床擦れ(褥瘡)予防に対するマッサージ治療

「床擦れ」とは?

「床擦れ(褥瘡)」は圧力と摩擦の継続により起こる傷害である。身体を動かせない、または動かすことが困難な患者、例えば高齢者や身障者が通常発症する。床擦れは、踵や腰、臀部などの身体の骨張った部分に頻繁に発症する。これらの部位への長期的加圧は血行不良を引き起こし、細胞の壊死、皮膚組織の破壊、および開放創-つまり「床擦れ」-につながる。床擦れは治癒までに時間がかかり、中には完治しないものもある。従って、可能であれば予防することが重要となる。

マッサージ治療とは?

マッサージ治療は、身体の部分に触れ、持ち上げ、動かして圧力をかける治療である。マッサージ治療により身体のある部位の血量を増やし、組織の柔軟性を改善し、体液の充満によるむくみ(浮腫)を減少し、免疫機能を増進することができる。床擦れを発症する可能性が高い患者における床擦れ予防にマッサージが効く可能性があるとする研究があるが、その真偽は定かではない。

本レビューの目的

本レビューは、マッサージが単独で、または治療の一環として床擦れ予防に効果があるかどうかを調査したものである。レビュー著者は、床擦れ予防に対するマッサージと偽マッサージとの比較、マッサージと標準治療(特製マットレス、定期的な寝返りおよび動けない患者への減圧)との比較に注目した。

本レビューの所見

レビュー著者は2015年1月8日までの医学文献を検索したが、床擦れ予防に対するマッサージの効能に関連する試験が同定できなかった。従って、床擦れの予防的治療としてのマッサージを支持または否定するエビデンスは今のところない。マッサージが有効であり安全であることを証明するための試験実施が急務である。

著者の結論: 

本レビューの選択基準に合致する研究は今のところ存在しない。従って、マッサージ治療により床擦れが予防できるかどうかは不明である。

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背景: 

床擦れは入院患者の約10%に発症し、高齢者は発症リスクが最も高い。マッサージが床擦れの予防になる可能性があるとする研究が数例あるが、その結果には一貫性が認められない。

目的: 

床擦れになる可能性のある患者を対象に、プラセボ、標準治療またはその他の介入治療とマッサージ治療の効果を比較したエビデンスを評価すること

本レビューでは以下の問いに対する答えを模索した。マッサージはどのような床擦れにも効果があるか。短期および長期においてマッサージは安全か。安全でない場合、マッサージにはどのような有害事象があるのか。

検索戦略: 

Cochrane Wounds Group Specialised Register(2015年1月8日)、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(2015年、第1号)、Ovid MEDLINE(1946~2015年1月8日)Ovid MEDLINE(執筆中で未索引のもの2015年1月8日)、Ovid EMBASE(1974~2015年1月8日)、およびEBSCO CINAHL(1982~2015年1月8日)を検索した。年代または言語による制限は行わなかった。

選択基準: 

床擦れ予防に対するマッサージ治療の効果を検証しているランダム化比較試験(RCT)および準ランダム化比較試験(Q-RCT)を、すべて組み入れるようにした。主要アウトカムは、あらゆるグレードの床擦れを新規に発症した患者の比率であった。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれに試験の選択を行った。相違点は話し合いにより解決した。

主な結果: 

選択基準に合う研究(RCTまたは Q-RCT)がなかったので、メタアナリシスまたは文章による記述が 可能であった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
 CD010518 Pub2

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