コカイン依存症に対する耳介への鍼療法(耳鍼)

コカイン依存症の治療に効果的な薬剤はなく、医師は最良の治療法に関して意見が一致しない。米国と欧州の400箇所以上の薬物更正施設では、耳鍼と呼ばれるコカイン依存症に対する治療法を提供している。この治療では、鍼は通常5つの特定の耳ツボに刺入されるが、4つまたは3つのツボのみ使用する施設もある。本コクランレビューは、著者らが、耳鍼がコカイン依存症の治療に有効であるかどうか、また使用されるツボの数によって違いが出るかどうかを調べることにした。治療(鍼治療など)を受ける患者のグループと、類似するが異なる治療を受ける患者のグループ、または治療を受けないグループ(対照グループ)により比較を行うランダム化比較試験と呼ばれる研究についての医学文献を著者らは検索した。著者らは、計1433名を対象とした7件の研究を見出した。ほとんどの研究では、耳鍼治療と、治療に必要な特定のツボに刺入せず、鍼を耳の無作為な場所に刺入する耳鍼の「偽治療」とを比較した。これらの研究では、3つ、4つ、または5つの治療のツボを利用して、さまざまな鍼技術が使用された。研究結果の報告方法にはいくつかの問題があった。著者らは、耳鍼のいかなる形態もコカイン依存症の治療に有効であるというエビデンスはないと結論づけている。彼らは、数少ない得られた研究から結論を導き出すことが困難であったため、より良い研究が行われることを推奨した。

著者の結論: 

組み入れた研究の方法論的限界により、結果にバイアスが生じる可能性がある。コカイン依存症の治療に耳鍼が有効であるというエビデンスは現在のところない。エビデンスは高品質でなく、決定的ではない。

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背景: 

耳鍼(複数[通常は5本]の鍼を耳の特定の箇所に刺入する)は、コカイン依存症の治療法として広く用いられている。

目的: 

耳鍼がコカイン依存症の有効な治療法であるかどうかを判断し、その有効性が治療レジメンの影響を受けるかどうかを調べること。

検索戦略: 

我々は、Cochrane Central Register of Controlled Trials(Cochrane Library第3版、2004年)、 MEDLINE(1966年1月〜2004年10月)、EMBASE(1988年1月〜2004年10月)、PsycInfo(1985年〜2004年10月)、CINAHL(1982年〜2004年10月)、SIGLE(1980年〜2004年10月)、および記事の参照リストを検索した。

選択基準: 

コカイン依存症の患者におけるコカイン使用の減少を目的とした耳鍼の治療レジメンと、耳鍼の偽治療または無治療とを比較するランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名の著者は、発表された報告からデータをそれぞれ抽出し、Drug and Alcohol CRGチェックリストを用いて研究の質を評価した。追加情報についてすべての著者に連絡したところ、2名よりデータが提供された。耳鍼と耳鍼の偽治療および無治療とを比較した試験に対して、別のメタアナリシスを行った。主要なコカイン使用アウトカムについては、ITT解析を用い、欠損データが治療の失敗であると仮定した。提供されたデータのみを使用して、得られた症例分析も実施した。

主な結果: 

計1,433名の参加者を含む7件の研究を組み入れた。すべてが一般的に方法論的な品質が低かった。どちらもコカインや他の薬物の使用程度に関わらず、耳鍼治療と耳鍼の偽治療(RR 1.05、95%CI 0.89〜1.23)、または耳鍼治療と無治療(RR 1.06、95% CI 0.90〜1.26)の間に差異は認められなかった。しかし、メタアナリシスに組み入れた参加者数は少なく、検出力が限られた。これらの結果によって、中程度の利益または有害性は排除されない。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.26]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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