喘息と運動誘発性気管支収縮に対するビタミンCおよびE

レビューの論点

本レビューでは、ビタミンCおよびEを一緒に毎日摂取すると喘息や運動誘発性息切れ患者に有利なのかどうかを検討した。

背景
喘息は気道の狭窄を特徴とする炎症性肺疾患である。息切れ、胸苦しさ、咳、喘鳴と関連する。この疾患はQOLに影響する。3億人を超える人が喘息に苦しんでいると推定され、ビタミンCおよびEは症状の軽減に役立つ栄養剤として提案されている。

研究の特性
喘息または運動誘発性息切れ患者214例を対象としてビタミンCおよびEをプラセボ(ビタミンCおよびEなし)と比較した研究5件を本レビューの対象とした。4件は成人を、1件は小児を組み入れていた。レビューに利用可能な研究の非常に限られた数、またその異なるデザインの意味するところは、平均の結果を判定するために結果を統合するのではなく、個々の研究を記述することだけが可能であったということである。ほとんどの研究報告書では、デザインはきちんと説明されておらず、そのためほとんどの研究のバイアスのリスクを評価することはできなかった。重要なアウトカムという点では、試験の著者らによって提供された関連性のあるデータはほとんどなかった。

主な結果
喘息との関連でビタミンCおよびEを検討した研究において有利なものは見出せなかった。しかし、この段階では、このような知見に基づいて何らかの明確な結論を下すことはできない。利用可能なエビデンスは、喘息患者のためのビタミンC およびEの使用を適正に評価するために不十分だからである。この疑問に答えるためには、適切にデザインされた研究がさらに必要である。

エビデンスの質
患者をビタミンCおよびEまたはプラセボ服用のいずれかに割り付ける方法は、選択された研究5件のいずれでも明らかに記述されていなかった。このことは、これらの研究が適切にランダム化されていなかったことを意味する可能性があり、それは結果に影響し得る。第二の懸念は、これらの研究のデザインが異なっていることで、その意味するところはこれらの研究は同じものを測っているのか確信できないことである。このことを考慮して、本レビューにおけるエビデンスの質は全体として低から中等度と判断した。

著者の結論: 

本レビューは喘息または運動誘発性気管支収縮の管理においてビタミンC およびE補充とプラセボとを比較したが、本レビューからしっかりした結論を導き出すことはできない。運動誘発性気管支収縮に関連性のある研究を1件のみ見出した。組み入れられた参加者のほとんどは、大気汚染物質(オゾンなど)の影響に対するビタミン補充の効果を評価するためにデザインされた研究の経験者であった。喘息に対して、HRQLと増悪などのアウトカムに関するビタミンCおよびE補充対プラセボの比較のエビデンスは欠けており、選択した研究のいずれもそれらに取り組んでいなかった。

肺機能検査単独と比べると、HRQLスコアと増悪の頻度は、患者集団における喘息の重症度、日常的活動に対する影響、治療に対する反応のより良い指標である。これらのエンドポイントは喘息管理の良質の研究においてよく確認されている。しかし、増悪とQOLへの効果というこれらの重要なエンドポイントを用いた喘息管理におけるビタミンCおよびEの臨床試験はなく、喘息と運動誘発性気管支収縮におけるビタミンCおよびE補充の役割に関して頑健な結論を支持するにはエビデンスは不十分である。

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背景: 

食事由来の抗酸化物質と喘息または運動誘発性気管支収縮(EIB)との関連はまだ完全に解明されていない。ビタミンCおよびEは、主に果物と野菜に存在する天然抗酸化物質である。不十分なビタミンE摂取は、気道の炎症に関連している。喘息または運動誘発性気管支収縮患者のためには、単一の抗酸化物質のいずれかよりもこの組合せのほうが有利であるかもしれないと考えられている。

目的: 

慢性喘息を有する成人および小児患者を対象として、増悪と健康関連QOL(HRQL)に対するビタミンCおよびEの補充の効果をプラセボ(ビタミンCおよびE補充なし)と比較して評価すること。また、喘息患者と、喘息の診断を有しておらず運動時のみ症状が発現する人を対象として、運動誘発性気管支収縮に対するビタミンCおよびEの潜在的効果を検討すること。

検索戦略: 

Cochrane Airways Review Group Specialised Registerと試験登録ウェブサイトで試験を同定した。検索は2013年9月に実施した。

選択基準: 

喘息の診断を有する成人と小児のランダム化比較試験を選択した。それとは別に、参加者が運動誘発性気管支収縮(または運動誘発性喘息)と診断された試験を検討した。ビタミンCおよびE補充とプラセボを比較した試験を選択した。治療のための喘息管理と対照群が同様の背景を含む試験を選択した。喘息患者における増悪時または風邪の症状のためのビタミンCおよびEの短期使用は、本レビューの範囲外である。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者独立して、選択候補研究の標題と抄録をスクリーニングし、その後、選択のために研究報告書全文をスクリーニングした。Cochrane Collaborationにより期待される標準的方法を用いた。

主な結果: 

選択した研究5件(参加者214例)を統合することはできなかった。4件(参加者206例)では、喘息患者にビタミンCおよびE補充またはプラセボを提供して比較した場合にアウトカムに差がみられるかという疑問に取組み、これらの研究の1件のみ(小児160例)が小児集団を組み入れていた。残りの3件が組み入れていたのは合わせてわずか46例の成人であった。追加の研究1件では、運動誘発性喘息においてビタミンCおよびE補充またはプラセボを比較した場合にアウトカムに差がみられるかどうかを検討した。この試験が組み入れていたのはわずか8例の参加者であった。これらの試験のランダム化のプロセスは不明で、エビデンスの質の格下げにつながった。これらの研究のうち4件は二重盲検であったが、あとの1件は単盲検であった。

これらの研究のいずれも、事前に規定したレビューアらの2つの主なアウトカム指標、増悪とHRQLに関するデータを提供していなかった。研究から得られた肺機能データは確定的ではなかった。効果に関して何らかの示唆が得られた、またはいくつかのアウトカムが得られた研究は、小児、特に中等度から重度の喘息小児患者の研究と運動誘発性喘息の小規模な研究であった。それでも、このエビデンスの質は中等度/低と判断された。1件のみが喘息症状および有害事象に関するデータを寄せ、症状に対する介入の効果のエビデンスは報告していなかった。また治療群の参加者1例が膀胱炎のため脱落した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.10]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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