潰瘍性大腸炎における寛解維持に対する5-アミノサリチル酸直腸内投与(坐剤、泡沫剤、液体注腸)

5-アミノサリチル酸(5-ASA)は、軽度~中等度の活動性潰瘍性大腸炎(UC)の治療および寛解維持のためよく使用されます。UCの病変が結腸の下3分の1のみである場合、肛門坐剤、泡沫剤、液体注腸で5-ASAを投与できます。総計484例の参加者の9件のランダム化試験をこのレビューに選択しました。得られた限定的なデータでは、UCの寛解維持に対し、直腸内投与の5-ASAは有効かつ安全であると示唆されました。直腸内投与の5-ASAは、プラセボ(実際の薬が入っていない注腸や坐剤)より優れているという所見が得られました。直腸内投与の5-ASAとプラセボ群に副作用罹患率について差はありませんでした。副作用は概ね軽度で、よくみられた副作用は肛門の刺激と腹痛でした。5-ASAの直腸内投与と経口投与(錠剤)の比較研究では、維持療法での有効性に差は認めませんでした。維持療法での直腸内投与の5-ASAについて様々な投与量を検討するため、適切なデザインのランダム化試験が必要です。5-ASAの経口投与と直腸内投与の併用は活動性UCに有効ですが維持療法について研究されていないため、今後の研究では併用療法の有効性を評価すべきです。また、今後の研究では直腸内投与の5-ASAを直腸内投与副腎皮質ステロイドと比較すべきです。

著者の結論: 

得られた限定的なデータでは、軽度~中等度の活動性遠位UCの寛解維持に対し、直腸内投与の5-ASAは有効かつ安全であると示唆された。直腸内投与5-ASAの至適投与レジメンを確立し、直腸内投与5-ASAを直腸内投与副腎皮質ステロイドと比較し、特定の直腸内投与5-ASAレジメンへの反応が良好または不良な患者サブグループを同定するため、適切なデザインのランダム化試験が必要である。寛解導入に対し、経口投与と直腸内投与の5-ASA併用の方が、それぞれの単独療法より有効であると考えられる。寛解維持に対する併用療法の有効性は評価されていないが、今後の試験で検討されると思われる。

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背景: 

5-アミノサリチル酸(5-ASA)は、軽度~中等度の活動性潰瘍性大腸炎(UC)の寛解導入および維持における第一選択療法である。炎症の近位端が脾弯曲部より遠位にある場合、肛門坐剤、泡沫剤または液体注腸剤として5-ASAを投与することができる。

目的: 

主要目的は、遠位UCの寛解維持に対する直腸内投与の5-ASAの有効性および安全性を評価することである。

検索戦略: 

MEDLINE(1966~2012年8月)、コクラン・ライブラリ(2012年8月)、主要な消化器学会の抄録(1997~2011年)、関連性のある発表物の参考文献を検索して関連性のある研究を同定した。

選択基準: 

最短6ヵ月の期間の直腸内5-ASAをプラセボまたは別の実薬治療と比較しているランダム化比較試験(RCT)を適格な研究とした。症状スコアは1件以上の研究アウトカムで評価されている必要があった。患者は12歳以上で、バリウム注腸造影、大腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査で確認された病変の範囲が、肛門縁から60 cm未満の範囲または脾弯曲部から遠位であることとした。投与試験前に寛解状態にある患者とした。

データ収集と分析: 

3名のレビューアが別々に研究の適格性を評価した。2名のレビューアが別々に標準化したフォームを用いてデータを抽出し、Cohen's Kappaを用いて評価者間の一致を評価し、不一致は合意により解決した。研究結果または方法の明確化が必要な場合は、関連著者に連絡を取った。各試験の方法論的質は、コクランのバイアスリスクツールおよびレビューアが以前に開発して用いた30ポイントのスケールで評価した。臨床的、内視鏡的、組織学的寛解維持についてプールしたリスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)を、直腸内投与5-ASAとプラセボまたは経口投与5-ASAとの比較、ならびに5-ASA用量の比較に対して推定した。カイ2乗検定および森林プロットの視覚的検査を用いて異質性を評価した。有意な異質性を同定しなかった場合(カイ2乗でP > 0.10)、固定効果モデル(Mantel-Haenstzel)を用いた。異質性が有意の場合、ランダム効果モデルを用いた。

主な結果: 

9件の研究(患者484名)が事前に規定した選択基準を満たした(Kappa 1.00)。6件の研究のバイアスは低リスクと評価された。盲検性(2件はオープンラベル、1件は単盲検)が原因で3件の研究のバイアスは高リスクと評価された。直腸内投与5-ASAの1日総投与量は0.5~4 gで、投与回数は1日1~3回であった。5-ASAは5件の研究で液体注腸剤、4件の研究で坐剤として投与されていた。追跡期間は6~24ヵ月であった。直腸内投与の5-ASAは12ヵ月の期間の症状寛解維持についてプラセボに対して有意な優越性を示した。症状寛解維持は5-ASA群62%に対しプラセボ群30%であった(4件の研究、患者301名、RR 2.22、95%CI 1.26~3.90、I<sup>2</sup> = 67%、P < 0.01)。GRADE解析では、不正確性(144イベントの貧弱なデータ)および不一致性(説明できない異質性)のため、主要アウトカムについてのエビデンスの全体的質は低いと示された。直腸内投与の5-ASAは12ヵ月の期間の内視鏡的寛解維持についてプラセボに対して有意な優越性を示した。内視鏡的寛解維持は、5-ASA群75%、プラセボ群15%であった(1件の研究、患者25名、RR 4.88、95%CI 1.31~18.18、P < 0.05)。1件以上の有害事象が発現した患者の割合に統計学的有意差はなかった。1件以上有害事象が発現した患者は、直腸内投与5-ASA群16%、プラセボ群12%であった(2件の研究、患者160名、RR 1.35、95%CI 0.63~2.89、I<sup>2</sup> = 0%、P = 0.44)。最も多く報告された有害事象は肛門の刺激および腹痛であった。6ヵ月の期間で症状または内視鏡的寛解のいずれについても、直腸内投与と経口投与とに統計学的有意差はなかった。症状寛解維持は、直腸内投与群で80%、経口投与群で65%であった(2件の研究、患者69名、RR 1.24、95%CI 0.92~1.66、I<sup>2</sup> = 0%、P = 0.15)。GRADE解析では、不正確性(50イベントの貧弱なデータ)およびバイアス高リスク(プールした解析での両研究はオープンラベル)のため、主要アウトカムについてのエビデンスの全体的質は低いと示された。内視鏡的寛解維持は直腸内投与群で80%、経口投与群で70%であった(2件の研究、患者91名、RR 1.14、95%CI 0.90~1.45、I<sup>2</sup> = 0%、P = 0.26)。2件の小規模試験において、1件は2 g/日と4 g/日の5-ASA注腸を比較し、他方は0.5 g/日と1 g/日の5-ASA坐剤を比較していた。用量による反応性の差は認められなかった。

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