小児急性喘息に対する抗コリン作動薬療法

喘息とは気道(空気が出入りする肺への管)の病気の一つである。喘息が悪化する際(発作時)、気道が狭くなるため薬を使って気道を拡張させる、つまり広げることができる。よく使われる気管支拡張薬(気道を広げるため用いる薬)は、短時間作用性β2作用薬(サルブタモールなど)または抗コリン作動薬(臭化イプラトロピウムなど)である。本レビューでは、2歳超の小児を対象に喘息発作の際の吸入抗コリン作動薬の使用がプラセボまたは別の気管支拡張薬に比べて効果があるか検討した。また、抗コリン作動薬とβ2作用薬の併用を抗コリン作動薬単独投与と比較した。 これら2つの疑問に回答している6件の小規模試験を認めたがその質は不明であった。小児171名を対象に抗コリン作動薬とβ2作用薬を比較している4件の試験からデータを得た。Β2作用薬の投与を受けた小児に比べて抗コリン作動薬単剤の投与を受けた小児の方が治療の失敗に至る可能性が有意に高かった[オッズ比(OR)2.27、95%CI 1.08~4.75]。抗コリン作動薬単剤の小児を、抗コリン作動薬とβ2作用薬の併用の小児と比べている、173名の小児を対象とした4件の試験からデータを得た。この場合、抗コリン作動薬単剤の小児の方が、抗コリン作動薬とΒ2作用薬の併用の小児に比べて治療の失敗の可能性が高かった(OR 2.65、95%CI 1.2~5.88)。治療の失敗と入院のアウトカムについてのみデータをプールできた。 まとめると、吸入抗コリン作動薬単独投与は、吸入β2作用薬単独投与または吸入β2作用薬と抗コリン作動薬の併用投与に比べて、有効性は低いという所見を得た。吸入抗コリン作動薬は、重大な副作用を認めないようであり、安全であると思われた。

著者の結論: 

喘息の急性増悪を有する2歳超の小児において、単剤気管支拡張薬としての吸入抗コリン作動薬はβ2作用薬に比べて有効ではなかった。吸入抗コリン作動薬は、吸入抗コリン作動薬とβ2作用薬の併用に比べて有効ではなかった。抗コリン作動薬単独投与は、喘息の急性増悪を有する小児での単剤療法として適当ではない。

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背景: 

単剤気管支拡張薬(またはβ2作用薬との併用)としての吸入抗コリン作動薬は、小児急性喘息の治療に用いられる数種の薬剤のうちの一つである。

目的: 

急性喘息の2歳超の小児を対象に、コントロールと比較して吸入抗コリン作動薬単独療法の有効性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Airways Groupにより、Cochrane Register of Controlled Trials(CENTRAL)およびCochrane Airways Group Register of trialsを検索した。最新の検索は2011年4月に実施した。

選択基準: 

急性喘息の2歳超の小児を対象に、単剤療法として投与された吸入抗コリン作動薬をプラセボ、他の薬剤、他の併用薬物療法と比較しているランダム化比較試験(RCT)のみを選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に試験を選択し、データを抽出して試験の質を評価した。

主な結果: 

6件の研究が選択基準を満たしたが、サンプル・サイズが小さく、使用された治療レジメンと評価したアウトカムが多様なため限定的であった。研究は全体として質が不明であった。治療の失敗と入院のアウトカムについてのみデータをプールした。アウトカムの測定が多様なため、他のデータを統合することはできなかった。メタアナリシスによると、小児171名を対象にした4件の試験から、β2作用薬の投与を受けた小児に比べて抗コリン作動薬単剤の投与を受けた小児の方が治療の失敗に至る可能性が有意に高かった[オッズ比(OR)2.27、95%CI 1.08~4.75]。また、173名の小児を対象とした4件の試験から、抗コリン作動薬単剤の方が、抗コリン作動薬とβ2作用薬の併用に比べて治療の失敗の可能性が高かった(OR 2.65、95%CI 1.2~5.88)。異なるスケールで測定された臨床スコア/症状に関するデータは矛盾した結果を示した。個々の試験では、抗コリン作動薬単剤よりも併用群の方において肺機能が優れていたと報告された。抗コリン作動薬の使用と重大な副作用との関連は認められなかった。

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