褥瘡治療のためのアルギネート創傷被覆材

褥瘡とは何か?リスクがあるのはどのような人か。

褥瘡は、床ずれや圧迫潰瘍として知られているが、皮膚そしてときには皮下にある組織を含む創傷である。褥瘡は痛みがあり、感染するおそれがある。また患者のQOLに大きな影響をおよぼす。脊髄損傷のある患者、高齢者および短期間や長期間の症状による病気を患っている患者など、ねたきり患者または運動制限のある患者を含む褥瘡発現のリスクのある患者。

2004年に英国において褥瘡治療の年間医療費は14から21億英ポンドであると見積もられた。これはNational Health Service の総支出の4%に相当する。褥瘡の患者はより長期間入院している。このことが病院コストを増大させる。2006年の米国から得られた数字から、50万ヶ所の病院における入院で診断として「褥瘡」と記載されたことが示唆される;これらの総入院費は110億米ドルであった。

アルギネート創傷被覆材がなぜ褥瘡の治療に用いられるのか。

被覆材は褥瘡の一つの治療選択肢である。使用可能な被覆材の多くの種類がある。これらの価格は様々である。アルギネート創傷被覆材は、吸収性が高く、そのため一部の潰瘍から生じる液体(滲出液)を吸収できる。

結果

2014年6月に確固たるデザイン(ランダム化比較試験)であると認められる、なるべく多くの関連研究を検索した。そしてアルギネート創傷被覆材を他の治療法と比較した。総計336名の参加者を含めた6件の試験を確認した。アルギネートは、これらの試験で他の種類のアルギネート創傷被覆材である親水コロイド被覆材、デキストラノマーペースト被覆材、銀含有アルギネート被覆材、銀亜鉛スルファジアジンクリームおよび放射熱による治療と比較した。アルギネート創傷被覆材が、他の種類の被覆材や皮膚表面(局所)の治療、あるいは他の治療法と比較して、褥瘡の治癒により有効であることを示唆するためのエビデンスはこれらの試験から得られなかった。

全般的に、組み入れた試験は参加者が多くはなく、その結果は不確定なものが多かった。一部の試験では、それが行われた方法についての情報が記載されていなかったり、結果が真実である可能性があるのかどうか見分けることが困難であった。アルギネート創傷被覆材が他の種類の被覆材または他の治療法と比較して褥瘡の治癒により望ましいかどうか知るためには、より質の高いさらなる研究が必要である。このレビューは褥瘡治療のための被覆材について検討した一連のレビューの一部である。

この平易な言語サマリーは2014年6月現在のものである。

著者の結論: 

代替治療と比較したアルギネート創傷被覆材の相対的効果は不明である。従来の試験は小規模で、期間も短くバイアスのリスクが存在する。使用する創傷被覆材を決定するときには、被覆材の価格、および浸出液に対応する材質など被覆材タイプによる創傷管理の特性を考慮している可能性がある。

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背景: 

褥瘡は床ずれや圧迫潰瘍としても知られているが、皮膚あるいは皮下組織に対する損傷の局部的病変である。被覆材は褥瘡を治療するために広く用いられ、アルギネート創傷被覆材を含めて多くの選択肢がある。褥瘡治療のための被覆材の使用に関して、意思決定を促すために最新のエビデンスによる明確な目下の全体像が求められる。このレビューは、褥瘡の治療において被覆材の使用を検討する一連のコクランレビューの一部である。それぞれのレビューは個々の被覆材のタイプに的を絞ることにする。

目的: 

あらゆる介護の場で褥瘡治療用アルギネート被覆材の効果を評価すること。

検索戦略: 

このレビューのために、2015年4月に以下のデータベース、Cochrane Wounds Group Specialised Register; Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) ( Cochrane Library); Ovid MEDLINE; Ovid MEDLINE (In-Process & Other Non-Indexed Citations); Ovid EMBASE; および EBSCO CINAHLを検索した。発表の言語あるいは年月日に基づく制限は行わなかった。

選択基準: 

ステージⅡ以上の褥瘡の治療において、アルギネート創傷被覆材の効果を代替の創傷被覆材または被覆材なしと比較した、発表の有無にかかわらないランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者らはそれぞれ試験の選択、バイアスのリスク評価およびデータ抽出を実施した。                  

主な結果: 

このレビューに6件の試験(336名の参加者)を組み入れた;すべての試験は2つの治療群を有していた。組み入れられた試験は、アルギネート創傷被覆材を他の6種の介入と比較した:たとえば親水コロイド被覆材、銀含有アルギネート被覆材、および放射熱療法である。6種の介入との比較にはそれぞれただ1つの試験が組み入れられ、参加者の数が限られ、追跡期間が短かった。すべてのエビデンスは質が低いか非常に低い。データが入手可能である場合、完全な創傷治癒または有害事象に関して、アルギネート創傷被覆材と代替治療との間に差を示すエビデンスは認められなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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