心血管疾患予防のための気功

レビューの論点

本レビューでは、健康成人または心血管疾患のリスクが高い人を対象に、心血管イベントおよび心血管危険因子の低減に対する気功の有効性を評価した。

背景

心血管疾患は世界的に重要な健康上の問題である。一方で、運動量の増加やストレス軽減を目的としたリラクゼーション促進などの行動変化によって心血管リスクを低減できると考えられている。気功は中国で発祥し、身体運動、精神の調節および呼吸の制御によって気(体中を流れる生命エネルギー)を回復させる。気功はストレスを軽減し運動量を増大させる可能性がある。

試験の特性

エビデンスは、2014年11月現在のものである。介入期間が3カ月以上の試験を組み入れた。

結果および結論

既に終了した試験11件(参加者1369名)を同定した。これらの試験では、募集した参加者、気功の実施期間および追跡期間にばらつきが認められた。2件の試験では、試験終了後に長年にわたり追跡を行った結果、総死亡率、脳卒中死亡率および脳卒中発生率に対する気功の有益性が認められた。しかし、試験の終了後、追跡期間中に気功を実施したかどうかが不明であるため、この効果が気功によるものであるかどうかは不明である。血圧および血中脂質に対する気功の有益な効果が認められたが、これらの結果はサンプルサイズが小さくバイアスのリスクが著しく大きい少数の試験に基づいている。したがって、気功が心血管疾患の予防に有益であると確定できるまで、大規模で質の高い長期試験がさらに必要である。

著者の結論: 

現在、CVDの一次予防に対する気功の有効性に関して入手可能なエビデンスはきわめて少ない。本レビューに組み入れた試験の大部分はバイアスのリスクが高いと考えられるため、結果の妥当性に対する信頼性は非常に低い。現在継続中の試験が論文発表された場合、限られたエビデンスに新たなエビデンスが蓄積されるが、CVD予防に対する気功の効果を確立するためには、方法論の質が高く、サンプルサイズおよび追跡期間が十分な試験をさらに本レビューの更新時に統合する必要がある。

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背景: 

心血管疾患(CVD)の2大原因は座位の多い生活習慣およびストレスである。気功では身体運動、精神の調節および呼吸の制御によって気(生命の中心となるエネルギー)の流れを回復させる。気功はストレスを軽減させると考えられており、運動性も認められるため、CVDの一次予防に有効な方法である可能性がある。

目的: 

CVDの一次予防に対する気功の有効性を検討すること。

検索方法: 

次の電子データベース、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2014年11月、10/12号)MEDLINE(Ovid)(1946〜2014年10月第4週)、EMBASE Classic + EMBASE(Ovid)(1947〜2014年11月4日)、Web of Science Core Collection(1970〜2014年10月31日)、Database of Abstracts of Reviews of Effects (DARE)、Health Technology Assessment DatabaseおよびHealth Economics Evaluations Database(2014年11月、4/4号)を検索した。アジアのデータベース(初版から2013年7月)およびAllied and Complementary Medicine Database(AMED)(初版から2013年12月)、試験レジストリ、ならびにレビューおよび文献の参考文献一覧を検索した。また、この分野の専門家に問合せを行い、検索時の言語制限は設けなかった。

選択基準: 

健康成人またはCVD高リスク者を対象とした試験期間が3カ月以上のランダム化比較試験。気功を検討した試験で、対照群は介入なしまたは最小限の介入。注目すべきアウトカムに臨床的CVDイベントおよび主要なCVD危険因子が含まれる。多因子にわたる生活習慣介入または減量を行った試験は対象外とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ対象試験を選択した。2名のレビュー著者が対象試験からデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。

主な結果: 

終了した試験11件(参加者1369名)および継続中の試験1件を同定した。募集した参加者、気功の実施期間、追跡期間の長さに関する異質性が試験間で認められた。試験著者と連絡がとれず、報告が不十分であった方法論の詳細について明らかにすることができなかったため、中国語で出版された9件の試験でバイアスのリスクを決定することができなかった。

試験は小規模でバイアスのリスクが顕著であったため、メタアナリシスは実施しなかった。これに続く2件の試験に関する報告では臨床イベントについて詳述されており、試験終了後20〜30年目における総死亡率、脳卒中死亡率および脳卒中発生率に対する気功の効果に統計学的有意差が認められた。しかし、これらの試験は短期間でアウトカムを評価するようデザインされており、追跡期間の延長期間に気功が実施されたかどうかが不明であったため、観察された効果が介入に起因すると結論づけることができない。対象試験はいずれも、その他の非致死的CVDイベントを報告していなかった。

6件の試験では、血圧に対する気功の効果を検討するのに利用可能なデータが得られた。3件の試験では収縮期血圧(SBP)の低下が、2件の試験では拡張期血圧(DBP)の低下がそれぞれ認められた。3件の試験では血中脂質に対する気功の効果を検討した。1件の試験では総コレステロール、低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールおよび中性脂肪に対する効果が、2件の試験では高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールに対する効果が認められた。選択バイアスおよび検出バイアスが低いと考えられた唯一の試験では、CVD危険因子に対する気功の統計学的に有意な効果は認められなかったが、この試験は小規模で検出力が低かった。対象試験では2型糖尿病発生率、有害事象発現率、生活の質および費用について報告されていなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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