新生児細菌性髄膜炎に対する抗菌薬脳室内投与

脳周囲の膜と体液の感染(髄膜炎)および脳の中の体液に満たされた腔の感染(脳室炎)は、細菌、特にグラム陰性菌により起こることがある。この種の感染では、血流内に投与した安全な用量の抗菌薬の使用では除菌が困難である。理論上では、抗菌薬の脳室内投与(脳の中心の体液が満たされた腔への抗菌薬投与)により静脈内投与単独に比べて脳の体液中で高い抗菌薬濃度が得られ、より速く細菌を除去できる。しかし、針が脳組織を貫通するため、脳室穿刺により害が生じる可能性がある。同定した試験は1件のみであった。グラム陰性髄膜炎・脳室炎の乳児を組み入れたこの試験では、抗菌薬静脈内投与に加えた抗菌薬脳室内投与により、抗菌薬静脈内投与単独による標準治療に比べて死亡リスクが3倍上昇した。この結果に基づき、本試験で検証された抗菌薬脳室内投与は避けるべきである。これらの介入を比較するさらなる試験は、新生児では正当化されない。

著者の結論: 

グラム陰性髄膜炎・脳室炎の乳児を組み入れた1件の試験では、抗菌薬静脈内投与に加えた抗菌薬脳室内投与により、抗菌薬静脈内投与単独による標準治療に比べて死亡率のRRが3倍上昇した。この結果に基づき、本試験で検証された抗菌薬脳室内投与は避けるべきである。これらの介入を比較するさらなる試験は、この対象集団では正当化されない。

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背景: 

新生児髄膜炎は細菌、特にグラム陰性菌により起こることがあり、抗菌薬の安全用量の使用では脳脊髄液(CSF)からの除菌は困難である。理論上では、抗菌薬の脳室内投与により静脈内投与単独に比べてCSF中で高い抗菌薬濃度が得られ、より速く細菌を除去できる。しかし、脳室穿刺により害が生じる可能性がある。

目的: 

髄膜炎(脳室炎の有無を問わず)の新生児を対象に、抗菌薬脳室内投与(抗菌薬静脈内投与併用または無併用)の有効性および安全性を抗菌薬静脈内投与単独と比較評価すること。

検索戦略: 

2007年6月、コクラン・ライブラリ2007年第2号、MEDLINE、EMBASE、CINAHL, Science Citation Indexを検索した。2004年6月にThe Oxford Database of Perinatal Trialsを検索した。Pediatric Research(抄録)(1990~2007年4月)、同定した試験の文献リスト、個人ファイルを検索した。言語の制限を設けなかった。 2011年5月にこの検索を更新した。

選択基準: 

選択基準:髄膜炎の新生児(28日齢未満)を対象に、抗菌薬静脈内投与併用または無併用の抗菌薬脳室内投与を、抗菌薬静脈内投与単独と比較しているランダム化、準ランダム化比較試験(RCT)。以下のアウトカムのうち1つを報告していること:初回入院中の死亡率;新生児死亡率、乳児の死亡率、またはその両方;神経発達アウトカム;入院期間;CSF培養の細菌陽性期間;副作用。

データ収集と分析: 

全レビューアが報告されたアウトカムについて情報を抽出し、1名のレビューアが不一致をチェックし、RevMan 5.1にデータを入力した。固定効果モデルを用いて、リスク比(RR)、リスク差(RD)、さらなる利益アウトカムを得るための治療必要数(NNTB)、さらなる有害アウトカムに至る治療必要数(NNTH)、平均差(MD)を95%信頼区間(CI)とともに報告した。

主な結果: 

2011年6月の更新検索で新しい試験を同定しなかった。本レビューに1件の研究を選択した。本研究は、グラム陰性菌の髄膜炎・脳室炎の新生児(69%)と乳児(31%)の混合した集団を対象に、ゲンタマイシン脳室内投与の効果を評価していた。抗菌薬静脈内投与に加えてゲンタマイシン脳室内投与を受けた群の方が抗菌薬静脈内投与単独群に比べて統計学的に有意に死亡率が高かった(RR 3.43、95%CI 1.09~10.74;RD 0.30、95% CI 0.08~0.53;NNTH 3、95%CI 2~13)。CSF培養の細菌陽性期間に有意差はなかった(MD -1.20日、95% CI -2.67~0.27)。

訳注: 

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