甲状腺機能低下症に対する中薬(中医学の薬草療法)

レビューの論点

甲状腺機能低下症に対し、中薬(中医学の薬草療法)はどのような効果があるか?

背景

甲状腺機能低下症は、「甲状腺機能不全」または「甲状腺ホルモン不足」の症状としても知られ、甲状腺が十分な量の甲状腺ホルモンを産生しない状態である。甲状腺ホルモンは多数の身体機能(代謝)に重要である。甲状腺機能低下症の成人では、疲労および活動低下、寒さに対する感受性の上昇、便秘、青白く乾燥した皮膚、爪や頭髪が脆い、顔のむくみ、しわがれ声、原因不明の体重増加、筋肉痛、圧痛、凝り、虚弱、疼痛、関節のこわばりまたは腫脹、通常より重い月経、うつ病が認められる。甲状腺機能低下症の幼児または10代の若年者では、発育不良や精神発達障害のほか、永久歯の発達や思春期成長に遅延が認められる。

中国哲学および中医学の理論によると、物質界の重要な構成要素は陰(Yin)と陽(Yang)である。陽が不足すると、身体の機能を良好に維持するために必要なエネルギーを産生できず、甲状腺機能低下症の症状を引き起こす。中薬は陽を回復させると考えられているが、具体的な機序は不明である。

結果

甲状腺機能低下症に対する中薬の効果を検討したランダム化試験または継続中の試験が同定されなかったため、この治療法の効果を判定できなかった。

エビデンスの新しさ

エビデンスは、2014年9月現在のものである。

著者の結論: 

現時点では、甲状腺機能低下症の治療に対する中薬に関してRCTから得られたエビデンスは存在しない。継続中の登録試験も同定されなかった。

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背景: 

甲状腺機能低下症と呼ばれる臨床状態の主な特徴は、甲状腺ホルモンの産生低下である。中国哲学および中医学の理論では、陽(Yang)の欠乏が本疾患の原因である。中薬(中医学の薬草療法)(CHM)は陽を回復させると考えられており、長年の間、中国で甲状腺機能低下症の治療に用いられている。

目的: 

甲状腺機能低下症に対する中薬の効果を評価すること。

検索戦略: 

ランダム化比較試験(RCT)について、The Cochrane Library、MEDLINE、EMBASE、Chinese Biomedical Literature Database on DiscおよChina National Knowledge Infrastructureを検索した。全データベースの最終検索日は2014年9月であった。臨床試験レジストリ内の継続中の試験も検索した。

選択基準: 

中薬を単独で使用または甲状腺ホルモン療法と併用し、無治療、プラセボまたは甲状腺ホルモン療法と比較したRCTを対象とした。処方の異なる中薬も、単独または甲状腺ホルモン療法と併用した場合について互いに比較を試みた。甲状腺機能低下症は、その原因に関係なく、試験開始時点で妥当性が確認されている基準によって診断しなければならなかった。

データ収集と分析: 

選択基準を満たす試験がなかったため、データ抽出およびバイアスのリスク評価は実施しなかった。

主な結果: 

RCTを同定できなかったため、甲状腺機能低下症に対する中薬の効果を確立できなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.20]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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