前立腺切除後の尿失禁に対する保存的管理

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著者の結論: 

根治的前立腺切除術後の尿失禁に対する様々な保存的管理法の価値は未だ不確かなままである。経尿道的前立腺切除術(TURP)後に個別に骨盤底筋トレーニング療法を実施することで男性が利益を受ける可能性は低いと思われる。長期的に外部陰茎クランプを用いて尿失禁を管理できる可能性もあるが、安全性の問題がある。

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背景: 

根治的前立腺切除術後および前立腺の経尿道切除術(TURP)後のいずれにおいても尿失禁は一般的にみられる。保存的管理法にはバイオフィードバック法を併用するまたは併用しない骨盤底筋のトレーニング、電気刺激、体外磁気神経支配(ExMI)、圧迫器具(陰茎クランプ)、生活様式の変更などがあり、様々な方法を組み合わせる場合もある。

目的: 

前立腺切除術後の尿失禁に対する保存的管理法の効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Incontinence Group Specialised Register(2011年8月24日検索)、EMBASE (1980年1月~2009年第48週まで)、 CINAHL(1982年1月~2009年11月20日まで)および関連性のある論文の参考文献リストを検索し、会議議事録をハンドサーチすると共に、試験を特定するために試験責任者に連絡をとった。

選択基準: 

前立腺切除後の男性の尿失禁に対する保存的介入を評価したランダム化または準ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名以上のレビューアが試験の方法論的質を評価し、データを要約した。予備的な情報を得るため、組み入れた研究の著者数名に連絡を試みた。

主な結果: 

試験37件が選択基準を満たした。33件が根治的前立腺切除術後の男性を対象としており、3件は経尿道的前立腺切除術(TURP)後を、1件はいずれの術式も対象としたものであった。試験には男性3399例が含まれ、そのうち1937例は積極的な保存的介入を受けた。介入法、対象集団およびアウトカム指標にはかなりのばらつきがあった。以前に説明されたアウトカムの多くについてはデータがなかった。男性の症状は管理法とは関係なく経時的に改善した。有害作用は発生しなかったか、報告されなかった。 試験8件では、根治的前立腺切除術後に尿失禁となった男性に対し、バイオフィードバックを併用してまたは併用せずに骨盤底筋トレーニングを実施した方が対照より良好であったが(例、尿失禁例57%に対し対照群では62%、12ヶ月後の尿失禁のリスク比(RR)0.85、95%信頼区間(CI)0.60~1.22)、信頼区間が広く、不確実性を反映しており、エビデンスはなかった。しかし、個別の治療法に関する大規模な多施設共同試験1件では、尿または生活の質に関するアウトカム指標に差は認められず、信頼区間は狭かった。勃起不全に対する利益のエビデンスもなかった(1年後、骨盤底筋トレーニング群で勃起なしが56%であったのに対し対照群では55%。RR 1.01、95%CI 0.84~1.20)。個々の小規模の試験から、電気刺激、体外磁気神経支配または様々な治療法の組み合わせが有益であることを示唆するデータが得られたものの、エビデンスは限定的であった。 大規模試験1件で、経尿道的前立腺切除術(TURP)後に尿失禁となった男性に対して、個別の骨盤底筋トレーニングをベースとする介入により、尿失禁にも勃起不全にも利益はなかったことが明らかになった(例、介入群の尿失禁の割合65%に対して対照群は62%。12ヶ月後のRR 1.05、95%CI 0.91~1.23)。 根治的前立腺切除後のすべての男性を対象とした保存的治療法に関する試験8件は、治療と予防の両方を目的としたもので、尿失禁の軽減に関して骨盤底筋トレーニングの方が対照管理法と比較して総合的な利益があった(例、介入群の1年後の尿失禁の割合10%に対して対照群は32%、尿失禁のRR 0.32、95%CI 0.20~0.51)。しかし、この所見にはパッドテストのデータによる裏付けがなかった。多くの試験の品質は低から中等度であり、信頼区間も広いため、これらの所見は注意して取り扱う必要がある。 試験1件ではあるタイプの外部圧迫器具の方が他の2つのタイプの器具または無治療より好ましいと報告され、最も失禁量が少なかった。生活様式の変更などのその他の保存的介入の効果については、このような介入を対象とした試験を同定することができなかったため未だ確認されていない。