シャーガス心筋症患者の心不全治療に対する薬物療法による介入

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ブラジル人医師Carlos Chagasに敬意を表して名付けられたシャーガス病は、ライフサイクルにヒトを必要とする原虫クルーズ・トリパノソーマが原因で起こります。中南米でよくみられ、シャーガス病によりシャーガス心筋症(心筋の病気)が起こり、心不全の重要な原因となります。シャーガス病感染者数は世界で約1,000~1,200万人と推定され、クルーズ・トリパノソーマ感染者のうち20~30%に症候性心不全が生涯のある時点で起こります。 2005年にアメリカ大陸では、クルーズ・トリパノソーマ感染者数は7,694,500人、シャーガス心筋症は1,772,365人と推定されました。また、南米の流行国から感染者が世界中を移動しています。その結果、アメリカ大陸の健康問題と思われていたものが急速に世界の健康問題となりました。米国には300,167人のクルーズ・トリパノソーマ感染者が居住し、年に30,000~45,000例の心筋症、63~315例の先天性感染がみられると推定されています。 シャーガス病によらない心不全に対する標準的治療がシャーガス病に合併した心不全の治療に用いられています。罹患集団に根本的な違いがあるため、シャーガス病に合併した心不全の治療に対する、薬物療法による介入の利益と有害性を評価する必要があります。このコクラン・レビューでは、参加者69名を対象とした、これらの介入のランダム化臨床試験を2件同定しました。これらの試験では、シャーガス心筋症の人での心不全の治療に対し、プラセボに比べたカルベジロールの使用について評価していました。全死亡率の低下について、カルベジロールとプラセボに有意差を認めませんでした。シャーガス心筋症に対するカルベジロールの安全性プロファイルは不明のままでした。これらの結果は、バイアスが高リスクの試験に基づいています。得られた臨床試験による現在のエビデンスでは、シャーガス心筋症患者の心不全治療におけるカルベジロールの使用は支持されませんでした。従来の心不全治療薬をシャーガス心筋症に完全に適用できるか検討するため、さらなる研究が必要です。サシガメのコントロールや環境適所研究などの予防的アプローチが、シャーガス病罹患率の低下に重要である。

著者の結論: 

本レビューでは、シャーガス病患者での心不全治療に対するカルベジロールの効果に関するエビデンスは欠如していた。選択した2件の試験は検出力不足でバイアスは高リスクであった。シャーガス心筋症の治療に対するカルベジロールの使用を支持する結論的なデータはなかった。ランダム化臨床試験により投与効果のエビデンスが示され、利益と有害性の兼ね合いが取れない限り、指針立案者、臨床医、学術者は、シャーガス心筋症患者での心不全治療に対するカルベジロールの推奨および投与について慎重を期すべきである。シャーガス病患者での心不全治療に対する他の薬物療法による介入の有効性および安全性は不明である。

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背景: 

シャーガス病に合併した心筋症は、南米での罹病および死亡の主要原因となっている。保健医療システムに対する相当な負担にもかかわらず、シャーガス病患者での心不全治療に対する薬物療法による介入の有効性および安全性に関して明らかになっていない。

目的: 

シャーガス心筋症患者での心不全治療に対する現在の薬物療法による介入の利益および有害性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、コクラン・ライブラリ2011年第1号)、MEDLINE(Ovid)、EMBASE(Ovid)、LILACSおよびISI Web of Scienceを2011年4月まで検索した。選択した論文の参考文献リストをチェックした。言語の制限は適用しなかった。

選択基準: 

左室駆出率のステージが低下または温存されているかどうかにかかわらず、症候性心不全(ニューヨーク心臓協会、分類II~IV)のシャーガス心筋症成人患者(18歳以上)での心不全治療に対する薬物療法による介入の効果を評価しているランダム化比較試験(RCT)を選択した。追跡期間に関して制限を適用しなかった。主要アウトカムは、全死亡率、30日目の心血管系死亡率、心臓代償不全までの時間および無病期間(30、60、90日目)、ならびに有害事象であった。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に研究選択、バイアスリスク評価、データ抽出を行った。二値アウトカムについては、相対リスク(RR)と個々の95%信頼区間(CI)を推定した。I<sup>2</sup>統計量を用いて統計学的異質性を測定した。所見を統合するため、固定効果モデルを用いた。その後追加されたデータについて著者らに連絡を取った。

主な結果: 

参加者69名の2件のランダム化臨床試験を選択した。どちらの試験もカルベジロールをプラセボと比較しており、バイアスは高リスクであった。プラセボに比べて、カルベジロールによる全死亡率への有意な影響はなかった[2/34(5.88%)対3/35(5.87%)、統合RR 0.69、95%CI 0.12~3.88、I<sup>2</sup> = 0%]。心血管系死亡率、心臓代償不全までの時間、無病期間について報告した試験はなかった。カルベジロールの有害作用に関するエビデンスは決定的なものではなかった。

訳注: 

監  訳: 澤村 匡史,2014.1.28

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

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