慢性喘息に対する吸入ステロイド薬とホルモテロール定期投与における重篤な有害事象

レビューの論点

成人と小児の喘息患者に使用する吸入ステロイド薬(ICS)にホルモテロールを定期的に併用することは安全なのか。

背景

喘息は肺の病気のひとつであり、喘鳴(ゼェー、ヒューという高音の連続音)、息切れ、胸が苦しいなどの症状がある。喘息の主な二つの特徴が、その原因でもある炎症と気管支収縮(肺の小さな管のまわりにある筋肉がこわばること)である。炎症はステロイドの吸入薬を毎日使うことによって治療できる。気管支収縮はβ(ベータ)2刺激薬を使って筋肉を弛緩させることによって治療でき、それによって気管が広がり呼吸が楽になる。β2刺激薬の使用目的には、胸苦しさの症状を緩和するため(「短時間作用型β2刺激薬」)と症状の発現を予防するため(「長時間作用型β2刺激薬」またはLABA)という2通りがある。

低用量ICSを毎日使っても喘息がコントロールされないとき、喘息の治療ガイドラインの多くが毎日の投薬にホルモテロールなどのLABAを追加することを推奨している。LABAによって肺機能、症状、QOL(生活の質)や増悪(症状悪化)が改善されることは明らかである。一方、喘息患者に対するLABAがどの程度安全なのかについては長年にわたり論争が続いている。本レビューでは、まれに起こる重篤な有害事象に焦点を絞ることによって、この点を検討したいと考えた。重篤な有害事象とは、生死に関わる、入院を要する、または入院している場合はその期間延長を要する、持続的なまたは著しい身体障害、あるいは先天異常(生まれつきの異常)を生じるイベントと定義する。

主な結果

解析には、成人35,751人を含む29試験と、17歳までの小児4035人を含む10試験のデータを使用した。各試験の参加者によって喘息の重症度はさまざまであったが、そのほとんどが以前にICSを定期投与する治療を受けていた(使用した用量はさまざまであった)。試験に参加した小児の人数が少なすぎるため、小児に対する効果が確実であるとはいえなかった。

成人35,751人のうち30人の死亡が報告されていた。このうち17人はホルモテロールとICSを併用していた患者群、13人はICSのみを使用していた患者群からの死亡例であった。ホルモテロールとICSを併用していた成人患者群から出た3人の死亡例は喘息によるものであったが、ICSのみを使用していた患者群には喘息による死亡はなかった。小児(17歳まで)に死亡例はなかった。

あらゆる原因によって重篤な害を受けた患者数は、ホルモテロールを使用した場合も使用しなかった場合も、成人では同等であった。ICSとホルモテロールを定期的に併用している喘息患者では、ICSのみの場合と比較して重篤な害が発生するリスクにはなかったが、ICSのみを使用している場合と比べてイベントの発生リスクに増減があることを確実に否定することはできなかった。

エビデンスの質

成人のデータに関しては中等度の確実性があったが、小児に対してICSにホルモテロールを追加することによる効果の確実性はそれより低かった。各試験で発生した死亡数が少ないことを考慮すると、ICSにホルモテロールを追加することによる死亡数の増大リスクを正確に評価できるだけの情報がまだ十分ではない。

また、ほぼ全試験が製薬会社から資金提供を受けていた。

そのほかに、重篤な有害事象の原因(つまり、試験関係者によって喘息関連の原因であると判定されたのかどうか)が独立して評価されていなかったことや、有害事象が発生した患者がどの患者群なのかを推測できた可能性があることが懸念としてあげられる。臨床試験の参加者は偽薬または実際の治療薬のどちらを使用しているのか知らなかったが、ホルモテロールは症状にかなり大きな効果がある。ということは、どの患者がホルモテロールを使用しているのか推測が可能であったと考えられる。患者が実際に推測が可能だったかどうかを知ることは不可能であるため、主な評価対象を原因に関係なく全イベントとし、原因を評価する必要がないようにした。

結論

ICSにホルモテロールを追加する治療には、ICSのみと比較して、死亡数増加のリスクが全くないとは自信をもって言い切ることができない。一方、重篤な害が増えるという決定的なエビデンスも認められなかった。ホルモテロールとICSを併用する治療を受けた成人12,777人のうち、喘息関連で死亡したのは3人であった。成人に対してホルモテロールをICSに追加すると、非致死的ではあるが重篤な害が生じるリスクに関して決定的なエビデンスは認められなかった。

この一般語訳は2019年2月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 ギボンズ京子 翻訳、山本依志子 監訳[2020.03.03] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006924.pub4》

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