妊娠中又は授乳中あるいはその両期間における小児のアトピー性疾患の予防又は治療のための母親の食事での抗原回避

小児を湿疹及び喘息などのアレルギー性疾患から守るため、女性に対し妊娠中又は母乳哺育中に特定食品を回避するよう助言するには、エビデンスが不十分である。 参加者952名を対象とする5件の試験を組み入れた。母親が妊娠中又は母乳哺育中あるいはその両期間中に牛乳、卵及びその他の「抗原性」のあると思われる食品を回避することについての試験では、このような回避が小児のアトピー性湿疹又は喘息を予防する助けになるか否かについて不十分なエビデンスしか得られなかった。このアウトカムを報告する1件の試験で、上記食品の摂取を回避した女性の妊娠期体重が有意に低下し、母親又は胎児に対する有害な栄養学的影響の可能性が示された。最後に1件の小規模試験では、母親の牛乳及び卵の摂取回避に対する、母乳哺育を受けるアトピー性湿疹の乳児の反応について結論が得られなかった。

著者の結論: 

ハイリスク妊婦に対する抗原回避食は、小児のアトピー性疾患のリスクを大幅に低減するとは思われず、上記の抗原回避食は母親及び胎児又は両者の栄養に有害な影響を与えるものと思われる。ハイリスク授乳婦に対する抗原回避食は、小児のアトピー性湿疹の発症リスクを低減すると思われるが、もっと適切な試験の実施が必要である。

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背景: 

アトピー性湿疹のある授乳児の一部は、牛乳、卵又はその他の母親の食事由来抗原の除去により利益が得られる。母親の食事での抗原は胎盤を通過することも知られている。

目的: 

妊娠又は授乳期間中あるいはその両期間中の抗原回避食による母子栄養及び小児のアトピー性疾患の予防又は治療に対する効果を評価する。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2012年7月6日)を検索した。

選択基準: 

妊婦又は授乳婦における母親の食事での抗原回避を比較する全てのランダム化比較試験又は準ランダム化比較試験。母乳以外の乳児の食事又は乳児の環境に関する食事以外の側面の操作を含む多面的介入の試験を除外した。

データ収集と分析: 

発表済み報告書からデータを抽出し、連絡をとった試験実施者から得た追加情報を補充した。

主な結果: 

参加者952名を含む5件の試験から得たエビデンスは、生後18ヵ月間のアトピー性湿疹発現に対する、妊娠中の母親の食事で抗原回避の保護効果を示すものではなかった。アレルギー性鼻炎又は結膜炎あるいはその両者、並びに蕁麻疹に関するデータは各々単一試験に限られ、意味のある推論を引き出すには不十分であった。アトピー性の長期アウトカムの報告はなかった。妊娠中の食事制限は、わずかだが有意に低い妊娠期平均体重の増加、有意でない早期産のより高いリスク及び有意でない出生時平均体重の低下との関連を示した。 参加者523名を含む2件の試験から得たエビデンスでは、授乳婦の食事での抗原回避による、生後18ヵ月間のアトピー性湿疹発現及び1年目、2年目又は7年目の牛乳、卵又はピーナッツ抗原の皮膚プリックテスト陽性に対する有意な保護効果を認めなかった。 アトピー性湿疹を確定した乳児の授乳婦17名を対象とする1件のクロスオーバー試験では、母親の食事での抗原回避が、有意でない湿疹重症度低下との関連を示した。

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