軽度から中等度の認知症をもつ人々のための認知トレーニング

背景

アルツハイマー病やその他の疾患による認知症は、障害の主な原因であり、大きな健康的社会的問題となっている。現在、世界で4,000万人以上が認知症を持ちながら生活しており、その数は2050年までには1億1,500万人以上に増加すると予測されている。認知症の負担を軽減するための、効果的な治療法が急務となっている。認知トレーニング(CT)は、記憶、注意、問題解決といった特定の認知機能に対する課題について、指導付きで練習することに焦点を当てた、非薬物的な治療法である。CTが軽度から中等度の認知症をもつ人々の、思考、ウェルビーイング、全般的機能の維持・改善に役立つかどうかは明らかになっていない。

主な結果

12カ国で実施された、合計約2000人の参加者を含む、33件のCTに関する研究データを分析した。通常治療や非特異的な活動に参加した場合と比べて、CTに参加した人々は、言語の流暢さなどのより特異的な認知機能だけでなく、全般的な認知機能においても何らかの効果がある可能性が示され、またその改善は少なくとも数か月続く可能性が示唆された。CTへの参加が、参加者の負担の増加に関連しているというエビデンスは見つからなかった。しかし、CTが他の積極的治療に参加するよりも効果的であるというエビデンスも見つからなかった。

このレビューの限界

我々がレビューした研究の質は様々で、全体的に高くはなかったため、得られたいくつかの知見の確実性は低い。今後の研究は、質の改善を続け、CTと他の治療法を継続的に比較することが必要である。また、観察された認知機能への効果が、短期または中期的以上に継続するかどうかをみるために、より長期間にわたって参加者をフォローすることが必要である。

訳注: 

《実施組織》瀬戸屋希、冨成麻帆 翻訳[2019.10.15]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
《CD013069》

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