重症急性呼吸器症候群(SARS)治療における西洋薬と漢方の併用

重症急性呼吸器症候群(SARS)は急性呼吸器疾患で、インフルエンザ様(流感様)の症状を特徴とし、2002年に初めて出現した。SARSの進行は速く、地域感染型の急性呼吸器病で、あらゆる接触様式により感染が拡大する。漢方薬と西洋薬の併用はSARSの治療に重要な役割を担っており、このレビューでは、漢方薬・西洋薬併用療法の有効性および安全性を評価した。SARSの確定診断を受けた5327例のうち、3104例が伝統中国医療を受けた。有効なSARS治療法を提案するため、SARS治療に対する漢方薬の役割を探索した。

SARS患者640例を対象とした、12件のランダム化比較試験(RCT)および1件の準RCTを同定した。クリニカル・エビデンス(臨床的な証拠)は、西洋薬と漢方薬を併用しても死亡率が低下しないことを示している。別の漢方薬を西洋薬と併用した場合は、症状、生活の質、肺浸潤物の吸収を改善し、ステロイド投与量を減量させる可能性がある。高度の有害事象は認められなかった。対象試験の質が低いため、エビデンスは弱い。

著者の結論: 

西洋薬と漢方薬を併用した場合と西洋薬単独の場合を比較した結果、死亡率の低下に差異は認められなかった。西洋薬と漢方薬を併用した場合、SARS患者の症状、生活の質、肺浸潤物の吸収を改善し、ステロイド投与量を減量させる可能性がある。対象試験の質が低いため、エビデンスは弱い。対象試験の質が低いため、エビデンスは弱い。

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背景: 

重症急性呼吸器症候群(SARS)は新種のコロナウイルスによって引き起こされる急性呼吸器疾患で、2002年12月22日に中国の仏山市で最初に発生した。SARSの治療は漢方薬が用いられた。

目的: 

SARS患者を対象に、西洋薬と漢方薬を併用した場合に考え得る有効性および安全性を西洋薬単独の場合と比較評価すること。

検索戦略: 

CENTRAL 2012年第3号、MEDLINE(1966年〜2012年2月第4週)、EMBASE(1990年〜2012年3月)およびChinese Biomedical Literature(2012年第3号)を検索した。

選択基準: 

SARSの診断を受けた患者を対象に、西洋薬と漢方薬を併用した場合と西洋薬単独の場合を比較したランダム化比較試験(RCT)および準RCT。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者(XL、MZ)が独立して試験データを抽出した。2値変数データおよび連続変数データを95%信頼区間(CI)とともに抽出した。2値変数データについては、リスク比(RR)を用いた。連続変数データについては、平均差(MD)を算出した。研究間に異質性が存在する場合は、ランダム効果モデルをもとに総合的な結果を算出した。研究間で異質性が検出されなかった場合は、固定効果モデルを使用した。異質性の検定には、Z値およびカイ二乗検定を用い、有意性をP < 0.05に設定した。高度な有害事象は報告されなかった。

主な結果: 

RCT12件および準RCT1件を対象とした。 SARS患者計640例および漢方薬12種類を同定した。西洋薬と漢方薬を併用した場合、西洋薬単独の場合と比較して死亡率の低下は認められなかった。2種類の漢方薬は症状を改善する可能性がある。5種類の漢方薬は肺浸潤物の吸収を促進する可能性がある。4種類の漢方薬は副腎皮質ステロイドの投与量を減量させる可能性がある。3種類の漢方薬はSARS患者の生活の質を向上させる可能性がある。1種類の漢方薬は入院期間を短縮させる可能性がある。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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