早産児および低出生体重児の出生時の低体温症を予防するための介入

レビューの論点:早産児・低体重児の低体温症を予防するために、分娩室で出生後10分以内に行う介入を、通常の保温ケアやその他の単一・複数の介入と比較した場合の有効性と安全性について、どのようなことがわかっているか?

背景:早産児や低出生体重児の出生時の低体温を予防することは、生存率や長期的な転帰に重要であると考えられる。赤ちゃんは、特に生後12時間は体温維持に外部の影響を受けやすい。早産や低体重で生まれた体の弱い赤ちゃんにとって、体温が異常に低い状態(低体温症)は、気候を問わず世界的な問題であり、死亡を含むさまざまな合併症との関連が指摘されている。熱損失を減らしたり、外部の熱源から暖かさを提供したりすることで、予防措置をとる。予防措置としては、暖かい分娩室を確保すること、出産直後に特に頭部を乾燥させること、あらかじめ温めた乾燥した毛布で包むこと(頭部も含む)、児に接触する面をあらかじめ温めること、風通しを良くすることなどが日常的に行われている。

検索日:Cochrane Neonatal Review Groupの標準的な検索戦略を用いて,CENTRAL(2016, Issue 5),MEDLINE(1966年~2016年6月30日),Embase(1980年~2016年6月30日),Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL;1982年~2016年6月30日)を検索した。また、臨床試験データベース、学会抄録集、検索論文の参考文献リストも同様に検索し、ランダム化比較試験および準ランダム化比較試験を探した。

主要な結果:このレビューでは、2433人の赤ちゃんを対象とした25件の研究が確認された。研究者たちは、低体温症の問題を防ぐために、生後10分以内に追加の予防措置を講じた。プラスチック製のカバー、加熱されたマットレス、肌と肌の触れ合いなどを利用することで、日常的な予防措置よりも乳児をより暖かく(そして正常な体温範囲内に)保つことができた。しかし、特にこれらの方法を組み合わせた場合には、意図せずに赤ちゃんを温めすぎてしまい、有害な影響を与えることがないように注意しなければならない。限界は、いくつかの比較グループに含まれる赤ちゃんや研究の数が少ないこと、正常な体温や日常的なケアに使用される方法や定義が異なること、使用される材料が異なることである。

今回のレビューでは、これらの対策の一部が低体温症の予防に有効であることが確認されたが、すべての研究の結果、死亡者数の減少は見られず、寒すぎることに関連する短期的な合併症や病気の改善も限られている。この結果は、低体温症が転帰の直接の原因ではなく、特に最も未熟で小さい赤ちゃんの転帰を悪くするマーカーであることを示唆している。レビュー執筆者は、今後の研究では、より稀な疾患の変化を検出できるように十分な規模の研究を行うこと、研究間で組み合わせることができるようにこれらの疾患を同じ方法で定義すること、そしてより長期的な影響に焦点を当てることを推奨している。

エビデンスの質:主な比較群(ラップやバッグと日常のケア)については、試験結果と結論の信頼性に中程度の確信を持っている。残りの比較群では、主に研究数とサンプルサイズが小さいため、確固たる判断を下すにはエビデンスが不十分である。

早産児や低出生体重児の保温のためのプラスチック製のラップやバッグと日常的なケアとの比較では、主要なアウトカムについてエビデンスの質は中程度と評価された。赤ちゃんの体温調節について報告しているアウトカムの中には、介入によってこれらの赤ちゃんが温かくならなかったことを示す小規模な試験が発表されていなかったり、研究結果が一致していなかったり、少数の研究や事象に基づいてエビデンスが作成されていたりするのではないかと考えられる。主な合併症である脳梗塞や肺への出血(肺出血)については、発生数が少なすぎるか、1つの研究にしか基づいていなかった。死亡例を報告した小規模試験の中には発表されていないものもあると思われるが、これがレビューの結果に影響を与えることはないと思われる。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、阪野正大 翻訳[2021.10.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004210.pub5》

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