限局性前立腺癌に対する凍結療法

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著者の結論: 

凍結療法は、限局性前立腺癌の一次治療について標準的治療の代替となり得る可能性がある。しかし、利用可能な研究の質が不良であることから、本治療法の相対的利益を判定することは困難である。本疾患の男性患者における凍結療法の全ての潜在能力を完全に評価するためには、ランダム化試験が必要である。治療の選択肢として凍結療法を選択する患者には、以上のデータに報告されている有効性、合併症およびエビデンスの程度が低いことを十分に認識させるべきである。

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背景: 

前立腺癌は高齢男性の一般的な癌であり、場合によっては致死性ともなる。限局性前立腺癌に対する標準的治療には、手術(根治的前立腺摘除術)、放射線治療および積極的な監視がある。標準的治療に関連する合併症率を低下させると同時に有効な治療を開発する目的で新たな治療法の評価が行われている。このような治療法の1つが凍結療法、すなわちプローブを直接前立腺腫瘍に当てて凍結処理することによって悪性細胞を殺す手技である。

目的: 

本レビューは、限局性前立腺癌に対する一次治療について、標準的治療と比較した際の凍結療法の相対的な臨床的利益および経済的利益を評価することを目的とした。

検索戦略: 

1996年~2006年12月のMEDLINEに加え、EMBASE(Exerpta Medica Database)、コクラン・ライブラリ、ISI Science Citation Index、Database of Abstracts and Reviews of Effectiveness(DARE)およびLILACSを電子的に検索し、限局性前立腺癌に対する凍結療法に関連するすべての発表済みランダム化試験を同定した。最新の日付までCancerlit® and HealthSTAR databasesを検索した。関連雑誌をハンドサーチした。

選択基準: 

限局性前立腺癌の男性患者の一次治療について、凍結療法の有効性と、根治的前立腺摘除術、放射線治療または積極的な監視の有効性を比較している発表済みのランダム化試験のみを本レビューに含めることを条件とした。

データ収集と分析: 

適格な研究からデータを抽出した。データには、研究デザイン、参加者、介入およびアウトカムが含まれた。主要なアウトカム指標は、生化学的な無病生存期間、無病生存期間および治療による合併症であった。副次的なアウトカムには、疾患特異的生存、全生存率、生活の質のアウトカム指標および経済に影響を与える指標が含まれた。

主な結果: 

限局性前立腺癌の一次治療について、凍結療法と他の治療法を比較しているランダム化試験は見つからなかった。同定された研究はすべて症例集積であった。現存するエビンデンスのレベルを示すために、少なくとも50例の限局性前立腺癌患者において最低1年間追跡を行っている経直腸的超音波ガイドおよび尿道加温を用いた一次治療としての凍結療法を評価した研究をレビューした。これらの基準に従った8件の症例集積を同定した。2件は後ろ向きであった。リクルートされた患者(1483例)の年齢範囲は41~84歳で、病期はT1=0~43%、T2=24~88%、T3=1~41%、T4=0~14%であった。術前のPSA値の平均は9.7~39ng/mL、Gleasonスコア7未満は6~37%であった。凍結療法(全凍結療法(total)および尿道を温存した標準的な凍結療法)と根治的前立腺摘除術を比較した1件の別の研究も同定し、レビューした。本研究では、術後のPSAが0.2ng/mL以下と定義されている成功率は、全凍結療法で96%、標準的凍結療法で49%、根治的前立腺摘除術で73%と報告されていた。4件の研究では、凍結手術の温度の監視が行われておらず、患者の17~28%は、凍結療法後の生検が陽性であり、PSA最低値の平均は0.55~1.75ng/mL(中央値0.4~1.85ng/mL)と報告された。他の4件では、凍結手術の温度を監視するために熱電対が使用されており、無増悪生存率は71~89%であり、患者の1.4~13%は凍結療法後の生検が陽性であったと報告された。2件の研究では5年全生存率は89~92%、1件の研究では疾患特異的生存率は94%と報告された。全研究において認められた主な合併症は、性交不能症(47~100%)、失禁(1.3~19%)および尿道粘膜脱落(3.9~85%)であった。あまり一般的でない合併症は、瘻孔(0~2%)、膀胱頚部閉塞(2~55%)、狭窄(2.2~17%)および疼痛(0.4~3.1%)であった。ほとんどの患者は翌日(範囲1~4日)自宅に帰った。