股関節骨折手術後の認知症患者に対するリハビリテーション

背景

股関節骨折は、主に高齢者の損傷であり、通常は転倒によって引き起こされる。それは、歩く能力、日常生活動作能力、および自立したままでいる能力に影響を与える可能性がある。股関節骨折は認知症患者により多く見られ、混乱しやすさや、手術後の褥瘡や呼吸器感染症などの更なる合併症を起こすリスクがより高いため、回復がより困難になることがある。また、認知症患者は痛みや不快感を表現するのがより困難になる場合もある。

レビューの論点

我々は、股関節骨折後の認知症患者を治療するさまざまな方法が、どの程度回復に影響するのか、また、回復に関連する費用がどうかを知りたかった。これは、以前のコクランレビューの更新版である。

研究の特性

我々は、股関節骨折後の認知症患者に対するケアとリハビリテーションを強化したモデルと、通常のケアを比較した無作為化比較対照試験(参加者を無作為な方法で2つ以上の治療グループのいずれかに振り分ける研究の形式)を検索した。最新の検索は、2019年10月16日に行われた。

我々は、股関節骨折後の認知症患者、合計555名を調査した7つの研究を採用した。5つの研究では、さまざまな医療の専門家が病院と地域社会にまたがって、または病院の中だけで協力して実施した強化された学際的リハビリテーションおよびケアプログラムを、通常の病院で行われているケアと比較していた。 2つの研究では、病院において、老年病専門医が主導するケアと整形外科医が主導するケアを比較していた。

主な結果

股関節骨折後に病院で強化されたケアとリハビリテーションを受ける認知症患者は、せん妄を発症する可能性が低いかもしれない。老年病専門医が主導するケアを行った場合は、整形外科医が主導するケアを行うより入院期間が3〜4日間短くなるかもしれない。生活の質に対するケアモデルの効果に関する情報はなく、日常活動を管理する個人の能力、運動能力の回復、認知機能、痛み、死亡率、または骨折前に生活していたのと同じ場所に戻ることができる可能性のような他の重要な結果への影響については、はっきりさせることはできなかった。

エビデンスの質

エビデンスに関する主な問題は、ほとんどの研究が小規模であり、それらの結果にバイアスがかかっていた可能性があることである。レビューの結果のほとんどは非常に不確かである。認知症患者のために特別に用意されたケアモデルは一つもなかった。認知症患者には特別なケアモデルが必要であるかもしれないが、レビューに含まれるすべてのデータは、股関節骨折を受傷した(認知症患者だけでない)すべての高齢者を対象にしたより大規模な研究に含まれていた認知症患者のものであった。

結論

研究されたケアモデルにはいくつかの利点があるかもしれないが、現在発表されている研究のみでは、股関節骨折の手術後の認知症患者をケアする最善の方法を決定するには不十分である。

訳注: 

《実施組織》 菊井将太(阪神リハビリテーション病院 A small circle of shrimps) 翻訳、井上円加 監訳[2020.02.09]
《注意》 この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
《CD010569.pub3》

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