組織化された入院患者(脳卒中ユニット)ケア

レビューの論点
組織化された入院患者(脳卒中ユニット)ケアは、一般病棟での従来のケアと比べて入院中の脳卒中患者の回復を向上させるか?

背景
組織化された入院患者(脳卒中ユニット)ケアとは、脳卒中患者のケアを専門とする看護師、医師、セラピストによって病院で提供されるケアの一形態である。専門スタッフらは、脳卒中患者の個々のニーズに合わせた最適なケアを提供するために、連携したチームとして働くことを目的としている。

研究の特徴
5,902人の参加者からなる29の臨床試験を特定した(2019年4月2日に検索を完了)。募集した参加者は、最近脳卒中を発症し、入院が必要な人たちであった。組織化された入院患者(脳卒中ユニット)のケアは、脳卒中病棟(専用の脳卒中病棟で提供されるケア)、混合リハビリテーション病棟(混合リハビリテーション病棟内で脳卒中患者の改善を目指す設定)、移動式脳卒中チーム(様々な病棟に出向いて脳卒中患者のケアを行うチーム)など、様々な方法で提供された。

主な結果
脳卒中発症から平均12か月後、組織的な入院患者(脳卒中ユニット)ケアを受けた人の方が、生存する可能性が高く(脳卒中ユニットケアを受けた100人につき生存者が2人多くなる。中等度の質のエビデンス)、在宅で生活している可能性が高かった(脳卒中ユニットケアを受けた100人につき在宅復帰者が6人多くなる。中等度の質のエビデンス)。また、これらの患者は、日常生活において自立している可能性が高かった(脳卒中ユニットケアを受けた100人につき自立する人が6人多くなる)。男性も女性も、若年者も高齢者も、また脳卒中の種類や重症度が異なる人でも(同じように)明らかな有益性がみられた。その有益性は、脳卒中ユニットが専用の脳卒中病棟で提供された場合に最も明らかであった。

エビデンスの質
主要アウトカム(死亡率、在宅復帰率などの評価指標)については、参加者や医療従事者から治療サービスを隠すこと(盲検化)が不可能であったため、エビデンスの質を「中等度」に格下げした。今回の結論は、デザインが良くなかったり、データが不足していたりして質が低いと判断された試験には依存していない。その他のいくつかのアウトカム指標と分析については、さらに多くの情報が不足していたため、低い質のエビデンスに格下げした。

結論
組織的な入院患者(脳卒中ユニット)ケアを受ける患者は、脳卒中から1年後も生存し、自宅で生活をし、身の回りのことが自立する可能性が高い。どのような脳卒中患者においても幅広く、明らかな有益性がみられた。様々な種類の脳卒中ユニットが展開されているが、一番良い結果が得られるのは、専用の脳卒中病棟を拠点とした脳卒中ユニットのようだ。

訳注: 

《実施組織》中野雅資(阪神リハビリテーション病院 A small circle of shrimps)、冨成麻帆 翻訳 [2020.06.08] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD000197.pub4》

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