血圧に対するココアの効果

レビューの論点

成人を対象に、2週間以上にわたり連日摂取した場合の血圧に対するココア製品の効果を評価した。治療比較40件を含む35試験を同定した。

背景

ブラックチョコレートやココア製品は、フラバノールと呼ばれる化合物を豊富に含んでいる。心血管疾患(心臓および血管の障害)のリスクファクターとして知られる血圧の低下に役立つ可能性があるため、フラバノールに対する関心が高まっている。血圧を下げるフラバノールの性質は、一酸化窒素によって生じる血管拡張に関連していると考えられる。

研究の特性

各研究の期間は短く、ほとんどが2~12週間であり、18週間はわずか1試験であった。研究は、主として健康成人1804名を対象としていた。試験では、実介入群において、1日1.4~105 gのココア製品中のフラバノール30~1218 mg(平均670 mg)を参加者に摂取させていた。7試験が試験結果に商業的利害を持つ企業からの資金援助を受けており、上記7試験では、報告された効果が若干大きかったため、バイアスの可能性が示唆された。検索した文献は2016年11月までのものである。

主な結果

治療比較40件のメタアナリシスでは、わずかではあるが統計学的に有意な1.8 mmHgの血圧低下(収縮期血圧および拡張期血圧)がみられた。このわずかな血圧低下は、他の治療選択肢を補完し、心血管疾患リスクの低減に役立つ可能性がある。

試験開始時の参加者の血圧、年齢、割付け群(実介入群または対照群)を認識していたか否か、対照群のフラバノール含有量あるいは試験実施期間によって、試験間のばらつきに説明がつくか否かを調査した。血圧状態(高血圧または正常血圧)が血圧に対するココアの効果量の因子である可能性が高いものの、今後の試験で、他の因子の影響を確認または否定する必要がある。

消化管愁訴や試験に用いた製品に対する嫌悪などの副作用は、ココア実介入群ではわずかに1%、対照群では0.4%にみられた。

フラバノール高含有ココア製品の習慣的な摂取が血圧および心血管の健康に長期にわたって有益な作用を有するか否か、また、日常的にココア製品を長期摂取することにより副作用が生じるか否かを明らかにするため、長期試験の実施が求められる。

エビデンスの質

エビデンスレベルは中等度である。長期にわたるココア製品の日常的な摂取がもたらす血圧への影響を検討したランダム化比較試験を同定することはできず、また、心臓発作または脳卒中などの高血圧による健康上の影響を評価した試験は存在しなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2017.11.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 CD008893 Pub3

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