早産児の経口哺乳に対する口腔刺激の効果

レビューの論点

妊娠37週より前に生まれた早産児に、指による刺激を用いた口腔刺激介入を行う:

完全経口哺乳を達成するまでの期間(日数)の短縮につながるか?

新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care:NICU)で過ごす期間(日数)の短縮につながるか?

入院期間(日数)の短縮につながるか?

栄養チューブ(経静脈栄養)により栄養補給される期間(日数)の短縮につながるか?

背景

これは2016年のレビューのアップデート版である。多くの早産児は、経口(吸啜)哺乳の確立が遅く、最初は栄養チューブや経静脈(非経口)栄養により栄養補給される。経口哺乳能力の発達には、吸啜、嚥下、呼吸の綿密な協調を必要とする。早産児における経口哺乳の確立は困難な場合がある。その理由として、入院期間が長いこと、呼吸困難および早産に関連するその他の医学的症状を呈することが挙げられる。人工呼吸、および口や鼻からの頻回の分泌物吸引といった不快な処置は、経口哺乳能力に悪影響を及ぼす可能性がある。経管栄養から経口哺乳への移行に関する国際的なガイドラインは、内容のばらつきが大きい。医療従事者は、早産時の吸啜・哺乳能力を向上させるためにさまざまな介入を用いており、経管栄養から経口哺乳への移行期間の短縮、入院期間の短縮、乳児の吸啜能力の向上につながることが複数の研究で報告されている。本レビューの初回(2016年に実施)では、経口刺激介入は入院期間を短縮し、経管栄養の必要性を減らし、経口哺乳への移行を早めるようであるが、研究は方法論の質が低く、全体的な効果については不確実性を残していることが示された。今回のアップデートでは、現在の研究がこれらの知見を支持しているかどうか、また研究の質が向上し、結果の確実性が高くなったかどうかを評価した。

研究の特性

このレビューでは、早産児のみを対象として指による口腔刺激を検討したランダム化比較試験(randomised controlled trial: RCT)を組み入れた。レビュー著者らは、電子データベース、臨床試験レジストリ、査読付き学術雑誌、報告された学会抄録の検索を通じて、組み入れ対象とする研究を同定した。検索は2022年3月現在のものである。

主要な結果

今回のアップデートでは、参加者数が少なく、質のばらつきがある研究12件を新たに追加し、合計28件の研究を対象とした。科学的根拠(エビデンス)の確実性は「低い」または「非常に低い」と評価されたため、口腔刺激介入が経口哺乳への移行期間、入院期間、非経口栄養で栄養補給される期間を短縮できるかどうかは依然として明らかにされていないが、何らかの有益性があるかもしれない。NICU在室期間について報告した研究はなかった。介入の長期的な転帰(6カ月を超える)を観察した研究はなかった。

エビデンスの確実性

これらの研究では乳児の数が少なく、研究者が採用した方法の質にもばらつきがあり、エビデンスの確実性は「低い」または「非常に低い」と推定される。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2023. 10.31] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD009720.pub3】

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