認知症を発症する可能性のある人を検出するための、構造化された質問票(IQCODE)の使用

背景

認知症をもつ方を正確に同定することは、社会的にも専門家にとっても関心の高い分野である。認知症は病状が進行するまで診断されないことが多く、そのため適切な医療的・社会的支援を適時に受けることができない場合がある。認知症の症状が問題となる前、あるいは明らかになる前に、認知症を早期に発見するための検査が注目されている。その一つとして、ある人を検査し、時間をおいて再評価することで、その人が認知症を発症したかどうかを確認する方法がある。

今回のレビューでは、IQCODE(Informant Questionnaire for Cognitive Decline in the Elderly)と呼ばれる質問紙ベースの認知症評価の精度に注目した。そして、最初のIQCODEスコアによって、最初のIQCODE評価から数ヶ月後、あるいは数年後に認知症を発症する人を特定できるかどうかを記述した。

発表された研究に関する電子データベースを検索し、IQCODEとその後の認知症の診断について検討したすべての研究を探した。科学分野のデータベースで、最初に入手可能な論文から2016年1月までのものを検索した。

研究の特性

3つの関連研究が見つかったが、いずれも特定の病院環境で実施されたものであった。2つの論文は急性脳梗塞の患者のみを対象としており、もう1つの論文は股関節骨折をした患者を対象としていた。論文は他にも様々な点で異なっていたため、それぞれの論文を統合して結果を推定することはできなかった。概して、IQCODEで「陽性」の場合、その後に認知症を発症する患者が見つけられたが(感度が良い)、認知症を発症しない患者が誤って分類されることもかなりの数でみられた(特異性が低い)。今回検討した研究に基づいて、現在の診療に対する推奨を行うことはできない。

エビデンスの質

今回含まれた研究では、認知症のリスクがある人を長期的に追跡する研究の難しさが示された。また、研究開始時に対象者の中に認知症の人がいないことを確認し、新たなケースのみを特定するための強固な方法を、すべての研究が持っていたわけではなかった。同様に、調査開始時に含まれていた参加者の多くが、死亡やその他の病気のために再評価を受けることができなかった。

このレビューは、英国内のリサーチセンター(グラスゴー、エジンバラ、オックスフォード)に拠点を置くチームによって行われた。本研究は特定の外部資金を得ておらず、研究データの評価に影響を及ぼす可能性のある利益相反もない。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、瀬戸屋希 翻訳[2021.08.02]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011333.pub3》

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