レビューの論点
妊娠37週より前に生まれた早産児に、指による刺激を用いた口腔刺激介入を行った場合:
・完全経口哺乳を達成するまでの期間および入院期間の短縮につながるか?
・完全経口哺乳、完全母乳哺育またはいかなる直接母乳哺育を達成できるか?
・吸啜力を強化できるか?
・成長速度を速め、発達を改善できるか?
背景
多くの早産児は、経口(吸啜)哺乳の確立が遅く、最初は栄養チューブや経静脈(非経口)栄養により栄養補給される。経口哺乳能力の発達には、吸啜、嚥下、呼吸の綿密な協調を必要とする。早産児における経口哺乳の確立は困難な場合がある。その理由として、入院期間が長いこと、呼吸困難および早産に関連するその他の医学的症状を呈することが挙げられる。人工呼吸、および口や鼻からの頻回の分泌物吸引といった不快な処置は、経口哺乳能力に悪影響を及ぼす可能性がある。経管栄養から経口哺乳への移行に関する国際的なガイドラインは、内容のばらつきが大きい。医療従事者は、早産児の吸啜・哺乳能力を向上させるためにさまざまな介入を用いており、経管栄養から経口哺乳への移行期間の短縮、入院期間の短縮、乳児の吸啜能力の向上につながることが複数の研究で報告されている。栄養の投与前および投与中における指を用いた口腔刺激による介入を評価したコクランレビューはない。
研究の特性
本レビューでは、早産児のみを対象として指による口腔刺激を検討したランダム化比較試験(randomised controlled trial:RCT)を組み入れた。レビューの著者らは、電子データベース、臨床試験レジストリ、査読付き学術誌、発表された学会抄録の検索を通じて、組み入れ対象とする研究を同定した。
主要な結果
参加者数が少ない質の低い研究19件を組み入れた。研究結果から、口腔刺激介入が経口哺乳への移行期間、入院期間および非経口栄養を行う期間を短縮する可能性が示唆される。介入の長期的な転帰(6カ月を超える)を観察した研究はなかった。これらの研究では、母乳哺育の転帰や体重増加に対する効果は報告されなかった。
エビデンスの質
これらの研究は小規模で、大部分は方法論の質が低いまたは極めて低いものであった。レビューの著者らによると、口腔刺激介入の効果、有効性および安全性を裏付ける質の高い研究は同定されなかった。本介入の潜在的な有益性および有害性に関する情報を、親やケアギバー(介護者等)に提供するには、大規模かつ試験デザインに優れたランダム化比較試験が必要である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2022.11.1] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009720.pub2》