成人の慢性歯周病(歯周炎)に対する、すべての歯(全顎)の24時間以内の治療

レビューの論点

長く持続する(慢性)歯周病は、歯肉や歯の周りの軟組織構造にダメージを与える。本レビューでは、24時間以内に行われる全顎治療の有効性を、通常、数週間かけて行われる部分的な口のスケーリング(歯の表面の歯石などの汚れを除去すること)とルートプレーニング(歯の根本の表面の汚れを除去こと)(SRP)という従来の治療と比較を行った。レビューの対象となる治療法は、全顎スケーリング(FMS)と全顎除菌(FMD)である。副次的な目的は、全顎スケーリングと全顎除菌の間に有効性の差があるかどうかを検証することであった。このレビューは、2008年に公開された過去のレビューを更新したものである。

背景

歯周病(歯周炎)は、歯の周りの軟組織や骨にダメージを与える慢性の炎症性疾患である。軽度の歯周炎は成人によく見られ、重度の歯周炎は人口の20%にも及ぶと言われている。慢性的な歯周病がある成人の歯を支える骨や組織の減少を食い止めるために、感染した歯の根本の表面から細菌を機械的に除去する非外科的治療が行われる。これらの治療は、従来の方法である数週間かけて口の中の異なる部位に別々の治療日に行う方法(SRP)と、24時間以内に1~2回の治療を行う「全顎スケーリング」(FMS)がある。全顎スケーリングに消毒薬(例:クロルヘキシジンなど)を加えた場合、この介入は「全顎除菌」(FMD)と言う。全顎アプローチの理論的根拠は、すでに治療を受けた箇所での再感染の可能性を減らすことができるかもしれないということである。

研究の特性

本レビューは、コクランオーラルヘルスグループで行われたもので、2008年に発表されたレビューの更新であり、2015年3月までの最新のエビデンスである。今回は新たに5件の関連する研究を特定したため、本レビューには、389人が参加する12件の研究が含まれた。また、分類待ち(本レビューにいれるかどうかの判断待ちの研究)として中国で実施された研究が1件ある。対象となった研究の参加者の年齢は27歳から78歳で、男女の人数はほぼ同じであった。

対象とした研究は、24時間以内の全顎スケーリングとルートプレーニングを評価し、少なくとも3か月の追跡期間があるランダム化比較試験とした。全顎スケーリング(FMS)と全顎除菌(FMD)の両方を、対照群とした従来の1/4単位(口の中を上下左右で4分割すること)でのスケーリングとルートプレーニングと比較した。参加者は、国際歯周疾患分類に基づいて慢性歯周炎の臨床的診断を受けている人とした。活動性の歯周炎や全身疾患のある人、抗菌薬を服用している人を対象とした研究は除外した。

主な結果

従来のスケーリングとルートプレーニング(SRP)と比較した全顎スケーリング(FMS)および全顎除菌(FMD)の治療効果はわずかであり、歯周治療への明確な影響はなかった。8件の研究において、有害事象が報告された。最も重要な害として確認されたのは、全顎スケーリング(FMS)または全顎除菌(FMD)治療後の体温上昇であった。実際の臨床においては、非外科的な歯周治療として1つの方法をもう1つの方法と比較して選択する時は、患者の好みや治療スケジュールの利便性などが考慮される可能性がある。

エビデンスの質

全ての治療の比較と治療結果において、エビデンスの質は低度であった。これは、対象となる研究と参加者の数が少ないことや、研究方法に限界があるためである。今後の研究により、調査結果が変わる可能性がある。

訳注: 

《実施組織》 屋島佳典 翻訳、堺琴美 監訳[2021.12.7] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004622.pub3》

Tools
Information