進行疾患の成人における筋力低下に対する神経筋電気刺激

背景

個々の研究から、神経筋電気刺激(NMES)は、進行性疾患の結果としてしばしば認められる筋力低下を改善するのに有用である可能性が示唆されている。NMESでは軽量の刺激装置および皮膚電極を使用し、コントロールされた心地良い筋収縮を引き起こす。受動的な運動であるため、患者は、自宅で座って下肢の筋肉の運動をすることができる。たとえば息切れや疲労のために、より激しい運動に参加できない患者に特に有益である可能性がある。

主な結果

このレビュー最新版では、進行した慢性呼吸器疾患、慢性心不全および/または肺がん患者の群を対象に、NMESを運動なしやプラセボNMES、ウェイトトレーニングと比較した臨床試験18件を対象とした。NMESは、対照とした条件よりも大腿筋の筋力改善に効果的なようであった。筋肉量評価に正確な測定値が用いられた場合、このアウトカムに関する肯定的な効果も認められた。運動能力に対するNMESの効果のエビデンスは決定的なものではなかった。日常生活への筋力低下の影響を軽減するための運動と教育や行動(身体的により活動的になるなど)を併用するさらに幅広いリハビリテーション手法のなかでどのようにNMESを用いることができるかを解明するにはさらなる研究が必要である。

エビデンスの質

4つのレベル(非常に低い、低い、中等度、高い)を用いて研究のエビデンスの質を評価した。質の非常に低いエビデンスとは、我々は結果について非常に不確かであるという意味である。質の高いエビデンスとは、我々は結果について非常に確信が持てるという意味である。全体として、エビデンスの質は、大腿筋の筋力に対する効果については低く、その他のアウトカムについては非常に低い~中等度であった。一部の研究のデザインには問題があった。NMES療法を受けているかどうか、NMESを試験しているかどうかを多くの場合参加者や評価者が知っていた。さらに、多くのアウトカムの結果に不一致があり、不正確であった。

診療および研究への影響

このレビューから、NMESは、がん、進行した慢性呼吸器疾患、慢性心不全などの進行疾患患者の筋力低下に対する有効な治療である可能性があると示唆されているものの、エビデンスの質は低い。NMESは、リハビリテーションプログラム内での使用を考慮できるであろう。NMESの効果を他の形態の運動(ウェイトトレーニングなど)と比較することはできなかった。なぜなら、大多数の研究では、NMESを無治療または偽治療を受けた対照群と比較していたからである。運動能力とQOLに対するNMESの影響を解明するには、さらに研究が必要である。

著者の結論: 

全体の結論は前回発表されたこのレビューと変わっていないが、さらに多くのデータ、新たな解析、GRADE法を用いたエビデンスの質の評価を含めている。NMESは進行した進行性疾患の成人の筋力低下に対する有効な治療である可能性があり、リハビリテーションプログラム内で使用される運動治療として考慮できるであろう。さらなる研究効果の推測に対する我々の確信に影響を及ぼす可能性は非常に高く、この推測が変わる可能性がある。運動リハビリテーション手法の一要素として、またその手法との関連において、NMESの役割を解明するさらなる研究を推奨する。たとえば、プログラムの強化効果を高めるため、あるいは既存の活動に参加がむずかしい筋力低下が認められる患者を支援するための補助療法として、研究においてNMESを検討してもよいであろう。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

このレビューは、Cochrane Database of Systematic Reviews 2013年第1号に発表された進行疾患の成人の筋力低下に対する神経筋電気刺激に関するレビューの最新版である。

進行性の疾患が進行した患者は筋力低下を経験することがしばしばあり、自立のレベルおよびQOLに悪影響がある。全身運動を始めることができない、あるいはやりたがらない患者には、神経筋電気刺激(NMES)が、下肢の筋力を強化する代替治療法となる可能性がある。NMESプログラムは患者にとって許容しやすいようで、筋機能、運動能力およびQOLの改善につながっている。しかし、個々の試験によるNMESの有効性に関する評価は、検出力および精度に欠ける。

目的: 

主要目的:進行疾患成人患者の大腿四頭筋の筋力に対するNMESの有効性を評価すること。副次的目的:NMESの安全性および許容性を検討し、末梢の筋機能(筋力または耐久力)、筋肉量、運動能力、息切れおよび健康関連QOLに対する効果を検討すること。

検索方法: 

2016年1月までのthe Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Cochrane Database of Systematic Reviews(CDSR)、Database of Abstracts of Reviews of Effects(DARE)(コクラン・ライブラリー)、MEDLINE(OVID)、Embase(OVID)、CINAHL(EBSCO)およびPsycINFO(OVID)のデータベース、引用文献、学会紀要およびこれまでのシステマティックレビューを検索し、研究を特定した。

選択基準: 

進行した慢性呼吸器肺疾患、慢性心不全、がん、HIV/AIDSの成人を対象とした、単独または補助的な介入としてのNMESを無治療プラセボNMESまたは実対照治療と比較したランダム化比較試験を選択した。言語には制限を設けなかった。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ研究デザイン、参加者、介入およびアウトカムに関するデータを抽出した。コクラン「バイアスのリスク」ツールを用いて、バイアスリスクを評価した。十分なデータがあるアウトカムに関しては、介入群と対照群の間の平均差(MD)または標準化平均差(SMD)を算出した。その他のアウトカムに関しては、個々の研究から得られた知見を記述した。GRADE法を用いてエビデンスを評価し、「所見のまとめ」の表を作成した。

主な結果: 

計933例が参加したCOPD、慢性呼吸器疾患、慢性心不全および/または胸部がんの研究18件(報告20本)がこの最新版の組入れ基準を満たした。このレビューの旧版以降、試験7件が追加されている。NMESを抵抗トレーニングと比較した試験1件以外はすべて、NMESと無治療またはプラセボNMESとの比較であった。ほとんどの研究は単施設で実施され、参加者の不足や評価者盲検化の欠如、研究の規模が小さかったことから生じるバイアスのリスクがあった。GRADE法を用いたNMESと対照治療との比較のエビデンスの質は、大腿四頭筋の筋力に関しては低く、有害事象発現に関しては中等度、その他の副次的アウトカムすべてに関しては低い~非常に低いであった。主に研究の知見間の不一致と効果推定値に関する不正確さのため、エビデンス評価の質の評価を下げた。選択した研究では、重篤な有害事象は報告されず、NMES 後の筋肉痛の発現率は低かった。

対照と比較して、NMESにより大腿四頭筋の筋力に統計学的に有意な改善が認められ(試験12件、781例、SMD 0.53、95%信頼区間(CI) 0.19~0.87)、これは約1.1 kgのに匹敵する。NMES後に筋肉量の増加も認められたが、観察可能な効果は用いられた評価法に左右されるようであった(試験8件、314例)。運動能力試験全体では、対照と比較した平均差は、6分間歩行試験で統計学的に有意であった(試験7件、317例、35m、95%CI 14~56)が、以下の試験では有意は認められなかった。漸増シャトルウォーキングテスト(試験3件、434例、9m、95%CI -35~52)、耐久シャトルウォーキングテスト(試験4件、452例、64m、95%CI -18~ 146)、自転車エルゴメーターを用いた心肺運動試験試験6件、141例、45 mL/分95% CI -7~ 97)。その他の副次的評価項目に関するエビデンスは限定的なものであり、最も有益なタイプのNMESプログラムを確定することはできなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD009419 Pub3

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