静脈性下腿潰瘍治療のための電磁療法(EMT)

静脈性下腿潰瘍(開いた傷口に出現する)は、下肢の静脈の閉塞または破綻によって生じ得る。このような潰瘍の多くは、包帯や靴下(ストッキング)を用い下肢を圧迫することによって、治癒を促すことができる。電磁療法も、実施されることがある。電磁療法は、放射線または温熱による方法ではなく、電磁場を用いて治癒の促進を試みる。臨床試験を評価した本レビューは、電磁療法が静脈性下腿潰瘍の治癒を早めるか否かについて、質の高いエビデンスは存在せず、その効果は不明であると結論付けた。

著者の結論: 

電磁療法が静脈性下腿潰瘍の治癒率に影響を及ぼすか否かは明らかではない。この課題を解明するため、さらに研究が必要である。

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背景: 

下腿潰瘍は、よくみられる再発性の慢性疾患である。英国では、下腿潰瘍の有病率は、1000名当たり概算1.5~3名とされている。静脈性潰瘍(うっ血または静脈瘤性潰瘍ともいう)の80~85%が、下腿潰瘍である。電磁療法(EMT)は、静脈性下腿潰瘍などの慢性創傷の治癒を促すため、治療として用いられることがある。

目的: 

静脈性下腿潰瘍の治癒に及ぼすEMTの効果を評価する

検索戦略: 

4回目の更新となる今回のアップデートでは、Cochrane Wounds Group Specialised Register(検索日:2015年1月30日)およびCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクランライブラリー2014年第12号)を検索した。

選択基準: 

EMTを疑似EMTまたは他の治療と比較したランダム化比較試験

データ収集と分析: 

コクラン共同計画の標準的な方法を用いた。2名以上のレビュー著者がそれぞれ検索結果を精査し、詳細な評価を実施するあたり適格であると考えられる研究の詳報を入手した。データ抽出シートを用いて、適格な研究の詳細を抽出し、要約した。欠測データは、研究著者に連絡を取り入手を試みた。2人目のレビュー執筆者がデータ抽出をチェックし、不一致があった場合はレビュー執筆者で協議の上解決した。

主な結果: 

初回レビューには、バイアスのリスクが不明な、またはバイアスのリスクが低い、94例を対象としたランダム化比較試験(RCT)3試験を組み入れたが、その後の更新では新たな試験は同定されていない。試験はすべて、EMTを疑似EMTと比較していた。上記試験のメタアナリシスは、異質性のため実施することができなかった。治癒率を報告していた2試験のうち、小規模の1試験(参加者44例)では、疑似EMT群と比較してEMT群で潰瘍治癒率が大幅に高かったが、追跡不能となった参加者の転帰に関して異なる仮説により解析した場合、この結果は頑健性の点で十分とは言えなかった。治癒した潰瘍の数を報告していた2件目の試験では、治癒数に有意な差は認めらなかった。3件目の試験も小規模試験(参加者31例)であったが、EMT群において潰瘍の大きさに大幅な縮小が認められたと報告されていた。しかし、この結果には治療群の予後プロファイルの差が影響している可能性がある。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD002933 Pub6

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