水疱性類天疱瘡に対する治療法

水疱性類天疱瘡(水疱とかゆみを伴うまれな皮膚疾患)に対する最も有効な治療法は何か?

要点

・外用ステロイド薬であるプロピオン酸クロベタゾール含有クリームの全身の皮膚への塗布は、経口ステロイド(プレドニゾン)と同等の効果があり、重篤な有害事象も少なく、死亡例も減少させる可能性がある。

・抗炎症作用のある抗菌薬であるドキシサイクリン(200mg/日)による治療は、経口ステロイド薬であるプレドニゾロン(0.5mg/kg/日)による治療と比較して、許容可能かつ短期的な水疱のコントロールが得られ、死亡事象を含む長期的な安全性においても優れている。

水疱性類天疱瘡とは何か?

水疱性類天疱瘡は、自己免疫性水疱症と言われる病気の中では最も一般的なものである。自己免疫疾患では、体の免疫系が自分自身の組織を異物と誤認して攻撃する。水疱性類天疱瘡では、これにより皮膚に水疱が生じる。通常、水疱性類天疱瘡は高齢者に発症するが、若年者にも発症する場合がある。

水疱性類天疱瘡はどのように治療されているのか?

水疱性類天疱瘡の主な治療法は、炎症と体の免疫系を抑制するためのステロイドの内服である。しかし、経口ステロイドを長期間服用すると、重篤な有害作用を引き起こす。しかし、経口ステロイドを長期間服用すると、重篤な有害作用を引き起こす。

本レビューでは、水疱性類天疱瘡に対する他の治療法、例えば皮膚に塗布するステロイドクリームや、抗炎症作用を持つ抗菌薬であるドキシサイクリンの有効性を検討した研究について評価を行った。

何を調べようとしたのか?

水疱性類天疱瘡に対して、有効作用としての水疱の治癒と、死亡などの有害作用の軽減に関して、どの治療法が最も有効であるかを明らかにしたかった。

何を行ったのか?

水疱性類天疱瘡の治療法に関する研究について検索を行った。 その結果を比較、要約し、研究方法や規模などの要因に基づいてエビデンスに対する信頼性を評価した。

何を見つけたのか?

合計1,442人の水疱性類天疱瘡患者を含む14件の研究が見つかった。主な治療方法は、経口ステロイド薬、外用ステロイド薬、および経口抗炎症性抗菌薬のドキシサイクリンであった。その他の治療法としては、経口免疫抑制薬(免疫系を抑制する薬)と免疫グロブリン(抗体とも呼ばれる。抗体とは、細菌等と戦うために免疫系がつくり出すタンパク質のことである。)があった。

- 外用ステロイドクリームであるプロピオン酸クロベタゾールの全身塗布(1日40グラムのクリームを塗布し、12か月かけて量を減らしていく)は、水疱性類天疱瘡に対し、有効かつ安全な治療法であった。

- より少量のプロピオン酸クロベタゾールクリーム(1日10gから30gを塗布、4か月かけて減量する)による治療も同様に有効かつ安全であった。

- 経口コルチコステロイドであるプレドニゾロンは、0.5mg/kg/日の用量で、ほとんどの症例を十分にコントロールでき、高用量の経口コルチコステロイドと比較して有害作用が軽減された。

- 200mg/日のドキシサイクリンによる治療は、経口プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)による治療と比較して許容可能な水疱のコントロールが得られ、より安全であった。

- 20人の参加者を対象とした研究において、ニコチンアミド(ビタミンB 3 の一種)とテトラサイクリン(さまざまな感染症の治療に使用される抗菌薬)はプレドニゾンの代替薬として有効であり、治療に関連した死亡(治療関連死)を減少させる可能性が示唆された。

- 経口コルチコステロイドに免疫抑制薬であるアザチオプリンを追加しても、疾患のコントロールは改善されなかったが、経口コルチコステロイドの必要性が低下する可能性がある。

- 経口ステロイドの代替薬(ダプソンや免疫グロブリンなど)の有効性や、経口ステロイドとの併用薬の有効性を十分に評価するためには、さらなる研究が必要である。

エビデンスの限界は何か?

クロベタゾールクリームとドキシサイクリンに関する研究を除き、これらの研究の参加者は比較的少数であった。方法論的な質はさらに限定されており、これは、異なる治療群への割り付け方法が不明確であったこと、実施条件の盲検化が行われていなかったこと(どの治療がどの参加者に行われたかについて参加者や研究者が知っていることは公正な評価の妨げとなる)、および研究を離脱した参加者が分析から除外されていたことによる。

水疱性類天疱瘡の治療において、ドキシサイクリンによる治療の開始への信頼性は高く、またクロベタゾールクリームの有効性には中程度の信頼性が認められた。

本エビデンスはいつのものか?

2021年11月11日時点におけるエビデンスである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠、小林絵里子 翻訳[2023.11.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002292.pub4》

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