抗てんかん薬の急な中止と時間をかけた中止

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背景

てんかんは、脳の異常な放電によって発作をくり返す障害である。これらの発作を防ぐために抗てんかん薬が使われている。抗てんかん薬を定期的に摂取することで、長期的な副作用が出る可能性がある。寛解(しばらく発作がない状態)の場合に、薬を中止しようとするのは論理的なことである。その際の2つの重要な課題は、いつ、どのようにして止めるかということである。

レビューの目的

本レビューでは、抗てんかん薬の中止の早さに関するエビデンスについて、様々な研究を分析した。てんかん患者の様々な発作コントロール期間の後、これらの薬剤の急速な中止または時間をかけた中止(漸減)を評価する無作為化比較試験を対象とした。

結果

てんかんを持つ206人の小児を対象に実施された2件の小規模研究のみを対象とした。対象とした研究では、異なる評価時点で、発作のない状態を維持している参加者の割合に、急速に中止した群と徐々に中止した群との間で差は見られなかった。その他、てんかん重積状態(長い発作)、死亡、発作に関連する病気、生活の質といった指標に関するデータはなかった。成人における抗てんかん薬の中止について、調査を完了した試験はなかった。

現在、イタリアで1つの試験が進行中で、少なくとも2年間発作がなかった局所性てんかんまたは全身性てんかんの成人を対象に、抗てんかん薬の緩徐なまたは急速な薬の中止スケジュールが発作の再発(再燃)に影響を与えるかどうかを検討している(予備的な結果は得られていない)。

エビデンスの信頼性

2つの研究から得られたエビデンスは、信頼性が非常に低かった。どちらの研究も参加者が少なく、グループ間の差を検出するのに十分なデータがなかった。さらに、2つの研究は小児だけを対象としているので、結果は成人には一般化できない。したがって、抗てんかん薬の最適な漸減率(減らし方)については、現在のところ信頼できるエビデンスはない。

このエビデンスは2019年4月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》冨成麻帆、 瀬戸屋希 翻訳[2021.1.16(監訳終了日)]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD005003.pub3》