固定性矯正装置の治療における大臼歯チューブのボンディング

固定性矯正装置による治療における大臼歯チューブのボンディング矯正治療では、固定性また可撤性矯正装置を用いて、歯の位置を改善する。歯の矯正器具による治療をするために、金属の器具(ブラケットやバンド)が歯に接着されて、治療中に外れないことが必要である。通常、ブラケット(金属の四角の形をした器具)は、大臼歯以外では歯に直接ボンディングされることが多いのに対して、大臼歯ではバンド(歯を取り囲む金属性のリング状のもの)が用いられることが多い。矯正用のチューブ(ステンレス製のチューブ状のもので、そのなかにワイヤーが通る)は、バンドに溶接されることが多いが、接着材で直接大臼歯にボンディングすることもある。ブラケットやバンドやボンディングされた大臼歯チューブの脱落は、矯正装置による治療の進行を遅らせることがある。このレビューによって、よく計画された2つの研究が見出された。限られたデータではあるが、大臼歯にチューブをボンディングした場合には、バンドを使用した場合に比べると、より高い脱落率を示すようだ。

著者の結論: 

よく計画された、バイアスのリスクが低い2つの研究がこのレビューに含まれていたので、化学重合型であれ、光重合型接着材であっても大臼歯へのチューブのボンディングを行った場合には、大臼歯にバンドを使用してグラスアイオノマーセメントで装着した場合に比べて、かなり高い割合でチューブの脱落がおきることが示されている。ひとつの研究では、大臼歯のバンドをグラスアイオノマーセメントで装着したもののほうが、光重合型接着材でボンディングしたものより、歯の脱灰が少ないことを示している。しかしながら、この結果については限られたデータであるので、より確実な結論を得るためには、さらなるエビデンスが必要である。

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背景: 

矯正治療では、固定性または可撤性装置(矯正器具)を用いて、歯の位置を改善する。固定式装置の治療がうまくいくかどうかは、金属の器具(ブラケットやバンド)を、それらが治療中に外れないように歯に接着することが大事である。ブラケット(金属の四角の形をした器具)は、通常大臼歯以外の歯に装着されるが、大臼歯ではバンド(歯を取り囲む金属性のリング状のもの)が用いられることが多い。矯正治療で用いられるチューブ(ステンレス製のチューブ状のもので、そのなかにワイヤーが通る)は、一般的にはバンドに溶接されるが、直接、接着剤で大臼歯に接着されることもある。固定式矯正装置を用いた治療では、ブラケットやバンド、大臼歯に接着されたチューブが外れると、治療の進行が遅れることがある。これによって、治療時間や材料をより費やすことになり、患者のために費やすべき指導や治療の時間が失われる。

目的: 

大臼歯にチューブを接着する場合の接着材料の有効性を評価し、固定性矯正装置で治療する場合に、大臼歯にチューブをボンディングして接着することが、大臼歯にバンドを用いて接着する場合に比べて、1)どのくらい治療期間中に、チューブやバンドが外れやすいのか。2)バンドを使った場合と直接ボンディングした場合で、どちらがう触になりにくいのかという点に関して、相対的な有効性を評価する。

検索戦略: 

以下の電子データベースを検索した。(the Cochrane Oral Health Group Trials Register (to 16 December 2010), theCochrane Central Register of Controlled Clinical Trials (CENTRAL) (The Cochrane Library 2010, Issue 3), MEDLINE via OVID(1950 to 16 December 2010) and EMBASE via OVID (1980 to 16 December 2010)。使用言語や出版時期については制限しなかった。

選択基準: 

全顎の固定性矯正装置で、第一、または第二大臼歯にチューブがボンディングされたものを対象としたRCT(ランダム化比較試験)のみが選択された。これらには、大臼歯にチューブ(ステンレスまたはチタン製)を接着したいくつかの接着材と他の接着材を比較した研究も含まれた。これらの研究にはまた、1)同じ歯列の片側にチューブが接着されて、反対側にはバンドがセメント合着されたものを比較した研究や、2)あるグループのある歯種にチューブをボンディングしたものと、他のグループの同じ歯種にバンドを装着したものを比較した研究が含まれた。

データ収集と分析: 

論文の選択にあたっては、適格性の決定とデータ抽出は、各著者らが個別に、用いた接着材や得られた結果についてのブラインドなしで繰り返し行った。相違点については、議論して解決した。

主な結果: 

2つの研究(n = 190)が、バイアスのリスクが低いと判断されレビューされた。両研究で、初回の脱落のデータが示された。集積したデータでは、それぞれの歯のレベルで大臼歯のバンドの初回脱落の方が有利な統計的有意差が認められ、ハザード比2.92だった。(95% 信頼区間 (CI) 1.80~4.72)。2つの研究間に、異質性は認められなかった。また、初回脱落についてのデータが、患者レベルでも得られ、同じく大臼歯バンドに有利な統計的有意差が認められた(リスク比2.30; 95%信頼区間: CI 1.56~3.41)(大臼歯チューブの外れるリスク=57%; 大臼歯バンドの外れるリスク=25%)。ひとつの研究では、歯の脱灰に関しても、バンドに有利な有意差が認められた。その他の有害事象は確認できなかった。

訳注: 

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