活動性潰瘍性大腸炎の治療のためのプロバイオティクス

本レビューの目的

本コクランレビューでは、潰瘍性大腸炎の人に対して、プロバイオティクスによって寛解を導入できるかどうかを明らかにすることを目的とした。この目的を達成するために、14件の研究から得られたデータを解析した。

要点

プロバイオティクスは、プラセボ(偽薬)よりも寛解の導入に優れている可能性がある。プロバイオティクスが5-アミノサリチル酸(5-ASA、炎症性腸疾患の治療に用いられる抗炎症剤)よりも優れているかどうかは明らかではないが、寛解導入にあたって、両治療法の併用療法が5-ASA単独よりも優れているという限定的な科学的根拠(エビデンス)がある。ほとんどの研究では、重篤な有害事象は発生しなかったと報告されている。報告のあった研究でも、プロバイオティクス群には重篤な有害事象は発生していなかった。軽度の有害事象として報告されていたのは、腹部膨満と下痢であった。

本レビューからわかったこと

潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症を引き起こし、腹部痛、下痢、疲労などの症状をきたす、再発と寛解を繰り返す疾患である。腸内細菌のバランスが悪いことがこの疾患の原因であることを示唆するエビデンスがいくつかある。このため、生きた微生物であるプロバイオティクスが腸内細菌を変化させて、炎症を抑えることができる可能性がある。

レビューの主な結果

プロバイオティクスとプラセボ、プロバイオティクスと5-ASA、プロバイオティクスと5-ASAの併用のそれぞれを比較したランダム化比較試験(参加者が2つ以上の治療群のひとつにランダムに割り付けられる臨床試験、RCTともいう)を検索した。 参加者計865例を対象としたランダム化比較試験(RCT)14件を同定した。各試験とも成人と小児が参加していた。8件の研究では追加治療の継続が認められていたが、これに関して他の4件では不明であった。

1) プラセボと比較して、プロバイオティクスは臨床的な寛解導入を改善させると思われる。

2) プラセボと比較して、プロバイオティクスが(軽度および重篤な)有害事象に差をもたらすかどうかは明らかではない。

3) プラセボと比較して、プロバイオティクスが疾患の改善に優れているかどうかを判断するにはエビデンスが限られている。

4) 5-ASAと比較して、プロバイオティクスによる寛解の導入には、ほとんどまたはまったく差がないと思われる(確実性の低いエビデンス)

5) プロバイオティクスと5-ASAの併用を5-ASA単独と比較したとき、プロバイオティクスが寛解導入の確率をやや向上させる可能性があることを示唆する限定的なエビデンスがある。これは研究1件からの確実性の低いエビデンスに基づいており、検討した寛解の種類は不明である。

6) プロバイオティクスをプラセボと比較したときに重篤な有害事象が報告されていたが、発生したのはプラセボ群のみであった。

結論

エビデンスは、プロバイオティクスがプラセボよりも誘導を改善することで優れている可能性を示唆している一方で、推定値のわれわれの信頼性は、低不確実性のエビデンスのために制限されている。これは、各研究の参加者数が少ないことと、試験で使用された信頼性の低い方法に起因している。対象とした試験に示されたエビデンスでは、プロバイオティクスの効果に説得力のある結論を出すことはできない。より多くの参加者を対象にした、優れたデザインの試験が必要である。

本レビューの更新状況

本レビューは、 2019 年10月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD005573.pub3》

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