下腿潰瘍の治療に対する経口亜鉛補充

ほとんどの下腿潰瘍(開いた傷口で、膝から下に生じることが多い)は、通常、創傷被覆材を用いるなど、十分な創傷ケアによって治癒する。しかし、創傷ケアが十分であっても、下腿潰瘍が治るまでに数週間から数カ月かかる場合がある。下腿潰瘍は、しばしば患者に苦痛をもたらし、公共医療費の負担となる。治癒が困難である原因として、栄養不良で身体の自然な回復力が弱まっていることが考えられる。良好な治癒には亜鉛などのミネラルが必要であり、硫酸亜鉛の錠剤が潰瘍の治癒に有用である可能性が示唆されている。下腿潰瘍の治療に亜鉛を用いた試験6件のデータを入手したが、いずれも小規模であったため、有益性が存在するか否か明らかにすることはできなかった。さらに、これらの試験で用いられた方法では、試験結果にバイアスが存在する可能性を否定できなかった。これまでのエビデンスに基づけば、亜鉛摂取により下腿潰瘍治癒が促進する可能性は低いが、さらに質の高い試験を実施するべきであろう。

著者の結論: 

経口硫酸亜鉛は、動脈性および静脈性の下腿潰瘍の治癒に有用ではないと思われるが、採用した試験はいずれも小規模であり、バイアスのリスクも明らかでなかった(報告が不十分であるため)。

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背景: 

生涯のなかで下腿潰瘍を経験する人は1%に上る。下腿に生じる潰瘍は本質的に慢性であり、何カ月、ときに何年もの間、治癒せずに潰瘍病変を呈する場合がある。治癒後も再発のリスクは高い。創傷被覆材などを用いるとともに、血液供給(血流)不良、感染症および栄養不良などの基礎疾患の治療を行う。

目的: 

動脈性または静脈性の下腿潰瘍の治癒に対する経口亜鉛剤の有効性を評価すること。

検索戦略: 

この7回目の更新では、Cochrane Wounds Group Specialised Register(2014年9月2日検索)およびCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2014年第8号)を検索した。元文献に対するレビューでは、硫酸亜鉛の錠剤を製造している企業に関連する試験の詳細を求めた。

選択基準: 

動脈性または静脈性の下腿潰瘍患者を対象に、経口硫酸亜鉛剤治療と、プラセボもしくは無治療を比較したランダム化比較試験を適格とした。発表の年代や言語には制限を設けなかった。主要なアウトカムの指標は、潰瘍の完全治癒とした。完全治癒までの日数、試験期間中の潰瘍面積比または治癒率を記載して潰瘍の治癒を客観的に評価した試験を適格とした。

データ収集と分析: 

2人の著者が独立してデータをすべて抽出し、試験の質を評価した。

主な結果: 

小規模試験6件(参加者183例)を適格と判定した。この試験6件のうち、4件は静脈性潰瘍患者を対象とし、1件は動脈性潰瘍患者を対象としていた。残りの1件は混合性潰瘍が対象であった。静脈性潰瘍患者を対象とした4件では、血清亜鉛が測定され、経口硫酸亜鉛とプラセボとの比較が行われた。これらの試験を統合した結果、潰瘍の治癒に関しては、両群に統計学的な有意差はないことが示された(RR 1.22、95%CI 0.88~1.68)。総じて、経口亜鉛剤が動脈性や静脈性の下腿潰瘍の治癒を促進することを示すエビデンスは認められない。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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