18歳超の多発性硬化症男性における勃起障害に対するバイアグラ(シルデナフィルクエン酸塩)投与

勃起障害(ED)は、多発性硬化症(MS)患者においてよくみられる性機能障害である。バイアグラ(シルデナフィルクエン酸塩)は一般集団でのEDの治療に効果のある薬剤と考えられているが、MS患者におけるシステマティック・レビューは行われていない。 本レビューでは、MS患者でのシルデナフィルクエン酸塩の有効性および安全性を評価することを目的とした。関連文献中、計420名のEDを示すMS患者を対象とした2件の研究を同定した。両試験とも、4~12週の経口投与バイアグラをプラセボと比較していた。 短期追跡にて、バイアグラは勃起能と生活の質を改善するのに有効な治療であると支持するエビデンスは限定的であるという所見が得られた。有害事象の報告もあり、最も多くみられたものは、頭痛、顔面潮紅、鼻炎、視覚障害、胃部不快であった。バイアグラ投与中、2名の患者に重篤な有害事象が発現し、1件は三枝バイパス手術を要する冠動脈疾患で、1件は脳血管イベントであった。

著者の結論: 

シルデナフィルクエン酸塩はMS患者でのEDに有効な治療であると支持するエビデンスは限定的であった。長期の適切にデザインされたランダム化二重盲検プラセボ比較試験が今後必要である。

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背景: 

勃起障害(ED)は、多発性硬化症(MS)男性患者でよくみられる性機能障害である。シルデナフィルクエン酸塩は一般集団での男性EDの治療に効果のある薬剤と考えられているが、MS患者におけるシステマティック・レビューは行われていない。

目的: 

MS患者でのEDに対するシルデナフィルクエン酸塩の有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane(2011年11月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクラン・ライブラリ2011年第4号の4)、MEDLINE (PubMed)(1966年1月~2011年11月)、EMBASE(1974年1月~2011年11月)、China Biological Medicine Database (CBM)(1979~2011年11月)を検索した。試験登録、学会議事録を検索し、その後追加されたデータについては、製薬会社と選択した研究の著者に連絡を取った。言語の制約は設けなかった。

選択基準: 

MS患者を対象にEDに対して、シルデナフィルクエン酸塩をプラセボまたは無治療と比較しているランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に選択する論文を選び、データを抽出し試験の質を評価した。不一致はレビューア間で討議し解決した。その後追加された情報について選択した研究の著者に連絡を取った。結果は、相対リスク(RR)または平均差(MD)として95%信頼区間(CI)と共に提示した。

主な結果: 

計420名の患者を対象とした2件のランダム化比較試験を同定した。どちらの試験も、MS患者でのEDに対するシルデナフィルクエン酸塩の短期的有効性および安全性を検討していた。シルデナフィルクエン酸塩服用患者の方が、International Index of Erectile Functionにより測定した、勃起を達成し維持する機能の改善の可能性が高く、Sexual Encounter Profile diaryにより測定した腟挿入達成(RR 1.28、95%CI 0.92~1.78)と性交の遂行(RR 1.38、95%CI 1.00~1.90)の改善の可能性も高く、Global Assessment Questionにより測定した総合的良好反応のA判定(A global well respond)を受ける可能性が高かった(RR 2.72、95%CI 1.40~5.28)と報告された。1件の試験では、シルデナフィルクエン酸塩は生活の質の改善に有効であったが、他の試験では両群に有意差を認めなかった。選択した試験のいずれも、脱落バイアスは高リスクであると判断された。有害事象の報告もあり、最も多くみられたものは、頭痛、顔面紅潮、鼻炎、視覚障害、胃部不快であった。2名の患者に重篤な有害事象が発現し、1件は三枝バイパス手術を要する冠動脈疾患で、1件は脳血管イベントであった。

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