足の静脈の血行が悪い人のための、血流を改善する薬物

背景

慢性静脈不全では、下肢の静脈が心臓に向かって血液を運ぶことができない。遺伝的要因によるもの、外傷後に発生するもの、血栓によるものなどがある。下肢の血液の流れが悪くなると、むくみや腫れ、重苦しさ、うずき、痙攣、痛み、静脈瘤、皮膚の色素沈着などの症状が起こる可能性がある。重度の血行不良になると、潰瘍や皮膚の萎縮が生じる。植物から抽出された天然のフラボノイドや類似の合成品などの薬物は、血液循環を改善する可能性がある。これらの薬物は、総称して血管活性剤またはプレボトニックと呼ばれている。本レビューでは、これらの薬物と不活性治療(プラセボ)を比較したランダム化臨床試験の科学的根拠(エビデンス)を検討した(通常、1~3カ月間投与)。

研究の特性および主な結果

今回のアップデートでは、新たに3件の研究を同定した。合計69件の研究が、本のレビューの適格性基準を満たした。しかし、追加解析で使用できたのは56件の研究(7690例、平均年齢50歳)のみであった。

その結果を比較し、これらの研究で得られたエビデンスを要約した。その後、エビデンスの確実性を評価した。そのために、研究の実施方法、研究の規模、研究結果の一貫性などの要素を考慮した。評価に基づき、エビデンスの確実性を非常に低い、低い、中等度、高いのいずれかに分類した。

13件の研究(1245例)から得られた確実性が中程度のエビデンスからは、プレボトニックはプラセボと比較して膨らみ(浮腫)をわずかに減少させる可能性があると示唆された。確実性が中等度のエビデンスからは、プレボトニックを服用している人は、プラセボと比較して生活の質(Quality of life:QOL)にほとんど、あるいは全く差がないことが示唆された。確実性の低いエビデンスからは、プレボトニックによって治癒した潰瘍の割合は、プラセボと比較してほとんど、あるいは全く差がないことが示唆された。37件の研究(5789例)から得られた確実性が中等度のエビデンスからは、プレボトニックはおそらくより多くの副作用(特に胃腸障害)をもたらすと考えられた。

エビデンスの確実性

すべてのエビデンスの確実性が、中等度または低いものであった。当初、確実性は高いと想定していたが、主に選択的なアウトカム報告や不完全なアウトカムデータによるバイアスのリスクが高いため、各アウトカムのエビデンスの確実性を1段階引き下げた。潰瘍治癒のアウトカムについては、統計的不正確さ(イベント数が少ない)のため、さらに1段階下げた。確実性が中等度のエビデンスであるため、これらのアウトカムの効果推定値に対する信頼性は中等度である。真の効果は、効果の推定値に近いものである可能性が高いが、大幅に異なるものである可能性もある。確実性の低いエビデンスでは、そのアウトカムに対する効果推定値の信頼性は限定的である。真の効果は、効果の推定値とは大幅に異なる可能性がある。

本レビューの更新状況

本コクランレビューのエビデンスは、2019年11月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2021.11.13] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003229.pub4》

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