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提供卵子による胚移植や凍結胚移植のための子宮内膜の準備

レビューの論点

凍結胚やドナー卵子由来の胚を用いた胚移植を受ける女性の子宮内膜の準備には、どのような方法が最も効果的か?

背景

不妊治療を受けるカップルにおける不妊の原因には、男性因子、女性因子、または原因不明のものがある。新鮮胚移植が不成功に終わった後、凍結胚が利用可能な場合は凍結融解胚移植を行うことができる。妊娠の可能性を最大限に高めるためには、提供卵子による胚移植の周期と凍結胚移植周期のいずれにおいても、子宮内膜をホルモンで充分に整えることが何よりも重要である。着床率を最適化し、結果的に胚移植の成功率を向上させるために、多くの研究者によって多くの薬剤や様々な投与方法が試みられてきた。刺激周期(内因性エストラジオールを産生させる)、人工周期(外因性エストラジオールを投与する)、自然周期(刺激をせずに卵巣にエストラジオールを産生させる)などの選択肢がある。また、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストおよびアンタゴニストを用いて自然排卵を回避することも何らかの影響を与える可能性がある。子宮内膜の受容性を高める可能性のあるアスピリンやステロイドなどの薬剤を使用することも評価の対象とした。

研究の特性

合計5426人の女性を対象に、エストロゲンとプロゲストーゲンの投与量と投与経路、早期排卵を阻止する薬剤(GnRHアゴニストなど)の使用、子宮内膜を改善するための他の薬剤の使用など、異なる介入方法を比較した31のランダム化比較試験を特定した。エビデンスは2020年6月現在のものである。

主要な結果

子宮内膜の準備のためにレトロゾールを使用した刺激周期が、人工周期と比較して出生率を改善するかどうかは不明である。エビデンスによると、人工周期での出生率を24%と仮定した場合、刺激周期での出生率は13%~51%となる。また、流産率や子宮内膜の厚さへの影響についても不明である。刺激周期は、臨床的妊娠率を向上させる可能性がある。多胎妊娠、周期のキャンセル、その他の有害事象に関するデータは不足していた。

自然周期が、人工周期と比較して、出生率、妊娠率、流産率、子宮内膜の厚さを改善するかどうかは不明である。他のすべての結果についてはデータが不足していた。

エストロゲンの経皮投与が、エストロゲンの経口投与と比較して、臨床上の妊娠率や流産率を改善するかどうかは不明である。他のすべての結果についてはデータが不足していた。

ドナー卵子採取の当日または翌日にプロゲストーゲンを開始することで、臨床妊娠率が向上し、周期キャンセル率も低下すると考えられる。流産率を下げるかどうかは不明である。他のすべての結果についてはデータが不足していた。

GnRHアゴニストを使用した周期は、使用しなかった周期に比べ、出生率が向上する可能性がある。臨床的妊娠率、流産率、子宮内膜の厚さなどの結果について、GnRHを使用した周期をGnRHなしと比較した場合の効果は不明である。今回の比較では、その他の結果について報告した研究はなかった。

どのGnRHアゴニストが他のアゴニストよりも優れているかどうかは不明である。例えば、リュープロレリンを毎日投与する周期とトリプトレリンを投与する周期のどちらが臨床的妊娠率を向上させるのか、リュープロレリンを毎日投与する周期とナファレリンを毎日投与する周期のどちらが流産率を低下させるのか、といった比較である。その他のアウトカムに関する報告はなかった。

GnRHアンタゴニストは、アゴニストに比べて臨床的妊娠率を向上させると思われる。流産率や多胎妊娠率への影響については不明である。その他の結果について報告した研究はなかった。

アスピリンを使用した周期が、使用しない周期と比較して、出生率、臨床妊娠率、子宮内膜の厚さを改善するかどうかは不明である。他のすべての結果についてはデータが不足していた。

また、ステロイドを使用した周期が、ステロイドを使用しない周期と比較して、出生率、臨床妊娠率、流産率を向上させるかどうかも不明である。その他の結果について報告した研究はなかった。

エビデンスの質

エビデンスの質は中等度から非常に低度だった。エビデンスの主な限界は、研究方法の報告が不十分であったことと、出生率に関する結果の精度が不十分であったことである。

訳注

《実施組織》杉山伸子、小林絵里子 翻訳[2021.04.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006359.pub3》

Citation
Glujovsky D, Pesce R, Sueldo C, Quinteiro Retamar AM, Hart RJ, Ciapponi A. Endometrial preparation for women undergoing embryo transfer with frozen embryos or embryos derived from donor oocytes. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 10. Art. No.: CD006359. DOI: 10.1002/14651858.CD006359.pub3.