妊娠中に糖尿病を発症した女性のための有効な治療法としてミオイノシトール補給の効き目があるのか?

論点

妊娠中、母親はインスリン抵抗性を発現し、血液からの糖の取り込みが減少し、胎児に一定の糖が確実に供給される。母親は余分なインスリンを生成し、母親の血糖値を維持しなければならない。あるいは母親はGDMを発症するリスクがある。GDMは妊娠中に起こり、通常出産後に解消する。世界中で問題が増加しており、母体と胎児の長期および短期の合併症が引き起こされる。GDMの女性は高血圧発症と出産時帝王切開になるリスクが大きい。その胎児は在胎週数に比べて大きく成長し、骨折や肩が棒のようになる出産時損傷を受ける可能性が増大する。長期的には母親と小児は共に2型糖尿病を発症するリスクが増大する。

重要である理由

GDMの女性にとって、食事指導および生活習慣の指導は第一選択の治療法である。依然として目標となる血糖値を維持することができない女性には、経口血糖低下薬あるいはインスリン療法が推奨される。母体と胎児に害を与えることなく母体の血糖値をコントロールする治療法を見つけることが重要である。ミオイノシトールはフルーツ、野菜、ナッツおよびシリアル中に確認されるイノシトールの天然型である。これは多くの細胞機能のために体が必要とする単一の炭水化物の栄養素である。ミオイノシトールは栄養サプリメントとして市販されている(水溶性の粉末またはカプセル)。

どのようなエビデンスが得られたか?

2016年4月にエビデンスを検索し、2件のランダム化比較試験(142例の女性と胎児を含む)を確認した。2件の試験はイタリアで実施された(そして不明瞭なバイアスのリスクであると判断された)。女性は、1件の試験で妊娠12週から13週までにGDMと診断され、他の試験で26週時にGDMと診断された。これらの試験から得られた結果により、ミオイノシトールは空腹時血糖値を低下させることができることが示唆された。インスリンを補充する必要性について、ミオイノシトール群と対照群との間で明確な相違は認められなかった。試験のうちの1件は、食後1時間に血糖値の低下を示した(1件の試験、73例の女性)。在胎週数に比べて大きい出生に伴うリスクが低下したことを示唆するエビデンスはない(1件の試験、73例の幼児)。ミオイノシトールは、出産時血糖値が低いという乳児のリスク、および遅すぎる在胎週数で生まれるというリスクを減らすと考えられた。ただしエビデンスの質は低い。このレビューに関して重要であると確認された多くの幼児および母親のアウトカムは、組み込まれた試験では報告されなかった:妊娠中の高血圧、帝王切開、2型糖尿病の発症、および死亡あるいは状態の悪い乳児の数、もしくは神経感覚障害の乳児の数が含まれる。母親、小児としての幼児、成人としての未成年あるいは医療サービスのアウトカムについて、長期アウトカムは報告されなかった。

意味するもの

GDMの女性の治療用のミオイノシトールについて報告した限られた数の試験のため、このレビューに関する重要なアウトカムに関するデータの欠如、および2件の小規模な試験にもとづいた低い質のエビデンスの欠如、またミオイノシトールが有用である場合、GDMの女性に対する介入として有用である。ミオイノシトールの使用を支持する入手可能なエビデンスは不十分である。妊娠糖尿病の女性の治療法あるいは併用療法としてミオイノシトールの役割を検討するためには、大規模のサンプル・サイズで質の高い追加試験が必要である。

著者の結論: 

このレビューにおいて、大多数のアウトカムを検討したデータはなく、妊娠糖尿病の治療に関してミオイノシトールの効果を評価するデータは不十分であった。在胎週数に比べて大きい出生に伴うリスクを減らすような、ミオイノシトールの摂取と関連があった、幼児にとっての何らかの利益があるとは考えられない。新生児低血糖症はミオイノシトール群では減少しているが、不正確性を伴うエビデンスが存在する。2つの試験から得られたエビデンスにより、ミオイノシトールがプラセボに比較して母親のBMIおよび空腹時血糖の変化の減少に関連があることが示唆された。このレビューのために前もって明記された臨床的に重要なアウトカムの報告が欠如している。

重要な母親と幼児のアウトカムについてGDMの治療としてミオイノシトールの有効性の不確実性は依然として存在しており、妊娠糖尿病の女性の治療法あるいは併用療法としてミオイノシトールの役割をさらに検討するためには、適切なサンプル・サイズを有したなおいっそう高い質の試験が必要である。このレビューの方法のセクションにおいて確認されたGDMについての主要なアウトカムが、追加試験によって報告される必要がある。さまざまな民族の、GDMのさまざまな危険因子を有した参加者を今後の試験に組み入れる必要がある。さらに、GDMの治療のためのミオイノシトールの追加試験によって、至適用量、補充療法の頻度と時期、有害事象の報告について検討し、この介入の長期の効果を評価することが必要である。経済的分析あるいは医療サービス利用法とその費用も含まれる必要がある。

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背景: 

妊娠糖尿病(GDM)はさまざまな程度の糖不耐症であり、妊娠中に初発の症状発現が認められ、通常出産後に解消する。GDMは母体と胎児の短期および長期罹患率の増大と関連がある。治療法には、通常生活習慣の調節および/もしくは血糖値の治療目標を維持することを目的とした薬物療法(経口糖尿病薬またはインスリン)などがある。母体と胎児にとって、有効で、許容でき、そして安全な新しい治療薬を発見することが重要である。そのような1つの新たな可能性のある介入が、イノシトールの異性体であるミオイノシトールであり、内因性でフルーツ、野菜、ナッツおよび穀類のような天然の摂取源中に確認される。

目的: 

妊娠糖尿病の治療において、妊娠中の母体と胎児にとってミオイノシトールによる栄養補充療法が安全で有効であるかどうか評価すること。

検索方法: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group’s Trials Register (2016年4月30日)、ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP) ( 2016年4月7日), および検索された試験の引用文献を検索した。

選択基準: 

妊娠糖尿病の女性を治療することを目的に、プラセボ、無治療あるいは他の介入と比較したミオイノシトールの使用法に関して報告した、発表、未発表に関わらずすべてのランダム化比較試験あるいはクラスターランダム化比較試験。準ランダム化試験およびクロスオーバー試験は組み入れのために適格ではない。すでに罹患している糖尿病の女性は除外した。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ各試験について選択基準バイアスのリスクの評価、データの抽出とそれらの精度の確認を行った。データが入手できる主要なアウトカムに関して、GRADEアプローチを用いてエビデンスの質を評価した。

主な結果: 

イタリアにおいて女性を対象として実施された2件の試験(142例の女性と幼児)を組み入れ、ミオイノシトールをプラセボ対照と比較した。

このレビューのためにあらかじめ指定された母親の主要アウトカムのいずれも組み入れられた試験において報告されなかった。妊娠高血圧;帝王切開;続発性2型糖尿病の発症このレビューの母親の副次的アウトカムの大多数について報告されたデータはない。2つの副次的アウトカムについてメタアナリシスを行ったにすぎなかったかもしれない:空腹時経口糖負荷試験および他の薬物療法。すべて結果は1件だけの試験に基づいている。全体的に組み入れられた試験バイアスのリスク重要な方法論的情報の欠如によって不明瞭であると判断された。

他の薬物療法の必要性、あるいは妊娠中の体重増加における治療群間のを示すエビデンスは得られなかった。一方ミオイノシトールは肥満指数(BMI)変化の減少と関連があった(平均差(MD)-1.50 kg/m2; 95% 信頼区間 (CI) -2.35~-0.65; 1件の試験、n = 73))。ミオイノシトールは、対照群と比較して治療の終了時点の空腹時血糖の低下と関連があった( MD -0.47 mmol/L; 95% CI -0.59~-0.35; 2件の試験、n = 142例の女性)。1件の小規模な試験において、ミオイノシトールが、対照群と比較して治療終了時点の食後1時間血糖の低下と関連があった(MD -0.90 mmol/L; 95% CI -1.73~-0.07; 1件の試験、n = 73例の女性)ことが報告された。食後2時間血糖の群間のは認められなかった(MD -0.70 mmol/L; 95% CI -1.46~-0.06; 1件の試験、n = 73例の女性)。食後1時間および2時間血糖により、幅広いCIと小規模のサンプル・サイズとに関連がある不正確性を伴うエビデンスが示された。

幼児に関して、ミオイノシトール群と対照群の間の在胎週数に比べて大きい出生に伴うリスクのを示すエビデンスは得られなかった (リスク比 (RR) 0.36; 95% CI 0.02~8.58; 1件の試験、73例の幼児;質の低いエビデンス)。このエビデンスは精度の低さにより、その評価を引き下げた。このレビューの他の主要アウトカムは組み込まれた試験では報告されていない。周産期の死亡率(死産および新生児死亡率);複合罹患率のうちの死亡率(試験によって定義された通り);神経感覚障害。ミオイノシトール群の幼児は、プラセボ群と比較して新生児低血糖になる可能性が低かった (RR 0.05; 95% CI 0.00~0.85; 1件の試験、73例の幼児; 質の低いエビデンス)。低いイベント発生率と小規模なサンプル・サイズによりこのアウトカムについての不正確性を伴うエビデンスが得られている。早産あるいは出生体重に関して治療群とプラセボ群間のを示すエビデンスは得られなかった。ミオイノシトールはプラセボ群と比較して、出生時の在胎週数が長かった(MD 2.10 週; 95% CI 1.27~2.93; 1件の試験、73例の幼児)。このレビューに関して他の新生児アウトカムのいずれについても報告のあったデータはなかった。

母親、小児としての幼児、成人としての未成年者に関して長期のアウトカム、もしくは医療サービスのアウトカムは報告されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.15]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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