心血管疾患の一次予防ためのビタミンK

背景

心血管疾患(CVD)は、心臓と血管に影響を与える一群の疾患をさす。CVDは世界的な負担であり地域間で様々である。そしてこのばらつきはある程度食事の因子に関連している。そのような因子は、CVD予防と管理に役立つよう調節することができるので重要である。このレビューは、健康成人とCVDのリスクが高い成人を対象に、心血管死亡、全死因死亡、非致死的エンドポイント(心臓発作、脳卒中、狭心症など)およびCVD危険因子の減少について、単独の栄養補給としてのビタミンK補充療法の有効性を評価した。

試験の特性

健康な成人もしくはCVDを発症するリスクの高い人において、ビタミンK補充療法の効果を調べるランダム化比較試験(複数の治療法のうちの1つに参加者を無作為に割り付ける臨床試験)についての科学的データベースを検索した。既にCVD(例えば、心臓発作や脳卒中)を発症した人は組み入れなかった。エビデンスは2014年9月現在のものである。

主な結果

選択基準に合致したのは1件の小規模な試験のみであった。40歳から65歳までの60例の参加者が組み入れられた。この試験は、3カ月にわたって、健康な参加者のCVD危険因子(血圧と脂質レベル)に対する、ビタミンK2サプリメントの効果を調べた。比較群間でこれらの危険因子における差は見られなかったが、これは小規模な試験であり、結果が限定されている。試験が小規模で短期間だったので、致死性と非致死性の心血管のエンドポイントは調べなかった。

エビデンスは現在極端に限られており、CVD予防のためのビタミンK補充療法の有効性を確認できるように、更なる高い質の試験が必要とされる。

エビデンスの質

バイアスのリスクが低いと判断されたのはこのレビューのために確認された1件の試験だけであった。(そのため、参加者もしくは研究者らの見解の偏りにより、誤った結論に達する可能性が低かった。)しかしながら、エビデンスは1件の小規模な試験に限られており、現時点では確固たる結論に到達し得なかった。

著者の結論: 

このレビューの極めて限定的な結果によって、心血管疾患の一次予防のためのビタミンK補充療法の有効性を確認するために、現時点で入手できるエビデンスが欠如していることが明らかになり、この領域において更に高い質の試験の必要性が示されている。

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背景: 

ビタミンKの欠乏は、心血管疾患を引き起こすおそれがあるカルシウム沈着亢進と冠動脈石灰化に関連している。

目的: 

心血管疾患の一次予防のための、単独の栄養補給としてのビタミンK補充療法の有効性を確認すること。

検索戦略: 

以下の電子データベースを検索した:the Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL、2014年全12号のうち第8号);MEDLINE (Ovid、1946年から2014年9月第2週まで);EMBASE Classic + EMBASE (Ovid、1947年から2014年9月18日まで);Web of Science上で(Thomson Reuters)、Science Citation Index Expanded (SCI-EXPANDED)とConference Proceedings Citation Index, Science (CPCI-S)(両方とも1990年から2014年9月17日まで); Database of Abstracts of Reviews of Effects (DARE); Health Technology Assessment Database and Health Economics Evaluations Database (2014年全4号のうち第3号).追加試験のために、試験登録簿とレビューの参考文献一覧表を検索した。言語による制限は設けなかった。

選択基準: 

少なくとも3ヶ月継続し、健康な成人と心血管疾患のリスクが高い成人を含めた、単独の栄養補給としてのビタミンK補充療法のランダム化比較試験を組み入れた。比較群は非介入群もしくはプラセボ群であった。関連するアウトカムは、心血管疾患の臨床イベントと心血管疾患の危険因子であった。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者はそれぞれ、組み入れのために試験を選択し、データを抜粋し、バイアスのリスクを評価した。

主な結果: 

全体的にバイアスのリスクが低いと評価された唯一の小規模な試験(無作為化された60例の参加者)を組み入れた。この試験は、40歳から65歳までの健康な参加者において、3カ月にわたってメナキノン(ビタミンK2)の2種類の投与量を検討した。試験の主目的は、種々の用量で異なるマトリックスGla蛋白質(MGP - 血管壁のビタミンK依存性タンパク)に対するメナキノン(サブタイプ MK7)の効果を検討することであったが、著者らは血圧と脂質レベルについても報告した。試験が小規模で期間が短く、健康な参加者において実施されたので、主要アウトカム(心血管疾患の臨床イベント)に関して報告されなかった。

試験が小規模で結果が限定されているが、心血管疾患の危険因子に関して、血圧もしくは脂質レベルに対してビタミンK2の効果は見られなかった。この試験では他の副次的アウトカムはいずれも報告されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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