早産児のための栄養価の高い粉ミルク(栄養強化ミルク)

レビューの論点

早産児に栄養価の高い粉ミルク(追加のエネルギーとタンパク質を強化した栄養強化ミルク)を与えると、標準的な粉ミルクを与えるのに比べて成長率が上がり、発育が良くなるのか?

背景

標準的な粉ミルク(正期産新生児向けに作成されたもの)では、早産児に最適な成長と発達をサポートするのに十分な量の栄養素が含まれない場合がある。栄養強化ミルク(炭水化物や脂肪、その他の栄養素から追加されたタンパク質とエネルギーを含む)は、標準的な粉ミルクよりも栄養素を約20%多く含んでいる。早産児、特に超早産児に栄養価の高い粉ミルクを与えると、栄養摂取量や成長率が向上し、発育が改善される可能性がある。

研究の特性

我々は7つの試験を発見したが、そのほとんどは小規模(合計590人の乳児が関与)でありいくつかの試験はバイアスが生じやすいものであった。

主な結果

早産児のための栄養価の高い粉ミルクと標準的な粉ミルクを比較しても、出生体重の回復にかかる時間は短縮されないが、出生後の新生児病棟(訳注:NICU,GCUを含める)入院中の体重増加率と頭部の成長率(身長の伸びはない)の増加率が高いことと関連している。乳児期を超えて評価される成長と発達の成果については、限られたデータしか入手できず、一貫した効果を示すものではない。摂食や腸の問題への影響を含む、栄養強化ミルクのその他の潜在的な利点や有害性を示唆するエビデンスは見つかっていない。

結論

試験のデータによると、多種類の栄養強化により、入院中に早産児の成長率が向上することが示されているが、長期的な成長や発育への影響を示すには十分なエビデンスが得られていない。この結果の不確実性を解消するためには、さらなるランダム化試験が必要であろう。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、季律 翻訳[2020.11.21]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004204.pub3》

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