糖尿病性腎疾患に対する蛋白摂取制限

少なくとも平均で4カ月間1型または2型糖尿病に罹患した患者8~160名を対象とした12件の研究から、蛋白摂取制限により糖尿病性腎疾患の進行を遅らせるが、平均では大差がないと考えられる。ただし、個人間のばらつきがあるため、低蛋白食事療法が有用となる人もいる。低蛋白食事療法は、特に長期的には遵守することが難しい。動物性蛋白の減量が通常の方法であるが、赤身肉から白身肉や魚、野菜に切り替えることで同様の結果が得られるというエビデンスも得られている。健康に関連した生活の質と費用への低蛋白食事療法の影響に関するデータは得られなかった。

著者の結論: 

結果から、蛋白摂取の減少により腎不全の進行速度が若干遅くなると考えられるが、統計学的には有意でなかった。しかし、蛋白摂取量およびコンプライアンスに関する疑問が残る。大規模な代表的な1型または2型糖尿病患者群を対象とした長期間のさらなる研究が必要である。患者間のばらつきがあることから、全患者を対象とし、そのうち最も良好に反応した患者のみを継続した、蛋白摂取制限の6カ月間の治療的試験がおそらくあったと思われる。さまざまな種類の蛋白についての試験が必要である。

アブストラクト全文を読む
背景: 

糖尿病性腎疾患(糖尿病性腎症)は、末期腎不全の主な原因である。この過程がいったん始まると、血糖コントロールでは回復できないが、血圧コントロールと蛋白摂取制限によって進行が遅くなるようである。

目的: 

糖尿病患者の糖尿病性腎症の進行に対する食品蛋白摂取制限の効果を評価する。

検索戦略: 

コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、ISI Proceedings、Science Citation Index Expandedおよび選択した研究の参考文献を検索した。

選択基準: 

最低4カ月間の食事療法を行った後の1型または2型糖尿病患者を対象に、蛋白調整食または蛋白制限食の糖尿病性腎機能に対する効果のランダム化比較試験(RCT)および前後比較研究を検討した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアがそれぞれデータを抽出し、質を評価した。ランダム効果モデルを用いて結果を統合した。

主な結果: 

12件の研究が含まれ、そのうち9件がRCT、3件は前後比較研究であった。1件の研究のみでエンドポイントとして全死亡率と末期腎疾患(ESRD)が検討されていた。低蛋白食(LPD)に割り付けられた患者のESRDまたは死亡の相対リスク(RR)は0.23であった(95%信頼区間(CI)0.07~0.72)。1型糖尿病患者を対象とした7件のRCTを統合した結果、LPD群での糸球体濾過量(GFR)の低下は0.1 ml/分/月であり、有意な減少ではなかった(95%CI-0.1~0.3)。2型糖尿病について、1件の試験の蛋白制限群でGFR低下率に有意ではないわずかな改善が認められており、2件目の試験では介入群および対照群とも同様の低下が認められた。介入群の実際の蛋白摂取量は0.7~1.1g/kg/日であった。1件の研究でLPD群に栄養失調症を認めた。健康関連QOL(生活の質)および費用に及ぼすLPD効果に関するデータは見いだせなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2017.11.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD002181 Pub2

Tools
Information