体外受精や顕微授精を受けているカップルのための、胚培養および胚評価を目的としたタイムラプスシステム

レビューの論点

タイムラプスシステム(TLS)は、妊娠率と出生率を向上させ、流産や死産のリスクを減らすのか?

背景

体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)は、女性の卵子と男性の精子を結合させて体外で受精を実現するプロセスである。胚はインキュベーター(受精卵を育てる培養器)に貯蔵され、2~5日間培養した後に女性の体内に移植される。通常、胚は、顕微鏡下で胚質および発達段階を評価するため、インキュベーターから取り出される。TLSは頻繁に胚の画像を撮影することができるため、インキュベーターから胚を取り出すことなく評価することが可能である。TLSはまた、胚培養士が胚移植をするにあたって、胚質が最良である胚を選択するのを支援するソフトウェアを活用できるため、潜在的に出産率を向上させる可能性がある。

試験の特性

エビデンスは2019年1月現在のものである。9件の研究(ランダム化比較試験:2つ以上の治療群のいずれかに参加者を無作為に割り当てるもの)をレビューに組み込み、体外受精か顕微授精を受けている合計2955組の不妊症カップルを対象とした。研究デザインは3種類あった。(1) TLSで培養してその静止画像をもとに従来の評価を行う方法と、従来の培養および評価を行う方法との比較。(2) TLSで培養することは共通で、TLSの胚選択ソフトウェアを活用する方法と、TLSの静止画像による従来の評価方法との比較。(3)TLSで培養してその胚選択ソフトウェアを活用する方法と、従来の培養および評価を行う方法との比較。

レビューでわかったこと

TLSで培養してその静止画像をもとに従来の評価を行う方法と、従来の培養および評価を行う方法との比較

この比較に対するエビデンスの質はすべて低度であった。2つの方法間で、出生率や妊娠継続率、流産率について、何らかの違いがあるかどうかは不明である。エビデンスによると、従来の培養および評価を行う方法で出生または妊娠継続率が35%の場合、TLSで培養してその静止画像をもとに従来の形態学的評価を行う方法では27%~40%であり、従来の培養および評価を行う方法伴う流産率が4%の場合、TLSで培養してその静止画像をもとに従来の形態学的評価を行う方法では4%~14%であることが示唆されている。死産率と臨床妊娠率に関しては、両者の間に違いがあるかどうかは不明である。

TLSで培養することは共通で、TLSの胚選択ソフトウェアを活用する方法と、TLSの静止画像による従来の評価方法との比較

この比較に関するすべての知見は、エビデンスの質が非常に低度であったため、非常に不確実である。出生に関するデータはなかったが、妊娠継続率を報告した研究が1件あった。妊娠継続率、流産率、臨床妊娠率について、2つの方法間に差があるかどうかは不明である。エビデンスによると、従来のTLS画像の形態学的評価によるTLSによる妊娠継続率が47%の場合、胚選択ソフトを用いたTLSによる妊娠継続率は22%~52%であり、従来のTLS画像の形態学的評価による流産率が5%の場合、胚選択ソフトを用いたTLSによる妊娠継続率は4%~15%であることが示唆された。死産を報告した研究はない。

TLSで培養してその胚選択ソフトウェアを活用する方法と、従来の培養および評価を行う方法との比較

この比較に関するすべての知見は、エビデンスの質が非常に低度であったため、非常に不確実である。出生率と臨床妊娠率に関して、2つの方法間に違いがあるかどうかは不明である。流産については、TLSで培養する方法の流産率の方が低いようである。エビデンスからは、従来の培養方法による出生率が48%である場合、TLSによる培養方法では46~55%であり、従来の培養方法による流産率が11%の場合、TLSによる培養方法では5~10%であることが示された。

全体的な結論

TLSが従来の胚培養法よりも多少でも有効であることを示す、質の良いエビデンスはない。患者は、既存のエビデンスに加え、将来的に生殖補助医療を受ける患者を導くために、TLSのランダム化比較試験に参加したいと考えるかもしれない。

エビデンスの質

エビデンスの質は、低度から非常に低度であった。主な限界は、含まれた研究のバイアスの高さ、不正確性、非直接性、および非一貫性であった。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 増澤祐子 翻訳[2020.4.18]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
《CD011320.pub4》

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