子宮頸癌女性患者に対する化学療法併用手術と手術単独の比較

世界的にみて子宮頸癌は女性にとって二番目に多い癌です。一部の国では、スクリーニング(塗抹検査)により子宮頸癌患者数が減少していますが、多くの女性が依然として毎年この疾患により死亡しています。<br /><br />がんが子宮頸部の外に広がっていない場合(疾患の早期段階)、患者は頸部、子宮、卵管およびおそらくその他の近傍組織を摘出する手術(根治術)を受けることになります。あるいは、X線照射治療(根治的放射線療法)を受ける場合もあります。どちらの治療もともに同じぐらい良好な結果を得ています。腫瘍がもっと大きくなった場合、または頸部周囲組織に広がっている場合(局所進行疾患)、患者はまた、放射線治療(化学放射治療)と同時に化学療法(薬物療法)を受けることになります。<br /><br />根治術前の化学療法(ネオアジュバント化学療法)を施行することにより腫瘍を縮小させることが可能です。この治療により手術が容易となり、検出困難な小さな腫瘍を摘出できるようになります。前回のレビューにより、根治術前に化学療法を受けた患者は根治的放射線治療を受けた患者より生存期間が長くなったことがわかります。しかし、根治術前に施行する化学療法自体が根治術より優れているかどうかはわかりません。<br /><br />本レビューでは女性1,078名を含む6件の試験が見出されました。試験から得た情報により、術前に施行する化学療法は、生存期間を延長し、しかも癌の再発がないままで延長する上で有用であることが明らかにされました。化学療法が根治術を容易にするか、あるいは癌再発を予防するかどうか明らかではありません。使用した薬剤の種類、用法は結果に影響しませんでした。又、疾患の早期でもより進行した段階でも同様の結果が得られました。<br /><br />1件の試験で、女性患者全員が術後に放射線治療を受けていました(術後放射線療法)。その他の試験では、患者の3分の2までが術後に放射線治療を受けていました。この放射線治療が結果にどのように影響したかは確認されていません。この治療により副作用の発現率も高くなる可能性があります。<br /><br />ネオアジュバント化学療法は子宮頸癌女性の生存期間を延長し、しかも再発がないままで延長する上で有用であると思われますが、結果は少数の試験のみに基づいています。新規薬剤または薬剤の新たな併用法で有望な結果が示されれば、これら術前のネオアジュバント化学療法の施行という新しい治療法についてさらに試験を実施する価値が生まれます。

著者の結論: 

OSおよびPFSともネオアジュバント化学療法による改善を認めた。他の既定アウトカムに対する効果は明らかではないが、全てにおいてネオアジュバント化学療法の方が優れた傾向を示した。上記結果から言えるのは、早期または局所進行子宮頸癌女性に対するネオアジュバント化学療法は手術単独より有益かもしれないということだが、エビデンスは少数の試験にのみ基づいたものであり、さらなる研究が必要である。

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背景: 

過去のシステマティック・レビューでは、術前のネオアジュバント化学療法施行により、放射線療法と比べて生存率の改善が認められた。しかし、手術単独と比較して術前のネオアジュバント化学療法を行う役割は依然として明らかでない。

目的: 

早期または局所進行した子宮頸癌女性に対するネオアジュバント化学療法の役割を評価する。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、コクラン・ライブラリ)(2012年第8号まで)、MEDLINE(OVID)(2012年8月まで)、LILACS(2012年8月まで)、Physician's Data Query(PDQ)(2012年8月まで)を検索した。発表済み・未発表の試験を検索して、条件を付けることなく多くの試験情報源をシステマティックに検索した。

選択基準: 

治療間の比較の妨げになると思われる治療を過去に受けていない早期または局所進行した子宮頸癌女性を対象として、ネオアジュバント化学療法併用手術と手術単独とを比較するランダム化試験。手術不能な腫瘍に対する根治的放射線治療および/または術後放射線治療を施行した試験も適格とした。主要アウトカムは全生存(OS)であった。副次アウトカムは、無増悪生存期間(PFS)、局所再発および遠隔再発、切除率および手術合併症罹患率であった。

データ収集と分析: 

レビューア2名が別々に試験レポートからデータを抽出しチェックした。アウトカムの種類により、試験のハザード比(HR)およびオッズ比(OR)を試験レポートから引用もしくは推定するか、またはその試験研究者に問い合わせた。

主な結果: 

本更新レビューに組み入れる6件の試験(女性1,078名)が同定された。6試験全部でOS(女性1,071名)およびPFS(女性1,027名)に関するデータが得られた。切除率および病理学的奏功に関するデータは、5件の試験からのみ入手可能で(女性908~940名)、再発率に関するデータは4件の試験からのみ入手可能であった(女性737名)。OS[HR 0.77、95%信頼区間(CI)0.62~0.96、P = 0.02]およびPFS(HR 0.75、95%CI 0.61~0.93、P = 0.008)はともにネオアジュバント化学療法で有意に改善した。異質性が認められたものの、局所再発の推定値は、ネオアジュバント化学療法群でより優れた効果を認めた(OR 0.67、95%CI 0.45~0.99、P = 0.04)。ランダム効果モデルを使用すると、その結果は有意ではなくなった(OR 0.60、95%CI 0.32~1.12、P = 0.11)。遠隔再発の推定値(OR 0.72、95%CI 0.45~1.14、P = 0.16)および切除率の推定値(OR 1.55、95%CI 0.96~2.50、P = 0.07)は有意とはいえないが、ネオアジュバント化学療法の方が優れた傾向を示した。やはりこれも異質性が認められた。病理学的奏功に関する予備解析では、ネオアジュバント化学療法で有害な病理所見の有意な減少を認め(「リンパ節状態」がOR 0.54、95%CI 0.40~0.73、P = < 0.0001、「子宮傍組織への 浸潤」がOR 0.58、95%CI 0.41~0.82、P = 0.002、かなりの異質性が認められたがランダム効果モデルを用いた場合も依然として有意であった。シスプラチンの総用量、化学療法サイクルの期間または子宮頸癌の病期による生存率に関してもまた、ネオアジュバント化学療法の効果に差を認めなかった。

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