ビタミンD補充による成人の死亡予防

レビューの論点

健康成人および疾患安定期の成人の死亡予防に対するビタミンDの有益性および有害性を評価すること。

背景

至適濃度のビタミンDが癌や心血管疾患(心臓発作や脳卒中など)の発生率の低さと関連していることが、多数の観察研究によって示されている。ビタミンDは、ビタミンD3(コレカルシフェロール)として皮膚で合成されるか、または食物やサプリメントからビタミンD3もしくはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)の形で摂取される。2011年以降のコクラン・システマティック・レビューでは、種々の型のビタミンDの死亡率に対する影響を分析し、ビタミンD3(コレカルシフェロール)が死亡率を低下させることが示された。現在このシステマティック・レビューは更新され、結論の妥当性(正当性)を強化するために開発された改良版コクラン分析法に従って、すべての対象試験を再評価した。

研究の特性

分析データを入手した56件の試験では、計95,286例の参加者をビタミンD投与群、無治療群、またはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。対象試験の半数超で、バイアスのリスクは低いと判断された。試験はすべて高所得国で実施された参加者の年齢は18歳から107歳であった。女性が占める割合の平均値は77%であった。ビタミンD投与期間は平均4.4年であった。

この平易な要約は2012年2月現在のものである。

主な結果

このレビューは、ビタミンD3 が死亡率を低下させる可能性があることを示唆している。これは、新たに1人の生命を救うためには、ビタミンD3を約150人の参加者に5年超投与する必要があることを示している。女性のみを対象とした研究では、男女両方を対象とした研究と同様のビタミンD3 の効果が認められた。また、ビタミンD3は、癌による死亡率も低下させると考えら、5〜7年間投与した場合、1000人あたり4人の死亡率が低下した。また、ビタミンD投与により、腎結石形成(ビタミンD3 をカルシウムと併用した場合)や血中カルシウム濃度の上昇(アルファカルシドールおよびカルシトリオールの両方)などの有害作用が観察された。以上から、ビタミンD3が、介助を必要としないか、または介護施設でケアを受けている高齢者の死亡率を低下させるというエビデンスが得られた。

エビデンスの質

多数の参加者が、試験終了前に試験参加を中止した。このため、結果の妥当性が疑問視される。健康な若年者や、明らかなビタミンD欠乏が認められない地域社会で生活する高齢者および介護施設入所者の死亡率に対するビタミンD3 の効果については、さらにランダム化臨床試験が必要である。

著者の結論: 

ビタミンD3は、独居しているか、または介護施設でケアを受けている高齢者の死亡率を低下させると考えられた。ビタミンD2、アルファカルシドールおよびカルシトリオールの死亡率に対する利益に、統計学的有意性は認められなかった。ビタミンD3とカルシウムを併用した場合、腎結石の発生率が上昇した。アルファカルシドールおよびカルシトリオールは、いずれも高カルシウム血症の発生率を上昇させた。脱落した参加者数が多いことに起因する症例減少バイアスのリスクや死亡率の報告がない試験が数件存在することに起因するアウトカム報告バイアスのリスクの他にも、複数のエビデンスの弱さが存在するため、さらにプラセボ対照ランダム化試験が必要であると考えられる。

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背景: 

死亡率に対するビタミンDの効果について入手可能なエビデンスは決定的ではない。最近のシステマティック・レビューでは、ビタミンD3 が主に高齢女性の死亡率を低下させる可能性があるというエビデンスが得られた。本システマティック・レビューでは、死亡の一次予防および二次予防におけるビタミンD補充の有益性と有害性について更新および再評価を行った。

目的: 

健康成人および疾患安定期の成人を対象に、死亡予防に対するビタミンD補充の有益性と有害性を評価すること。

検索戦略: 

The Cochrane Library、MEDLINE、EMBASE、LILACSScience Citation Index-ExpandedおよびConference Proceedings Citation Index-Science(いずれも2012年2月まで)を検索した。未同定の関連試験に関しては、対象とした試験の参考文献を参照するか、または製薬企業に確認した。

選択基準: 

成人参加者を対象に、あらゆる型および用量のビタミンDをさまざまな期間および経路で投与した場合と、プラセボまたは無介入を比較したランダム化試験。参加者は、一般集団または疾患安定期と診断された患者集団から集められた。ビタミンDは、ビタミンDサプリメント(ビタミンD3 [コレカルシフェロール]もしくはビタミンD2[エルゴカルシフェロール])または活性型ビタミンD(1αヒドロキシビタミンD[アルファカルシドール]もしくは1,25-ジヒドロキシビタミンD[カルシトリオール])として投与した。

データ収集と分析: 

6名のレビュー著者が独立してデータを抽出した。ランダム効果メタアナリシスおよび固定効果メタアナリシスを実施した。アウトカムが2値変数の場合は、リスク比(RR)を計算した。イベント数が0の試験を説明するために、リスク差(RD)および経験連続補正を用いて2値変数データのメタアナリシスを実施した。出版物に発表されたデータおよび論文の著者に連絡して入手したデータを使用した。

システマティックエラーのリスクを最小限にするため、対象試験のバイアスのリスク評価を行った。試験の逐次解析によって、累積メタアナリシスで生じる可能性があるランダムエラーのリスクを管理した。

主な結果: 

159件のランダム化臨床試験を同定した。94件の試験では死亡例は認められず、9件の試験では死亡例が認められたが、どの介入群で死亡が発生したかについての記載はなかった。このため、56件のランダム化試験(参加者数95,286例)から死亡率に関する利用可能なデータが得られた。参加者の年齢は18歳から107歳であった。ほとんどの試験では、70歳より高齢の女性が対象に含まれていた。女性が占める割合の平均値は77%であった。48件の試験では、健康な参加者94,491例を無作為に割り付けた。このうち、4件の試験では健常人が、9件の試験では閉経後の女性が、また、35件の試験では独居しているか、または介護施設でケアを受けている高齢者が対象であった。残り8件の試験では、神経疾患、心血管疾患、呼吸器疾患またはリウマチ疾患を有する参加者795例を無作為に割り付けた。。ビタミンD投与期間の加重平均は4.4年であった。バイアスのリスクは、対象試験の半数超で低かった。試験はすべて高所得国で実施された。45件(80%)の試験では、参加者の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度をもとにベースライン時のビタミンD濃度を報告していた。19件の試験では、参加者のビタミンDは充足していた(20 ng/mL以上)。残り26件の試験の参加者では、ビタミンD不足(20 ng/mL未満)が認められた。同時解析を行った56件の試験すべてにおいて、ビタミンDは死亡率を低下させた(5,920/47,472(12.5%)対6,077/47,814(12.7%);RR0.97(95%信頼区間(CI)0.94〜0.99);P = 0.02;I2= 0%)。試験から脱落した参加者は8%を上回った。「ワースト・ベストケース」および「ベスト・ワーストケース」シナリオ分析では、ビタミンDが死亡率の顕著な上昇または低下に関与していることが示された。ビタミンDの種類別に異なる分析法を用いて評価した結果、ビタミンD3のみが死亡率を低下させた(4,153/37,817(11.0%)対4,340/38,110(11.4%);RR0.94(95%CI 0.91〜0.98);P = 0.002;I2 = 0%;参加者数75,927例;試験数38件)。ビタミンD2、アルファカルシドールおよびカルシトリオールは、死亡率に有意な影響を及ぼさなかった。バイアスのリスクが高い試験のサブグループ解析では、ビタミンD2 が死亡率をむしろ増加させる可能性が示唆されたが、この知見はランダムエラーが原因の可能性がある。試験の逐次解析では、ビタミンD3に関する知見を支持する結果が得られ、試験の逐次モニタリングでは累積Zスコアが有益性の境界を超えた。これは、新規死亡1例を予防するために150例が5年超のビタミンD3投与を受ける必要があることを意味する。サブグループ解析では、バイアスのリスクが低い試験とバイアスが高い試験の比較、対照群にプラセボを用いた試験と対照群に無介入を用いた試験の比較、助成金バイアスのリスクが認められない試験と助成金バイアスが認められる試験の比較、一次予防を評価した試験と二次予防を評価した試験の比較、登録時のビタミンD濃度が20 ng/mL未満の参加者を含む試験と登録時の参加者のビタミンD濃度が20 ng/mL以上の試験の比較、日帰り施設利用者を対象とした試験と施設入所者を対象とした試験の比較、カルシウムサプリメント併用試験とカルシウム非併用試験の比較、投与量が800 IU/日未満の試験と投与量が800 IU/日超の試験の比較、女性のみを対象とした試験と男女両方または男性のみを対象とした試験の比較を行った結果、死亡率に対するビタミンDの効果に統計学的有意差は認められなかった。ビタミンD3を投与した場合、癌による死亡率の低下に統計学的有意性が認められた(RR0.88(95%CI 0.78〜0.98);P = 0.02;I2= 0%;参加者数44,492例;試験数4件)。ビタミンD3とカルシウムを併用した場合、腎結石のリスクが上昇した(RR1.17(95%CI 1.02〜1.34);P = 0.02;I2 =0%;参加者数42,876例;試験数4件)。アルファカルシドールおよびカルシトリオールは、高カルシウム血症のリスクを上昇させた(RR3.18(95%CI 1.17〜8.68);P = 0.02;I2 = 17%;参加者数710例;試験数3件)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.7.11]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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