらの避妊法を使用する人の数にほとんど差をもたらさない。

産後数日でインプラントを挿入した人は、「遅延挿入」群に比べて腟からの出血が長く続くようであるが(3日間多く出血)、産後6か月の出血については群間で差はなかった。

産後6か月と12か月の時点で、群間で意図しない妊娠の割合に差があったかどうかは不明である。

IUDs

出産後数日以内にIUDを挿入できる場合は、「遅延挿入」群に比べ、27%高い確率で挿入された。

挿入時期によって、産後6か月、12か月のIUD使用者数に違いがあるかは不明であった。

産後6か月経過した時点で、産後数日以内にIUDを挿入した人ほど子宮からのIUD排出が多いようである。

産後6か月と12か月の時点で、群間で意図しない妊娠の割合に差があったかどうかは不明である。

エビデンスの限界

異なる結果に対するエビデンスの確実性は、中等度から不確実なものまであった。これは、研究参加者がインプラントやIUDを挿入した時期を認識できるため、一部の評価項目の報告に影響を与えた可能性があることと、研究からの脱落があるためである。また、すべての研究が、私たちが関心を持つすべての評価項目についてデータを提供しているわけではないので、結果の一部は、より少ない人数に基づいていることになる。

このレビューの更新状況

2020年12月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2022.12.10] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011913.pub3》

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